【2】警報と警戒
ジリリリリリリリ
耳障りな大音量のけたたましい非常ベルが、館内全館に鳴り響いた。
クラス中が騒然とし、担任は全員に席に着くようにと言い残して、廊下へと駆けて行ってしまった。
ある者は立ち上がって廊下を覗き込み、ある者はラッキーとばかりにテストの答案を写したりしている。
ただ1人…黒猫だけが深刻な顔をして
《ルゥ、どうしたの?》
樹里は耳を伏せて、何かに警戒をしている黒猫に不安を覚え、恐る恐る話しかけようとするが
『まずいな…いや…しかし。どういうことだ?…行くか…いやだめだ』
などと、黒猫はブツブツ独り言を言っているので、話しかけられなくなってしまった。
樹里は何を思ったか、自分の携帯に付いているストラップを取ると、黒猫の前でぷらぷらしだした。
ルゥは条件反射的にストラップをちょいちょい突っつく。猫の性には逆らえないのだ。
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目の前のストラップに夢中になっていたルゥだが、ハッとすると呆れ半分恥ずかしさ半分で言う。
『何だよジュリは~。いくらオレが猫だからってからかうな』
《そんなことより、どうかした?何だか深刻そうな顔してたけど》
『何者かが学校内に侵入したらしい。それ以上はまだー』
黒猫が言いかけたときに、蒼が樹里の顔を覗き込み、黒猫を遮った。
「どうした?一点見つめちゃって。心配事か?」
「えっ!あっいや…なんでも。あ、そうだ!お昼何食べようかなと」
樹里がしどろもどろで答えていると、凪が話に入ってくる。
「2人でなあに、こそこそ話してんの?」
「えっ!?なんでもないよっ!?」
樹里と蒼、2人同時に叫ぶ。その様子を凪はにやにやしながら見つめ、楽しそうに口を開く。
「お昼ならうちに食べにおいでよ。2人とも奢ったげる」
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凪の家はイタリアンレストランを経営している。手頃な価格で本格的なイタリアンが食べられるとあって、雑誌にも紹介されるほどの人気店である。
食べ盛りの男の子にとって、タダというほど魅力的なことはない。蒼には聞くまでもないとばかりに、凪は樹里にだけ質問を投げかける。
「樹里どうする?」
「うん、行く。ありがとう」
そこへ、岡崎先生が青い顔をして戻ってくる。
「みんな、すまん。英語テストの途中だが、今日のテストは延期になった。ちょっと先生達は用事があるから、みんなは集団で下校するように。いいか?絶対1人で帰ったり、寄り道したりするんじゃないぞ」
クラス中がアッと湧く。ただ1人と1匹を除いては…
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