第13話:どうしてこうなった?

 豪華絢爛な装飾が施された廊下の先に見えたのは、重厚な造りの扉。


 入口には執事と思わしき初老の男性が待っているように見受けられた。


 本物の執事…ここでの言い方は執事なんだろうか?それとも家令?


 どうせ知らないままコトが終わりそうだけどな。っとイカンイカン…集中せねば。


「本日、領主様へ面会を申し込みました

 ハンナ・ブラウンと申します」


 ハンナさんが執事と思われる男性に訪問理由を伝える。


「保護した子供の礼儀は、

 こうべれるだけで良いとの事です」


「承知いたしました。

 リョータくん、

 止まったら頭を下げるだけで良いですからね」


「・・・判りました」


 ここは流石に丁寧語じゃ無いと駄目だろ。


 見た目は子供だから許されるって訳もないだろうし…。


 ハンナさんが先導する形らしく、俺は子供の歩幅で付いて行く。


 目線だけはキョロキョロ・・・挙動不審になってしまうのは仕方ない。


 何せ爵位を持つ人の邸どころか、ゴージャスな場所に呼ばれる場所へ行く事もなければ、呼ばれるなんて体験をした事などある訳ないもん。


 ベルサイユ宮殿とかバッキンガム宮殿とかは「テレビや写真で見る」だけだったからな。


 ハンナさんが止まってカテーシ?カーテシー?淑女の礼をして


「リョータくん、頭」


 と言って来たので、慌てて90度に腰を折って頭を下げた。


 庶民が腰を折った状態での挨拶が正しいとか知らないから、上司に頭を下げる方法しか取れないっつーの。


「アンソニー様、お客様がご到着です」


 多分、先ほどの執事だろう声が領主様に到着を告げる。


「ハンナ・ブラウン嬢、

 そして保護された少年。

 共に楽にして欲しい」


 侯爵様の言葉に頭を上げた雰囲気があったので、俺も頭を上げ、ハンナさんが面会を受けて貰えた事に対す感謝…だろうか、それを伝える。


「この度は急な申し出を受けて下さり、

 有難う御座います。

 わたくしが保護いたしました少年をお連れ致しました」


 そこには銀色に金色が混ざった髪色を持ち、金色の瞳を優しげに細める20代前半くらいの男性が普段着のまま座っていた。


 う・・・わ~ザ・領主!って姿だ。


「そなたの名前を教えて欲しい」


「は、はいっ。

 ぼ、僕はリョータ・スズキって言いましゅ」


 解答したが見事に噛んでしまい、恥ずかしすぎて顔を赤らめる。


「そう緊張しないで良い。

 と言われても、緊張する場所だな。

 して、リョータ殿は転移して来たのであろう?」


「ぃっ・・・えっ?!

 て、転移って何ですか?」


 転移とか転生とか言って無いのに、それ聞く?


 まあファミリーネームがある時点で「異世界から来た」って疑った可能性はあるけどさ…。


 どこかの令息が迷子になった…って線「も」残ってそうなのに…転移って決めつけるって事は…何かしら俺に掛けた?!


「・・・ハンナ嬢、

 しばしの間リョータ殿と2人きりで会話をしてみたいのだが、

 預からせて貰えるかな?」


「そ、そんなに重要な情報を彼が持っているのでしょうか?」


「判らぬから聞きたいだけだ。

 悪いようにはしないよ」


 ハンナさん頼むから拒絶してくれ!


「・・・判りましたわ・・・」


 マジかっ!!


 拒否できぬなどせぬ。


 庶民に領主との会話で勝てる訳ねぇだろ?!


 ぉぃ!神様、こんな事になるなんて聞いて無いよ!?どうしてこうなった!


 まさか…さっそく「巻き込まれ体質」が発動しちゃって、仕事しちゃった感じ?!


 俺は「そんな事、望んでな・・・」もしかしなくても…望む、望まない関係なしで発動しちゃってたりす…る…のかよ。


 どうせ発動するならモフモフとか癒し系が発動して欲しかったよ。


 逃げ場がない状態で質問攻めされて、嘘発見器みたいなのが設置されてたら俺…本当の意味で囲われるってか「養子にならないか」とか言われる!?


 止めて欲しいんだけど…これ、もしかしなくても詰んだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る