第25話 躁状態

読者の皆さんはどう思うだろう?


先生が躁状態だと言うのだ。


私は躁転などしていないとまだ思っていた。いや、そもそも病気じゃない。と。


しかし…その頃から私はお喋りになってきたのは分かってきていた。


どれ位の期間だっただろうか?

1~2週間位か?分からない。


妻には1日中だろうか。

ある日は実家に帰り、母に3時間位永遠に喋り続けたりした。


次々と浮かんでくる言葉に私はこう思った。

「性格が変わり、社交的な人間になった」

「色々経験してきて、より良い人間になった」


本当にそう思った。妻や両親にもそう言った。


明石屋さんまはこんな感じなんだろう、何を話すか考える前に言葉が出てくる。


ちょうどその頃、妻方の叔父さんの激励会みたいなのがあった。

30人位居ただろうか、8割方初めて会う人達だった。

私にしては遠い親戚にあたる人達、大学生や30代、多いのは60歳以上のおじさん、80歳代のおじいさん、おばあさんだ。


普段の私なら大人しくお膳の料理を食べて数人の顔見知りと話すか、スマホ見て時間を潰すだろう。

しかし、その日は全員の席に行き挨拶、自己紹介、世間話、飲む人には酌をして廻った。

通常なら話す内容にも事欠くだろう知らないおばあさん達とも、何でも話せる。

2時間、あっと言うまだった、楽しかった。


食事会が終わったら妻に少し怒られた。

若い女性に年齢を聞いたり、初対面には少し失礼な質問もしていたらしい。


「なんだよそのくらい、それより俺は皆に挨拶して廻ったんだぞ、場を盛り上げてたぞ、いいご主人じゃないか」


さんまさんみたいなお喋りな人になれた

なりたかった自分になれた


暫く、本当にそう思っていた。


そして…2週間位すると、素に戻った…

あれ?あれれ?

思考回路が戻った…

お喋りな自分はいなくなっていた…


……やっぱり薬のせいだったのか……


そりゃそうだよな…


躁状態の人は元に戻って初めて躁の時にした事を悔やむと言うが、その通りだった。


まあ、私の場合、多弁になっただけだったから対した後悔などなかった。


私のその時の躁の時は多弁になる症状のみだった。

さんまさんの件以外は誇大妄想とかも無かった。


他にも、人によっては攻撃的になるとか、大きな無駄な買い物をしまくる、とか、自殺未遂をする、とかの症状が出るらしいが、私には全く無かった。


まあ、今回の躁転、先生も言う、薬の副作用だ、病気などではない、そう思っていた。


しかし、症状が収まってきた頃、急に眠れなくなってきた。


今まで貰ってた睡眠薬は全く効かなく、夜中ずっと目を閉じているが、眠くならない。

気がつくと、1時間位は寝れたかな、位だ。


そう、「不眠症」が始まった。




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