第6話 絡まる
「痛っ!」
朝、起き上がろうとした彼女が小さく悲鳴を上げた。
後頭部を押さえているから、僕は心配になって彼女の背後に回り込んだ。
彼女の手元を覗きこむと、髪に湿布が貼りついている。昨夜、首すじに湿布を貼っているのを見た。寝ている間に剥がれてしまったのだろう。くしゃっと丸まった湿布に髪が巻き込まれてしまっている。
彼女は湿布を引っ張っているけれど、髪も引っ張られてしまい、痛そうだ。
「え、どうなってるの?」
『湿布が丸まってるんだよ』
教えてあげたいのに、僕の声は届かない。
「痛っ。何これ、全然取れない」
『違うんだよ。引っ張るんじゃなくて、丸まってる湿布を剥がして伸ばさないと』
うつ伏せになって両手で湿布を引っ張る彼女に、僕はやきもきする。
『ああ、助けてあげられたらいいのに』
こういう場面では僕はちっとも役に立てない。
彼女が湿布と格闘していた数分間、僕は隣でハラハラと見守ることしかできず、後でしばらく落ち込んだ。
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