伯爵と奥様

「旦那様。ご報告があるの。今、大丈夫?」


「ああ。もちろん。大丈夫だよ。どうした?」


今は夕方。旦那様は眠そうですが、お仕事中のようでございます。


ですが、大丈夫ということは、お仕事もかなり順調ということです!さすが、旦那様!


「男爵夫妻の孤児院から、15歳の少年少女を引き取ります。少年ミオンは、庭師見習いに。少女ミーニャは侍女見習いにする予定です。」


「うん。わかった。庭師のおじさんと侍女長に早めに知らせておこう。見習いが来るとね。」


「旦那様、お願いしますねっ!とっても可愛い子達なんですよ!ありがとうございます。」


この屋敷の人達は、厳しくも、優しい人ばかりですから、大丈夫でしょう。


万が一、自分の本音を言えずに、我慢していた場合、私に知らせるよう、庭師の奥さんと侍女さん達に気をつけてもらう予定です。


「ふふ。実は、ミオンくんとミーニャちゃん、想い合ってるのかもしれないの!」


「ああ、だから、同時に採用をしたんだね?」


「そうよー。可愛いらしい二人の恋を応援してみたくなりましたの。」


孤児院では、最年長の子達は、小さな子たちの面倒を見るので、非常に忙しいのだ。


二人に対し、経済的な面でもフォローを入れる事で大人に近付いたら、本物の恋愛になるかもしれない………!


もちろん、未来はどうなるか分からないので、後は、ただただ見守るだけである。






「フィー。こちらに、おいで。」


「はい、なんでしょう?エルストース様。」


奥様フィーリエ・ユクシール伯爵夫人は、名を呼ばれて、ゆっくりソファから立ち上がった。


旦那様であるエルストス・フォン・ユクシール伯爵に近付いて、きょとんと見上げる。


「子どもの相手をするのが好きなら、姪っ子の王女殿下にも会ってくれないか?」


「姫様にですか!?私は、構いませんけれど、今は、確か、13歳でしたよね?」


姫様は、旦那様の兄君である国王陛下の長女にあたる可愛いらしい女の子です。


他にも、3歳になる皇太子殿下がおられます。


「王妃様は皇太子殿下の世話をしていて非常に忙しく、王女殿下を構ってやれないらしい。」


「わたしは、まだまだ、新婚の身なのですが、大丈夫でしょうか………?」


「大丈夫だよ。君ならね。何度か、孤児院で、面倒を見てるんだろう?それに、王女殿下は、かなり賢いお方だ。安心できる。」


「分かりました。姫様にとって義理の叔母でもありますものっ!引き受けましょう。」


「ああ。ありがとう。フィー。愛してる。」


「ど、どういたしまして………!」

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