第10話:何故、覚えられない?

 保護翌日は説明だけに終わり、森で「さまよっていた」と「思われていた」ために、遊ぶ事もなく手伝う事もせず休んで良いと言われ、記憶が無いから文字を教えて欲しいと願い出てみたが


「ごめんなさいね、

 領主様との面会が終わらないと、

 私たちは何も教える事を許されてないの」


 と言われてしまい「?」が頭上に浮かんでしまう。


「どうして領主様との面会・・・だったっけ?

 それが終わらないと教えて貰えないの?」


「君がいた森が原因なの。

 あの森はかつて、

 我が国を救う事となる勇者が降り立った地でね、

 彼は見たことがない服装をしていたのよ」


「か・・・れ?

 男の人だったんだね、その勇者様」


「そうよ。

 とても美しい見た目と鍛え上げられたであろう体躯、

 この国の姫様が一目で恋に落ちてしまうくらいの男性だったのよ」


 うわぁ~・・・異世界「あるある」じゃん。


 人によって生み出された創作物語だと言っても、勇者召喚とか聖女召喚とか、あっもんなぁ。


「降り立ったって事は、

 この国が危険に陥っていたの?」


「そうよ、

 魔族と呼ばれる強くて欲深い存在がいた時代だそうで、

 学ぶ事でしか知り得られない事柄だけど、

 城だけでなく民にも危険が迫って王様は、

 苦渋の決断をなさったそうなの」


「他の場所で暮らしていたであろう、

 勇者様を国に呼ぶから・・・だね?」


「えぇ。

 歴史書にはと言う場所にいた、

 武士と呼ばれる方だったらしい、と書かれているのよ」


 え・・・?まさか・・・いやいや・・・そんな筈ない。


 だって予測した武将は炎に焼かれ・・・遺体って見つかってないんだっけ・・・?


 いや、そんな事は・・・。


「名前って残ってるの?」


「残念なんだけど、

 残ってないのよ。

 姫様が彼の名を残す事をお許しにならなかったそうなの。

 将来、同じ場所から来る可能性を懸念されたのでしょうね。

 今の領主様は姫様と彼との間に生まれた子供の末裔よ」


 いよいよ怪しくなって来たな。


 その降り立った武士が「うつけ」と呼ばれる人だったならば、言い合いしたら負けるだろうな。


「ふぅ~ん…そうなんだ。

 だったら文字が読めるかも知れないから、

 本を見る事はしても大丈夫かな?」


 忘れてるけどステータス見た時、文字を読めてるんだよね~。


 日本語表示仕様になってる可能性はあるけど、書けるかまでは判らんし…。


「うーん・・・

 何もさせては駄目だと言われてるのよねぇ…」


「わかったぁ~、じっとしてる」


 何、この苦行・・・本も駄目、文字を覚えるのも駄目って小学生より待遇わるいぞ。


 肩をガックリと落とした俺は、トボトボと与えられた1人部屋へと戻って行くしかなかった。


~~~~

ハンナside


(本当に御免なさいね。

 どう考えても君が別の世界から来たとしか思えなかったのよ。

 着用している洋服は見た事も無かったし、

 10歳とは思えない対応能力・・・

 それらを考えると、

 勇者様が降臨なされた時代から約300年後に召喚された、

 聖女様に近いのよ)


 エーテルディアには2つの伝説が存在していた。


 1つは武士と呼ばれる方が降り立ち、魔族を完膚なきまでに叩き潰し平和が訪れたと言う伝説。


 もう1つの方は、石塚と言う苗字しか名乗らなかった女性が、聖なる乙女として瘴気に満ち溢れていたリッツェを、人々が安心して生活できる空間に整える事に成功し、当時の第一王子と結婚し、今の領主が後に生まれるキッカケとなっているのだ。


(あのステータスもイシヅカ様に似ているのよね…。

 確かニホンのヒロシマと言う場所にいたと、

 おっしゃられてたわね。

 多分、リョータくんも…

 だけど大人じゃないのはどうしてかしら)


 召喚されたにしては年齢が若すぎるのをハンナは疑問に思っていた、まさか・・・転生して国になど、考えには無いのだ

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