第7話:好待遇の歓迎?

 ハンナが姿を消して(?)から、1時間くらい経過しただろうか。


 孤児院に時計らしき物体が置いて無いので判断できないんだが、洋服を持った男性と小物を持った女性(おばあちゃんっぽい人)が俺が待つ場所へと来た。


「まぁまぁ、何と聡明そうな坊ちゃんでしょう」


 何?このおばあちゃん…上から下まで見回すって怖いんだが…。


「確かに、どこぞの令息と言っても過言ではなさそうな雰囲気だな」


 そして男性の発言聞けば、この流れ…貴族の息子が記憶を無くしてる可能性があるとか何とかって、ハンナさん考えたのかね?


 普通、孤児院にいるような子供に仕立て屋とか呼ばないっしょ。


 この時、リョータは気づいていないのだが「鑑定」を使って相手が「誰か」を把握しているのである。


「先に行かないで欲しいと、

 お願いしましたでしょう?

 ブラッドさん、リリーさん、

 彼が困惑していますわよ!」


 うん・・・何で仕立て屋ブラッドさんと、世話好き女将リリーさんが、俺の所に駆け寄ってんのか全く皆目見当もつきませんし、何で名前とか職業が「理解出来てるのか」すら判りません。


「領主様に面会とか聞かされりゃー、

 どんな坊主か見たくなるだろ?」


 だからと言って、ハンナさんの制止を振り切ったら駄目でしょうよ(大人なのに…)。


「だからと言って私を抜くのは問題外です!!

 リリーさんも同じ理由ですからね?!」


 ハンナさん・・・苦労人でしょうか、ご愁傷様です。


「す、すまん」「ごめんなさいね」


「全く・・・驚かせてごめんなさいねリョータくん、

 彼・・・ブラッドさんは、

 貴族から平民までの服を見ただけで仕立てられる方で、

 貴方の服を作って貰いたくて連れて来たの。

 そして世話好きリリーさんは、

 食事してないだろうと思って、

 料理をお願いしたのよ」


 ん?そう言えば今、初めて彼らを紹介して貰えたのに、初めから「判っていた」よな?まさか・・・俺って鑑定を持っちゃった?!


 「知りたい」と思っただけ「鑑定」出来たって事は、考えるだけでスキルや魔法を覚えられる可能性が出て来た・・・まさに夢のチート!


 ブラッドさんは、俺の体を見ただけで寸法を手にした紙に記入し、自分の工房に戻って行った(らしい)。


 そしてリリーさんの料理は、異世界あるある・・・とても塩気が多そう。


 高血圧になりそうで怖い。


 そんなに量を食べられない俺だが何とか食べ終え、現状でサイズが合う孤児院保管の洋服に着替える事になるのだが、先に部屋へと案内して欲しいものだ。


「洋服は完成したら孤児院に配達しよう」


 そして俺そっちのけで会話が進む。


「有難うございます。

 リョータくん、部屋に案内するわね」


「ありがとー!」


 忘れられてなかったんだな、良かった。


 どうやら孤児院の2階が子供たちが暮らす空間らしく、1人に1部屋・・・有る訳ない…と思っていたのだが「あの」ステータスを見たからなのか判らなかったが


「リョータ君は1人部屋になるけど、大丈夫?」


 と1人部屋らしい。


「んと、僕1人で使うなんて贅沢して良いの?

 特例とかじゃない?」


 まあ疑問だわな。普通、6人とか8人で1つ部屋を使うのに対して俺1人。


「贅沢では無いし特例でも無いわ。

 この孤児院は女の子の率が多いのよ。

 だから男の子が着替えを覗く・・・

 何て事を防ぐ為にも1人1部屋にしてるのよ」


 マジか・・・。って事は部屋数も見た目以上にあるって事か、女子率高いなら「そうなる」のは当然だわな。


「そうなんだね。

 安心して着替えて欲しいもんね」


「じゃあ着替えたら今日は休んでね。

 領主様に面会する日時は後日、判明するから」


「はぁ~い」


 回避不可の面会・・・逃げ場は・・・ない(ってか、どんな苦行だよ!)

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