第11話 未来へ


翌日の昼前に、俺は駅にいた。

帰路に着くためだ。


めぐみちゃんと、武雄がみおくりにきてくれている。

「お父さんと、お母さんが、また来なさい」って・・・

「ありがとう」


「お兄さんも、元気で」

「どうした武雄、らしくないな」

「姉ちゃんに、しごかれた」

めぐみちゃんを見る。


「はい、お弁当。車内で食べてね」

「ありがと。いただくよ」

差し出された手を握る。


温かい。


人の温もりは、温かい。

忘れていた。


でも、それだけではない。


「あっ、列車が来たよ」

2両編成の列車が入ってくる。


ちなみに、まだ非電化区間なので、ディーゼルカーだ。

電車ではない。


ドアが開くと、俺は乗り込む。


「じゃあ、またね」

「めぐみちゃんも、元気で。お変わりなきように」

「うん。私らしくね」


武雄は、席を外してくれている。

気を使ってくれているのか?


ドアが閉まる。


めぐみちゃんは、いつまでも手を振っていた。


「さてと」

俺はボックスシートのひとつに、腰をおろした。


めぐみちゃんからもらった、お弁当を広げる。

おむすびに、たこさんウィンナーに、甘い卵焼き


「定番だな」

思わず言葉がもれる。


「定番で悪かったわね」

「えっ、」

声をするほうを見ると、さっき別れたばかりの女の子がいた。


「めぐみちゃん、どうして?」

「どうしてじゃないわよ」

めぐみちゃんは、僕の前の席に座った。


「かけは、私の勝ちだから」

「何のかけ?」

「お父さんたちと、かけてたの」

「何を?」

めぐみちゃんが、人呼吸おく。


「君が変わっているか、否か」

「で、どうかけてたんだ」

「もし君が変わっていたら、約束通りに婿養子になってもらう」

お父さんたちは、そうかけていたようだ。


「私がかけたほうだけど・・・」

「ああ」

「君が変わっていなければ、私が押し掛け女房になる」

「えっ?」

「変わっていなかったから、私の勝ち」

「つまり?」

めぐみちゃんは、当たり前のように言う。


「悪かったな。変わってなくて」

「私は、今の君が好きだよ・・・なので」

「はい」

めぐみちゃんは、当たり前のように言う。


「私は、君と結婚します」

「ちょっと待て、いきなり・・・」

「空も青、海も青、共通点は?」

「つながっている」

そう、空も海もつながっている。


そこに限りはない。

俺とめぐみちゃんとは、つながる運命だったのだ。


「で。いつ結婚するんだ?」

「君の18歳の誕生日」

「来年の今日じゃないか?」

第一、俺の両親は、知っているのか?


「もちろんよ」

俺だけか・・・知らなかったのは・・・


「後悔しないな、めぐみちゃん」

「後悔しないために行くんだよ。旅館は武雄が継いでくれるって」

「あっ、そう」


めぐみちゃんは、俺の手を強くにぎった。


「じゃあ、よろしくね。私の愛する旦那様」

「よろしく、お嫁さん」


めぐみちゃんは、大切な言葉を口にした。

とっても、重要な言葉を・・・


【大好きだよ、青野空(あおのひろし)くん】

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サマーブルー 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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