第3話:僕(俺)どうなるの?

 男性とハンナさんの話し合いは、一向に終わる気配を見せない。


 これって放置されてるのか忘れられてるのか、理解に苦しむな。


 「ざまぁ」を好んで読んでいたからか判らんが、いい加減に安全か危険かくらい知りたいな。


 大きなため息を吐き出して


「ハンナおねぇさん、ここって安全な場所なの?」


 と放置している事を「さりげなく」アピールすると


「や、やだ!

 私ったら君の事を忘れていたわ。

 ごめんなさい」


 と素直に「そっちのけ」だった事を謝罪してくれた。


「・・・すまんな。

 俺は冒険者で彼女を護衛していたんだ。

 記憶が無いなら危険か安全かなんて判らねぇよな。

 本当にすまん」


「(今、冒険者って言ったよな?

  って事は此処ギルドとか存在してて、

  魔物やモフモフをテイム出来たりするのか?!)

 うん。自分の名前くらいしか記憶ないんだ。

 だからおじ・・・

 お兄さんが言った冒険者って言うのも知らないの」


 やばいやばい「おじさん」なんて言ったら殴られる可能性ありだな。


 どうみても35だった俺より若いのに「おじさん」言われたら・・・例え子供でも殴りそう(怖い事になりかけたわ)。


「そうか。

 ここでは説明しない方が良いだろうハンナさん。

 孤児院なら安全も確保できてるし、

 コイツが冒険者を目指すなら登録も簡単に出来るだろ」


「そ、そうね。

 流石に奥地では無いにせよ、

 魔物のいる森で会話は危険ね。

 君の名前を教えてくれる?」


「んと・・・リョータ!リョータ・スズキ」


「まぁ・・・もしかしたら貴族の子供かしら・・・」


「まあファミリーネームまで持ってるとは言っても、

 記憶違いの可能性もあるだろう。

 ともかく移動するぞ。

 リョータは身体強化できるか?」


「なぁに?

 しんたいきょうかって・・・」


 まさか・・・まさかと思うが魔法の世界?


 剣と魔法の世界となるとハリポ…げふんげふん。


「あぁ、そうか。

 記憶が無いのなら生活魔法の事も抜けてるか。

 じゃあ・・・」


 そう言った冒険者の「おっちゃん」は、俺を軽々と抱き上げた。


「うわっ・・・!

 何?!急に視界が高くなった!!」


(ってか予告なしに抱き上げないでくれ!心臓に悪いわ!)


「もう・・・急に抱き上げる馬鹿が何処にいるのよ」


(えぇ。「目の前に」いまっせハンナさん・・・)


 バツが悪そうにしながらも


「孤児院に戻ろう」


 と俺が向かおうとしていた奥地へと向かい始めた。


 どうやらリョータが奥地と思っていた方向は、町の方向だったらしい。


(何だ、こっちで合ってたのか)


 そう思っていたのだが、そこにあったのは大きな物体・・・サイとシカを足して2で割ったような・・・うん・・・俺の表現力に限界があった。


 その動物から剣を抜き取り、ハンナさんの隣りに立ち、帰路に就くべきか採取の続きに興じるかを話し始めたっぽい。


「目的の場所に向かいますか?

 それともリョータを孤児院に連れて行きますか?」


「そうね薬草は明日にでも

 孤児院ちかくの場所で収穫できるでしょう。

 彼を孤児院へお願い出来ます?」


「勿論」


 もしかして・・・森での薬草採取の為に依頼したのか?と言う疑問があるのだが、一応「記憶喪失」だと思っているので、知りたいが聞かないでおいた。


 転生して初めて出会ったのは、孤児院を運営するシスターで優しい女性だったけど、俺・・・これからどうなるんだろ。


 何も知らされて無い状態でスキルとか称号とか能力とか…所謂チートと呼ばれる事柄が備わっているか否かなんて判らない。


 日本で車に撥ねられて転生したらしい…と言うのは把握できた、と言えるのだろうか?と言うくらいの感覚。


 日本の神様であろうと異世界の神様であろうと、謝罪があってスキルを貰って…と言う小説ばかりを読んでいた…にも関わらず、自分は謝罪もなければ説明もないまま、森に尻餅をついた状態で目覚めた。


 気付けば異世界にいて、しかも森の奥…危険な場所だったと後から知るのだが、そんな場所に「落とされた」状態で転生していた。


 子供な状態で生活して行けるのだろうか?と言う不安が尽きないリョータであった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る