第16話:冒険者登録・・・の前に

 転移者(本当は転生)として養子になる、と言う事を回避できた俺はハンナさんと共に、行きとは違って徒歩で孤児院に戻る事を余儀なくされた。


「リョータ君、御免なさいね」


 徒歩で孤児院方面へと戻る最中、ハンナさんが突然、謝罪してきた。


「ハンナさん?」


「邸に向かう時は領主の息子になる知れないと言う事で、

 馬車を出して貰えたのよ」


 ああ・・・何の謝罪かと思ったら、歩く事への謝罪か。


「大丈夫だよ!

 勉強したり冒険者になっても怒られないんだよね?!」


 冒険者になれるんだったら、別の場所を目指すと言う理由で、此処を離れられる可能性もあるが、流石にランクが低かったら出れないか?


「ええ、それは無いと思うけれど

 他領に行くのは護衛を雇った方が良いわよ?」


 えぇー・・・単独でも強いと思うけど、やっぱ魔法の事、覚えてから出た方が安全は保てるか。


「だったら魔法の事覚えて、自分を守れるくらい強かったら?」


 それでも無理なら夜中に抜け出してやる!


「そうねぇ・・・

 どれくらいで魔法を覚えられるか判らないけれど、

 自衛できるくらいに強ければ大丈夫だと思うわ」


 だったら教われば教わる程、チートになるっぽいから強くなるまで時間かからない可能性が出て来たな。


「他の場所に行くのは無理でも、冒険者になる事は出来る?」


 それすら出来ないなんて事、無いとは思うが・・・。


「出来るわよ」「やった!」


 冒険者になるのに年齢制限ないって、架空物語でも書かれていた通りなんだな。


「ふふふ・・・リョータ君は何になるつもりなの?」


「何・・・って・・・

 もしかしてステータスの空欄にあった読めない部分の事?」


 確か職業って漢字の内、職って字って、うろ覚えだけど、11くらいで習わなかったっけ?


 異世界こっちの文字が同じとは思えないけど(何せ見えた文字は日本語)、この方法で聞くしか無いか。


「あ・・・

 そう言えばリョータ君には説明しなかったわね。

 レベルとは別に討伐スタイルと言うのを選べるのよ」


「へぇ~・・・どんなスタイルを選べるの?」


「大きく分けると剣で切って捨てる剣士タイプ、

 魔法を使う魔法師タイプ、

 魔法と剣を使う魔法剣士タイプ、

 回復タイプこれくらいだったかしら」


「そのタイプって、何でも選べるの?」


「簡単に選べないのよ。

 学校で魔法を学び、

 剣術を学んで適性を調べる事も、

 学校の目的なの」


 確かに・・・そうか。


 適正職に就かないと苦手な職業で自滅されちゃったら、ギルドの責任にもなる・・・か。


「選ばないと登録できないんだね・・・」


「登録だけなら出来るわ」


「え?(へ?!)」


「幼い年齢で登録したい、

 と望まれる事も多いから職業を後で追加できるようにしているのよ」


 それなら登録一択だな。


「僕、登録したい!」


「でも文字かけるかしら?」


「あ・・・自分の名前すら書けるか・・・覚えて無いや・・・」


 文字は「読めた」けど日本語だし、異世界こっちの「文字が書けるか」は不明だもんな。


 この時リョータは文字も日本語で書けば異世界の文字に変換される、などと言う変則的能力が備わっているなど、思いもしてなかったのだが、後に目が点になり知る事となる。


「登録に必要な文字だけ覚えてみる?」


「え・・・?いいの?!

 確か教えて貰えないって言ってなかった?」


 教えて貰えない理由は想像できてるけど、聞いても不思議は無いよね。


「それは、領主の息子にからだったの。

 侯爵となれば家庭教師はいるでしょうから、

 民が教えると不敬あつかいになってしまうわ。

 だから教えられないと言ったのよ」


 なるほど、納得できたわ。


 確かに架空の物語で描かれる、領主の息子や娘には教育係ってのいたわな。


「ハンナさん冒険者ギルドは、

 文字を習ってから場所を教えて下さい」


 ペコっと頭を下げて願い出るなど、アラフォーなら何度か経験している。


 今は恥も外聞も無く、教えを請わなければならない時だ!

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