第7話  授業


「では、先生お願します」

めぐみちゃんは、頭をさげる。

「先生は、よしてくれ」

「いいえ、けじめです」

「そう?」

調子が狂う。


「では、授業を始めます」

「はい。先生」

「先も言いましたが、これは僕の自己流です」

「はい」

「なので、一般には、通用しないと思います」

「それで、大丈夫です」

めぐみちゃんは、にこにこしている。


何が、望みだ?


「えーと、今日は海を描きます」

・・・って、海しかないんだが・・・


「まず、ここからは空と海が見えます」

「はい」

「空の青と、海の青とは違います。わかりますね?」

「はい」

「空の青は、海の青よりも、濃くしないでください」

まあ、童画になると、変わるが・・・


「まず、今日の場合は、青い色鉛筆を用意してください」

「はい。持って来ました」

めぐみちゃんは、青鉛筆を用意する。


「その青鉛筆で、画用紙の中心にラインを引きます」

「先生、どのあたりに、引いたらいいですか?」

「今日のところは、中央に引いて下さい」

「はい」

別に現場でなくても、描けるのだが、実物をみて描いた方がいいだろう。


めぐみちゃんも、それが目的だろうし・・・


「空の青のほうが、海の青よりも薄いです」

「はい」

「色を塗る時は、空を先に塗って下さい」

・・・って、何、当たり前のことしか言ってないんだ?


「先生、雲はどうしますか?太陽はどうしますか?」

めぐみちゃんは、訊いてくる。


「向かって右側に、島がありますね」

「あれは、半島です。先生」

「どっちでもいいです。太陽はバランスを取るために、左側に描いて下さい」

別に、写生でなくても、いい気がしてきたが・・・


「先生」

「何ですか?」

「見本を見せて下さい」

そういう事は先に言え。

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