第12話:面会直前
急な呼び出しと言う形で、正装を用意できない事は
そう言われたってさ…俺、就職の面接でも超が付くほどの緊張しーなんだけど。
これ…王族に面会とか言われてたら多分…いや、確実に気絶してたかも。
「リョータ君、孤児院の服で悪いわね」
結局、王子様風衣装は却下された為、孤児院で保管されている服の中でも上品系な衣装になってしまった事への謝罪をハンナから受けたリョータ。
「気にしないで下さいハンナさん。
用意できなかったのは、
洋服を用意してくれると言ったブラッドさん・・・
でしたか、彼が悪いんです。
約束を守らない人は悪い人・・・
そうでしょ?」
「ふふふっ・・・そうね、
リョータくん10歳とは思えないわ」
「そう、かなぁ?
僕・・・記憶は無いけれど、
良い事と悪い事の区別くらいは覚えてるみたい…」
やっべ、バレて・・・バレてないだろうな?!
「領主様から迎えの馬車が来る、
と聞かされているけれど、大丈夫?」
「領主様に逢うって事は、
光栄な事だと思うけど、
正直に言うと記憶が無いから、
不安しかないよ」
いかにも不安だ!と言う態度を取ると、心配そうに顔を覗き込んで来た。
「顔色が悪いものね。
領主様は理解して下さると思うから気を楽にしてね」
「・・・」
はい、と言えねぇ・・・凄く面倒だ。
あ・・・そう言えば巻き込まれ体質って神様、言ってたな。
早速かーい、って突っ込みたいけど、それすら出来ぬ。
暫くして(時計が無いから何分なんて知るかっ!)馬車が俺とハンナさんを迎えに来た。
「お待たせして申し訳ございません、
シスター・ハンナ、
保護した子供と共に邸に向かって下さい」
「畏まりました。
行きましょうリョータくん」
「う、うん・・・」
こうなると万事休す(くそう)。
* * * *
ガタゴト揺れる馬車・・・では無く、やはり領主の馬車はサスペンションが良いのだろうか、揺れはそんなに感じなかった。
馬車から子供らしく外を見ていると、やはり街並みは世界遺産に登録されても不思議は無いくらいな木製の家屋と石造りの家屋が乱立していて、男性はズボンにシャツ、女性はワンピースと思われるが、どちらかと言えばドレスに近いかも知れない恰好で街を歩いている。
へぇ・・・。
これって海外の街並みで見た事があるけど、やはり着ている服は中世っぽいな。
そして異世界あるある移動手段は徒歩か馬車か馬だな。
「リョータくん、
正面に邸が見えて来るわよ」
「お屋敷?!」
横の窓から顔を出し、邸が見えると言う正面を見れば、ノイシュヴァンシュタイン城もしくはシンデレラ城・・・そう呼ばれるくらいに立派な邸が鎮座している。
うっわ・・・マジで「ざ・お屋敷!」って見た目だよな。
上位貴族だと、小説では見栄の為に豪勢な屋敷を…てな話が書かれてるのもあったもんな。
「ふふふ」
(私の考えすぎかしら。
こうして邸を見るだけで、
嬉しそうにする彼が、
転移者とは思えないもの)
リョータは転移では無く転生なのだが、それが判る状態には無い。
生まれ変わった時に、髪色と目の色が
入り口を守る私兵に「本日面会を申し込みましたシスター・ハンナです」と伝えたらしく、入る事を許され、中へと馬車は進む。
小説にも描かれてはいたが、馬車で玄関に向かうんだな。
緊張して喋らなくなった・・・と言う風に装ったリョータ。
騎士に守られる形で応接間まで侍女に案内されて行くのだった。
いやいや、ちょっと待とうよ庶民が何故、領主様に謁見するハメになっちゃうんだよ?!
聞いてな…あ・・・説明、一切なく落とされたんだっけ腹、括るしかないのか
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