第13話 空間の歪みとエネルギー


「それじゃあ、冷泉さんからは色々な情報が聞けたから次は僕の番かな。

 二人に役立つ情報がいっぱいあると思うよ。」


俺と冷泉はその言葉にそれぞれ期待を募らせた。しかし幸か不幸か、その後光友さんがいう言葉の数々はその期待をはるかに超え、俺たちを驚嘆させたのだった。


「それじゃあまず一つ、二人はこの世界からパラレルワールドに行く方法を探しているようだけど、おそらくこの世界から自らの意思で並行世界に行くのは無理だろう。」


突然、俺たち二人の今までしてきた研究目標が否定されてしまった。

苛立ちなどは全くないが、とにかく驚きだ。

まず光友さんが言うくらいだから、何かしらの強固な理由なり、また証拠なりがあるんだろう。


「理由を言わせてもらうと、二人も知っている通り、もし並行世界へ行きたいなら膨大なエネルギーを必要とする。

 ただ、そもそもの話、そのエネルギーをどう使えばいいのか、またどう集めるのか、それを知らないだろう。

 加えて、それに関する文献はからっきり見つからない。はっきり言わせてもらうと、この世界が、僕たちの住む世界は非常的に一方的なものなんだ。

簡単に言えば、並行世界の住民はこっちに自分の意思で来ることができるが、僕たちからはいけないんだ。

 それと、僕は地震との関連性を調べていると言ったが、厳密に言えば「並行世界で起こる地震と我々の住む世界の空間の関連性」となる。

 僕はこの世界で起こる地震は非常に小規模なものだと思っている。約1000年前、この地球に隕石が落下したらしい。

 大きさこそ小さかったものの、その衝撃は地震を起こすには十分すぎるほどで、日本の地震基準では、レベル9になる。

 この基準だとレベルが1上がるごとに、約96倍エネルギーが高くなる。また、災害として起こる地震は過去記録にある中で、

 最大のものでもレベル2だ。そんなレベルで、空間を歪められる訳がないんだ。」


 「だから、僕はある機械を作って、検証してみた。というより、研究していた時にたまたまできた偶然の産物でもあるんだけどね。

 この機械は本来人工的な揺れをこの容器内に強制的に発生させることによって、空間の歪みを観測するものだったんだけれど、

 そこで衝撃的な結果が得られた。ごくたまに、この容器内の空間の一部が裂け、そこに観測はできても特定不可能なエネルギーが発生した。

 僕はそれを、並行世界から来たエネルギーと睨んでいるんだ。」


「「......」」


俺と冷泉は怒涛の説明とその内容に開いた口が塞がらなかった。冷泉は話についていけているのか、少々疑問だったが、彼女のことなら大丈夫だろう。

ちなみに俺は、話の方向性こそ理解しているものの、細かいところはよくわからない。圧倒的調べ不足だったようだ。


「まあだから、結論を言うとこうなるんだ。僕たちが並行世界へ行く方法、いや、僕たちがたまたま並行世界へ飛んでいってしまう方法と言った方が正しそうだな。

 それは、並行世界で地震などのエネルギーが発生する何かしらの現象が現れ、そのエネルギーをキャッチするために、あらかじめこちらで空間に歪みを作り、裂け目を作っておく。

 そうすればその裂け目にエネルギーが入るので、その中に入れば、もしかしたらいけるんじゃないか?ってことだ。」


「「......」」


僕たちはいまだに口が開いている。冷泉も流石に唖然としていた。

それから、僕と彼女が口を開くのはしばらく経ってからのことだった。

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