【3】夢のつづき
ゴツン
「いったぁ~…」
額にものすごい衝撃を受け、樹里は目を覚ます。黒猫もびっくりして飛び起きる。
『なんだ!どうした?ぷっ』
ルゥはベッドの上から下を覗きこんで、床にうつ伏せに寝そべっている少女を見て笑っている。
そうなのだ。頭に何かがぶつかってきたのではなく、自分が床に落ちてぶつかったのだ。
「んもう。ルゥ笑いすぎ~。あーっ、たんこぶできてる」
黒猫は今にも泣き出さんばかりに腹を抱えて笑っている。対照的に少女は痛みで泣き出しそうである。
「せっかくいい夢見てたのになぁ」
樹里は額を冷やしながら、先程まで見ていた夢を思い出す。
夢喰の部屋から出た後、樹里は悪夢を初めて夢喰と過ごしたのだ。
最初に乗った観覧車では、2人(と1匹)の他にもう1人乗ってきたが全然怖くなかった。
1周する間に“何人かのお化けが観覧車に乗り込んでくるので、そのモンスターの弱点を見抜かないといけない”というアトラクションだったのだが、化け猫はルゥに睨まれて逃げていくし、のっぺらぼうは顔に落書きをしたら泣いて出て行ってしまった。ろくろっ首は夢喰のあまりの美しさに、首を伸ばすのを忘れてしまっていた。
樹里はこんなに楽しい観覧車なら、現世でも乗ってみたいと思った。
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次に入ったダンジョンでは、少しも迷うことなく呆気なくクリアしてしまった。
真っ暗で何も見えなかったが、ルゥは夜目が利くので何の問題もない。道は少々複雑だったが、夢神器のクマのぬいぐるみが自ら歩いて道案内をしてくれたので、気がついたときには樹里の手に鍵が握られていた。
残るは遊園地のメインイベント、ジェットコースターである。この乗り物は何もかもがあべこべであった。
カートはコースに宙吊りになるように設置されているし、進行方向も後ろ向き。登りは早く、下りは極端に遅い。しかし1番あべこべなのは、恐怖を感じて早く降りたいと思うとコースターはいつまでも走り続け、楽しいと思うとコースは1周しかしてくれず2度と乗れなくなってしまう。
もちろん樹里は大の絶叫マシン好きなので、コースターは無情にもすぐに終了してしまった。
全てのアトラクションをクリアしたところで、樹里たち一行は入り口へと戻される。何をすべきかは一目瞭然であった。
閉ざされたゲートに1番最初の鍵と1番最後に得た鍵を差し込む。すると派手なネオンは一瞬で消え失せ、遊園地自体が泡のように消えていった。後に残されたのはくたびれた看板だけ…DREAD PARK…樹里は拍子抜けしてしまった。
「これって、誰のセンス?」
『まぁ…どんまい』
2人と1匹は遊園地を後にし、夢喰の部屋で夢神器…音の鳴らないオルゴールと、何も映さない鏡…2つを補充すると、そこで夢は覚める。
《夢喰さんと行く遊園地、楽しかったなぁ》
などと余韻に浸っていると、黒猫が申し訳なさそうに咳払いをする。
『お楽しみのところ悪いが、今何時だっけ?』
部屋の壁掛け時計を見ると、針はとっくに 7:30 を回っている。
「やっばーーーい!!!」
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