第8話
昨日の夜はゲームをしている途中で寝たせいで、手にはスマフォを握ったままだった。
起きた時間をスマホで時間を確認すると、七時と漁のない休日に起きるには早い時間だった。
そういえば昨日連絡が来ていたのを思い出し、連絡交換用のアプリを開く。
「おいおいまじかよ」
アプリの画面には渚からの連絡があったことが記されている。
拓海だと思い、放置していたことを少し後悔した。
女子から連絡が来ることがそもそもないし、返事をすぐ返せなかったことの後ろめたさで少しページを開くのが怖いが、ここは意を決して開く。
『こんばんは、航のとこもお父さん飲み会だよね?お母さんが良かったら明日の晩御飯一緒にどうって話なんだけど』
その文の後によろしくにゃーとこの間のスタンプと同じ種類の猫が描かれていた。
内容からするに、急ぎの返事が必要ではない内容なことにほっとした。
取り合えず腹も空いたので、腹ごしらえをすることにする。
返事の内容を考えながら、階段を降り居間に入る。
どうやら父さんはまだ自室で寝ているようで、居間は暗く冬の初めの朝ということで、ひんやりしていた。
寒いままでも仕方ないので、ファンヒータとテレビを付け、キッチンに行き、冷蔵庫の中身を漁る。
「たまには朝飯でも作ってやるか」
簡単にトーストとスクランブルエッグ、玉ねぎとベーゴンがあったのでそれでスープを作ることにする。
まずは鍋に水を入れ、お湯を沸かすためにコンロに置き、火をかける。
その沸騰を待つ間に、玉ねぎの皮をむき、櫛切りに、ベーコンも短冊切りにする。
パンを焼くのを忘れていたと思い出し、六枚切りの食パンをトースターにかける。
そうやって朝食の準備をしていると、父、秀幸が起きて居間にのそのそと入ってきた。
「おはよう。いい匂いしたから起きてきた」
「おはよう。もう少しでできるから待ってて。あ、パン何枚食べる?」
「二枚」
あいよ、と返事をしつつ沸騰した鍋に、コンソメとベーコンと玉ねぎを投入する。
次は、スクランブルエッグを作るためにフライパンに火を入れる。
その間に卵を割り、かき混ぜてフライパンにバターを敷く。
丁度トースターからチン、と金属音が鳴り、パンが飛び出し顔を覗かせる。
「父さん、パン入れ替えといて。俺も二枚食べる」
秀幸はテレビを見ながら適当な返事をし、パンを入れ替えるためにキッチンにきて入れ替える。
入れ替えるのを確認しつつ、溶いた卵を熱したフライパンに投入し、固まりきらないようにかき混ぜる。
「オニオンスープか、うまそう」
パンの準備の為にキッチンに来ていた父は、そう言いながら、スープやらの皿を準備してくれている。
「ありがとう、もうできるよ」
「じゃあスープよそうわ」
父さんも準備を手伝ってくれ、スムーズに朝食の準備が進む。
スクランブルエッグも出来たので、準備した皿に移す。
その間に父さんはお椀にスープを盛り付けて机に運んでいた。
カウンターにスクランブルエッグを盛り付けた皿と箸やスプーンの食器、バター、冷蔵庫からマヨネーズを取り出し置く。
先ほどトースターに入れたパンが焼きあがるのに、少し時間がありそうなので、先に1枚ずつパンを分け
食べ始めることにする。
準備が出来たので二人で、頂きますと手を合わせ、まずはスープから口にする。
「ちょっと薄いかな」
「そんなことないよ、うん。うまい」
そう言いながら父さんは玉ねぎを口にする。そうした後に、またうまいと呟く。
そういってもらえたことに安堵していると、またトースターから音がする。
焼けたパンをトースターから取り出し、互いのお皿に置く。
「そういえばさ、渚のお母さんから夕飯誘われた」
「お、行って来い行って来い、どうせあっちも飲み会だろうよ」
組合の会合と言っても、タダの近所のオヤジ達が集まって騒ぐだけの飲み会らしい。
大体月一で行われ、そして漁村なので勿論漁師が多く、冬は海が荒れ休漁になることが多いので、この会合の回数も増える。
息子としては、父が家にいないとのびのび出来るので、ありがたいと言えばありがたい。
その後テレビを見ながら、ニュースの内容を話したり、他愛もない話をして朝食を終えた。
父さんは船に用事があるらしく、朝食を食べ終えすぐに、家を出て行った。
そういえば渚に返事を返していないことを思い出し、良かったらお願いしますと手短に返事を返す。
食器を洗おうと、キッチンに食器を持って向かうと、ピロンとスマフォが鳴る。中々に早い返事だなと
食器をシンクに置き、内容を確認する。
『おはよう!オッケー!また時間連絡するね!』
『おはよう、昨日返事返せなくてすまん。』
『気にしてないよ、いつもあの時間に寝るの?』
『ゲームしてたら眠くなって寝てた。漁が休みになったからいつもより少し遅いくらいかな』
『ふーん、そうなんだ』
そんなどうでもいいようなやり取りをした後、食器洗いに取り掛かった。
久しぶりに白石家でご馳走になるので、何か手土産でも持っていこうと考える。
朝から異性とやり取りをしている充足感で、どこか自分が浮ついている気持ちなのを感じながら食器を洗い、その他の家事をこなしていくのであった。
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