第2話 めぐみちゃんの、おうち
「変わってないね、ここ」
「老舗の旅館だからね、そう簡単には、変えられないよ」
めぐみちゃんは、むしろ誇らしげに言っている。
めぐみちゃんの家は、老舗の旅館。
いわゆる海の家。
毎年、夏になるといそがしくなる。
いそがしいとは、漢字で心を亡くすとかくので、めぐみちゃんは嫌がっているが・・・
めぐみちゃんは、俺と同じ歳なので、今は高校2年・・・
でも、それは俺からは、訊かないほうがいいだろう。
「さっ、入って」
「ありがと」
「自分の家と、思っていいよ」
「そうさせてもらう」
「少しは、遠慮しなさい」
「はーい」
昔と変わらないやりとりだ。
「お父さん、お母さん」
めぐみちゃんが、おじさんと、おばさんを呼んでくれた。
「いやあ、久しぶりだね。元気だったか?」
「おかげさまで。おじさんとおばさんも、お変わりなく」
「変わっていくのは、若いうちだけだよ」
でも、気付かないだけで、かわっているかもしれない。
「あっ、兄貴、来てたんだ」
そこには、武雄がいた。
「こら、武雄。もう中学生なんだから、礼儀を慎みなさい」
「姉ちゃん、昔からの仲なんだから、遠慮は失礼だよ」
「へりくつはいいの」
「はーい」
武雄も、めぐみちゃんには、頭が上がらない。
そろそろ犯行期になるが、めぐみちゃんには素直なままだろう。
「兄貴は、いくつになった?」
「武雄の姉ちゃんと、同じ歳だよ」
「そっか、大きくなったな」
こっちのセリフだ。
「ところで、あの話は考えてくれたかね」
「何ですか?」
おじさんと、おばさんの質問に、俺は戸惑った。
おそらくあれだが・・・
「めぐみの婿養子になって、うちを継いでくれという話」
「武雄がいるのでは?」
「こいつでは、潰れる」
俺は、便利屋か・・・
「すいません。突然の訪問だったので、何もなくて・・・」
「気にしなくていいよ。後、さっきのも、冗談だからね」
「はあ・・・」
そうあってほしい。
「ゆっくりしていけるんだろ?」
「夏休み期間は・・・」
「なら決まりだ。めぐみ、お部屋にお連れして」
「はーい」
めぐみちゃんは、元気よく返事をする。
さすが、旅館の娘だ。
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