第23話 躁転

23話目にして初めて触れる、病気の事


私の病名は「適応障害」だ。


適応障害?はあ?適当な…嘘っぱちだろ?


休職に入って、ずっとそう思っていた、精神的にも肉体的にも別に何とも無かったからだ。

自覚症状だけならともかく、妻に聞いても、別に変わった事は無いと言う。

ゲームのし過ぎとは言われていたがw


抗うつ薬であるサインバルタも、全く効果を感じた事は無かった。


プログラムを受講しだして1ヶ月位か、突然その日が訪れた。


朝いつもの様に部屋に入り、診察を受ける。

その日はプログラム参加者は6人だった。


診察からプログラム開始まで少し時間があった、20分位か、朝9時から朝礼か始まる。


やや狭い部屋、参加者にも性格がある。

コミュニケーションを取ろうとする人、しない人、話しかけたら喋ってくれる人。


色々な参加者がいる、当然だ。


その日は6人全員仲良く、食事の話題で盛り上がっていた。

別に珍しい事ではない。

プログラム開始までの時間潰しに世間話をする事は多々あった。


朝9時ちょうど、職員が朝礼にやって来た。

皆で世間話をしていたが、ピタリと止んだ。

朝礼開始だからだ、今からプログラム開始だ、皆頭を切り替える。


その日、そこでこう言われたのである。


職員

「私は職員の朝礼で居ないが、9時までの間は準備する時間、もう始まっているから、世間話は控えて下さい」


「?」


違和感を覚えたが、10分程の朝礼が終えた。


皆に対し職員は注意したが、私はその6人の中で一番多く喋っていた気がしたのですぐ


「すみません、私が多く喋っていました、今後注意します」


別に言わなくていいのだか一応代表して謝罪したつもりだった。


皆し~んとした。


職員を見ると、口元が「にやっ」とした。


……胸くそ悪い、なんだか、本当に私が悪かったみたいな雰囲気になった。


…職員も、「いや、○○さんに言ったわけではありませんよ」位フォローはないのか?


その日の午前中は自習だった。


私は朝礼の事が引っ掛かっていた。


そもそも、最初に配られたB4用紙にも9時から朝礼、8時台は診察としか書かれていない。

じゃあ、仮に8時からプログラムがスタートしたとしよう。

午前中の授業は8~12時の4時間になる。


午後は13時半~15時半の2時間である。


午前中だけの人、午後だけの人でプログラム授業料金は同じだからちゃんちゃら可笑しい。


9時から朝礼でプログラム開始なのに、何故9時以前のお喋りに注意されなきゃいかんのだ?


…もしスケジュール表が古いなら更新しろよ。

…俺なら1時間で出来るぞ。


…まだ考える…

「私は職員の朝礼で居ない?」

もう始まってるなら、居るべきじゃないか?

居たら喋らんだろう、金取ってるくせに…


この復職支援プログラム、自立支援医療を使用してたが、だいたい1日1000円位支払っていた。

1割負担だから、補助がなければ1万円を越す金額だ。ぼったくりめ…


その日、午前中そんな事ばかり考えていた。


午前中のプログラム(自習)が終わった。

階段で私はその職員を捕まえて聞いてみた。


朝注意された事だ。


あくまで質問だ。


紙を片手に、朝は9時から開始ですよね?

午後が2時間だから合いませんけど?


職員

「その書類古いんですよね、書き換えないといけないんですが…

「ん?○○さん、昔からそんな感じでした?」


「え?、いや、普段は人より大人しい感じだと思いますが」


職員

「ちょっとすみません」


いそいそと階段を降りていった…


なんだよあいつ…結局雲に巻かれたか…


10分程して、部屋に職員が戻ってきた。


「○○さん、今から主治医の診察を受けて下さい」


え、今から?診察時間はとっくに終わってるのに…まさかこいつ…


すぐに察した、この職員が私の様子が異常だと伝えたんだろう。


すく主治医の所に連れて行かれた。時間外だが


先生

「最近、よく喋るなあと思う事はあるか?」


「まあ…話しかければちょっと多めに返事する位ですかね」うつむき加減にそう答えた。


質問はたったそれだけであった。たったの。


先生

「今度の診察日まで家に帰るな」

「プログラムも参加するな」

「今飲んでる薬だが、もう飲むな」


「???????????」


「せ、先生…私はその間どう過ごせばいいんですか…?」


先生

「図書館に行ったり、車で音楽を聞いたり、とにかく1人でいなさい」


????!!…頭がついていかなかった…


躁転…しかし私はその時、そんな言葉すら知らなかった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る