第7話
安恵はまた公園にいた。おもちゃのようなお菓子みたいなカラーリングの家が並ぶ中央にある巨大な公園。
コンビニにスエットの中年男性が入ると同時に高梨君はレジ対応に戻る。スエットの男性がマルボロのアカ箱とぶっきらぼうに言うと高梨君はこちらで宜しいでしようか?訪ね、バーコードを通す。
スエットの男性が店を出る。ガーッと自動ドアの音が鳴ると安恵と高梨君の二人になり、またコンビニはシンとなる。
「とりあえず俺まだバイトなんで………すみませんが、後で話しません?後一時間も無いんで」
脊髄アイスピックという間抜けな言葉を必死に絞り出したのだが、高梨君の表情は読み取れなかった。勇気を振り絞って伝えた安恵の鼓動はドッドッドッとビートをメチャハヤで刻んでいた。
「わっ………分かっだ……わっ………わだしいるから!近くのあの大きな公園に……待っているがら!!!」
淀みつつ濁りつつ安恵は必死に言葉を紡ぐ。不気味な笑いを添えて。イーヒッヒッ。怖い。
けど安恵はこれが精一杯だ。これが限界だ。この限界で現実とぶつかった。
そしてガーーーっと小走りで立ち去った。
当然、高梨君のいるコンビニで買い物は出来なかったので、もう一件近くにあるコンビニでカップのアイスクリームとスポーツドリンク、タバコとライターを買った。
そして現在に至る。
シュボリと100円ライターで紙巻きタバコに火を付ける。普段はiQOSを吸ってるが、無性にSevenStarsを吸いたくなり。100円ライターと一緒に買う。
「ゲホッゴーッボ!!ゲホゴホ!!!」
久しぶりの紙巻きタバコの肺にガツッと来る感覚とツンと来る煙にやられ、安恵はむせた。
そしてまたベンチでタバコを吹かして先程のコンビニのやり取りを振り返る。
やってしまった……………。がまず来る感情だった。そしてどーーーしよ……………が次に来た。
けど最後に来た感情は───────
けど好きなんだもん…………めちゃくちゃ……めっちゃ好きなんだもん。だった。
「あーーーーーーーっ!!!!!!」
時刻は深夜。日付も次の日に変わってる深い深い暗闇の中のポツリとライトが照らされてる。ベンチの上で体育座りをしながらうずくまる安恵。
タバコの先端のオレンジの炎が鮮やかに燃えて灰へとなっていた。
「けど……………………………言えて良かった」
例えそれが独りよがりの感情をぶつけただけ。そしてこの後、やってくるであろう怒濤の後悔が待っていたとしても。
「高梨君が悪いんだもん。突然いるから………火が着いちゃただもん……」
タバコを人吸いしてから地面に落とし、足で行儀悪く踏み消す。けれど心の火は消えなかった。どころかどんどん加熱していった。
炎。になつていた。最高に熱い。と安恵は思った。自分の人生で最大最速に感情が燃え上がっていた。
じゃりっと足音が聞こえた。音がする方へと振り向く。
「すみません。待たせちゃって」
公園の入り口が走りながら高梨君が近づいて来た。
来ちゃった。はやる正直な恋の心とこの後の展開に不安を隠しきれない安恵の笑みは不気味なものとなっていた。イーヒッヒッ。
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