第18話:冒険者登録(1)

 ハンナさんに案内される形で、リッツェにある冒険者ギルドに向かってるんだけど、何これ・・・市役所なみにデカイ。


「ギルドって凄く大きいんだね」


「確か受付と食事処が1階で、

 地下には練習場所とランクアップだったかしら…

 何かしらの施設が併設されてると聞いたわ。

 2階はギルドマスターが待機する場所と、

 鑑定が必要な薬草類を持ち込む場所で、

 3階が大型の依頼を報告する時に使うらしいの。

 宿泊空間は4階にあったと思うわ」


「へぇ・・・」


 確かに受付と食事処が一緒ってのが創作小説に描かれてたけど、同じなのは凄いな。


 一歩、足を踏み入れた瞬間・・・酒の匂いが右側から流れて来た。


「うっ・・・」


 昼間から酒を飲むなとは言わないが、子供も来るって事、頭に・・・ある訳無いか。


「大丈夫?

 時間制限あったと思ってたんだけど・・・」


 苦虫を噛みしめるような顔で、ハンナさんが受付に向かっている。


 俺も後を追いかける形で付いて行けば、酒の匂いは流石に届かなくなった。


「あらハンナさん、

 ブラッドが落ち込んでいたんだけど?」


 受付のナイスバディな女性が、ハンナさんに声を掛けるながらも、視線は俺に向いてる(何でだ?)


「あんな奴、知らないわ。

 それより文字が書けない子供でも、

 冒険者登録、出来るわよね?」


「勿論、魔道具で登録は可能だけど・・・その子?」


 受付から身を乗り出すようにして俺を見る受付嬢。


 人見知り風を装ってハンナさんの後ろに隠れてやる!


「も、もう。

 リョータくんを上から覗くように見ないの!」


 この受付嬢、俺の姿を上から下へと値踏みしてやがる。


「や、嫌だわ。ごめんなさいね、

 リョータくん、こっちに来てくれるかしら?

 登録の魔道具が置いてある場所に案内するわ」


「ハンナさん・・・」


 もう不安しかねぇぞ、この受付嬢、説明しながらも舌なめずりしてる内面が、表情に出てやがる。


「・・・ジーナ?」


 値踏みしてる受付嬢…ジーナって言うんだ。


「だってぇ~・・・

 いい大人に成長しそうなんだものぉ~」


 んん?もしかしなくてもロリコンか!?


 いや…違う。


 この場合はショタこ・・・止めて?!中身35のアラフォ…こっちにそんな概念ないか。


 とは言え、襲われる!?


 たわわな胸元を強調するかのように、俺の目の前に座り込むジーナと呼ばれた女性。


 子供趣味かと思って顔色を真っ青にしてしまった。


「・・・ジーナ、

 いい加減にしないと受付業務から外すからな」


 ジーナと呼ばれる女性の背後から怒りが含まれた言葉が下りて来て、今度は受付嬢が真っ白な顔色に変化した。


「マスター有難うございます助かりましたわ」


 ああ、ギルマスか。


 なら彼の権限でジーナって人が処分されても仕方ないね。


「いいや、こいつの性癖は常々、

 迷惑していると報告があったからな。

 処罰を下すにも今回の出来事は丁度よい」


「そ、そんなぁ~。

 私の趣味が・・・」


 自業自得・・・あ、得は無い。


 ギルマスは俺に目線を合わせるように腰を落として


「リョータって名前で合ってるか?」


 と聞いてくれた。


「うん!お兄さんは?」


 流石に「おじさん」って言っても怒られないとは思うが、世渡り上手に見せるには、これが一番だろ。


「俺は冒険者ギルドを管理するギルドマスターだ。

 ギルマスでかまわんぞ。

 で、ハンナさん、

 こいつを登録するんだろ?」


 ようやく目的の登録が出来そうな雰囲気になってくれたが、ハンナさんは、受付嬢の騒動を見たからなのかフリーズ状態…。


 問いかけてくれたギルマスの表情が「あれ?もしかして固まってる?!」みたいになってるんだが、これ…助け舟を出した方が無難かね?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る