時の詩

卒業の朝


妙に目が冴えて

朝の光の中へ飛び出した


空気はぴんとはりつめて

肌にかすかな刺激を与える

心に冷たい風を送り込む



通い慣れた道は

ちがって見えて


全てを知っているつもりだったのに

何も知らなかったことを

気付かされる



明日からはここが

懐かしい道

過去の道になること


野良猫が鳴いて

“いつも”の道を

違うものにする


同じ日なんてないんだって

気付かされた



僕らは知らぬ間に

時を過ごしていて


ゴール寸前で

やっと少し振り返るんだ



そこから見た風景は

過去でしかなくて


とても綺麗だけれど

とても鮮やかだけれど

美化されすぎた


過去でしかなくて



友との別れ

先生との別れ

校舎との別れ


束縛との別れ

自由との別れ


淋しさを抱えながらも

少しだけ胸を張って

一歩 踏み出そう



入口は出口となり

出口は入口となる


一回り大きくなった

僕らの背中を押す春風


未来へ旅立とう

卒業の朝



(2009.2)

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