第11話
ナンダッタンダ、アレハと告白、そして告白返しの翌日、安恵は一睡もできずに出社した。
睡眠不足でヤジロベーみたいにふらりふらりと横揺れをしつつ、必死眠い目をこすりながらレジに立つ安恵。最近のレジは進化をしており、金を投入すればお釣りが出てくる。よって誰が見てもこの人ヤバいと一目で分かるふらつきをしながらも安恵は、何事も無く仕事をこなしていた。
レジからは彼─高梨くんは見ることが出来なかった。それが今は良いと言いつつ、スーパーマーケットという広いと言えば確かに広いが、顔も見ることが出来ないことに心で感じた体感では、更に広く感じられた。
昼休み。安恵は裏の喫煙所にはいかなかった。と言うよりも行きたく無かった。分からない事がもっと
分からなくなりそうだったから。
ナンダッタンダの答えは、知りたい。けど知りたくない。これが本当のフィフティフィフティと安恵は心で呟いた。体はふらっふらっだった。
そんな事が三日連続で続いた。
逆に言えば三日で終わった。
「安恵さん。今日終わり空いてますか?」
仕事終わり。三日連続で船を漕ぎ続けて、目にハッキリと黒々とした隈を作っていた安恵は、高梨君に声をかけられた。
同じシフトに入っているはずなのに休憩時間に喫煙所へ行かないだけで、こんなにも会えないもなんだなとぼんやりと考えていた安恵に対して、それは奇襲であった。
「アイテマス」
「ならちょっと飯いきませんか?」
「ワカリマシタ」
「いやーてか中々、喋れないもんなんすね、同じ職場でも!てか安恵さん裏戻ったらもういなくなってるし、帰るの早いんすよ。俺、探しちゃいましたもん。てか何すかソレ?メカみたいになってますよ、メカに」
……………ん?ちょい待て、何ソレ?と心の中でツッコむ間に気付いたら(もとい意識を取り戻したら)安恵と高梨君は回転寿司に来ていた。
そして現在に至る。
回転寿司に来ていた。
「安恵さん、食べないんすか?ベーコン美味いッスよ。しかも安いッスよ。50円ッスよ。50円で美味いんすよ。俺ならうまい棒4,5本食うくらいならこっち選びますよ!!」
何だよ!!その基準!!いやベーコンって……てのをまず言いたいのに!!何だよ!!その基準!!その基準に則るならわたしゃうまい棒4,5本選ぶよ。コンポタは2本取っちゃう!贅沢(?)キメちゃうよ!!と心の中では忙しさは加速しているの安恵だが。
「わっわたしは今はいいかな?」とあくまでソフトに返す。
「えー美味いんすけどねぇ」とシュンとする高梨君。ベーコンをベロリと平らげ、右手はテーブルの上にあるテキサスロールへと伸びていく。
安恵さん食べないんですか?の高梨くんからの猛襲とソレをいいかなーで返すだけで間が埋まっていく。埋まってはいるけど、何処となく気まずさが残る安恵。そしてそうだ寿司を食べたら喋らなくて住むジャン!寿司ミニケーションじゃん!寿司ミニケーションてコレじゃんと先ほどからブドウ糖を摂取してなく脳のぐるぐるしてる安恵は、寿司ミニケーションへとたどり着く。
明らかに安恵の脳内は破滅へと向かっていた。
Let's寿司ミニケーション!!!!
回る輪廻の如くぐるぐる回る寿司達。鱚、海老、鮹。
私のファースト寿司はいつもの………っ!!と後方からカタカタレールを回ってきたネタが目に入る。
それは安恵の好物だった。
右手が伸びる──栄光(寿司)をこの手に掴むために──
手のひらが重なる──高梨くんとの左手と。
瞬間二人の視線は栄光(寿司)から互いへと向きが変わる。
恐る恐る見ている安恵に対して高梨君は。
「安恵さんも好きなんすね、俺も好きなんすよ!美味いッスよね」と言いつつ、満面のあどけない笑顔を見せた。
その眩しさと重なる手でぼふっと安恵の顔は、紅くなる。
「ごっ!ごめん!」と重なる手からしゅばっと離す。栄光(寿司)を逃す。
「??何がッスか?とりあえず二人で食べましょ、食べましょ」と高梨君はニコニコと寿司をテーブルにのせる。
俯いてる安恵が顔を真っ赤にさせてるのを知ってか知らずか。少なくとも安恵は俯いているから確認できない。
高梨君が手に取ったねぎトロと同じくらいに安恵を美しく赤く染める。
何で回転寿司で!?何で回転寿司で私はこんなに顔真っ赤になってるの???あーーーーー!もう訳わかんない…………!!!!!?
安恵のファースト寿司ミニケーションは安恵の一人相撲であった。
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