第12話 東京第一高校 Ⅱ
それから俺たちは東京中央駅を出て、およそ30分ほど歩いたところで目的地が見えてきた。
東京第一高校は駅から以外と離れているので少し歩かないといけない。バスで行けばすぐつくのだが、そこは節約だ。
それにしても、この高校はすごい校舎だ。100mは優に超えるであろう第一校舎棟、おしゃれなデザインで全国的にも有名な食堂、娯楽棟。
そして校庭と思わしき所には無数のドローンが飛んでいて、ロケットの実物大模型がある。この調子でいくとあの巨大ロボットの模型があってもおかしくない。
彼女もきっと唖然としているのだろうと、話しかけてみる。
「冷泉、この学校、いい意味でやばいな...、外観を見ただけでそう感じる。」
「そっか、高槻君初めてだもんね。私も初めて来た時はそれはもう驚いたよ。」
「冷泉前に来たことがあるのか?」
「うん、実は中学生の時東京第一高校にうちの学校に来ないか?って誘われたことがあるの。
その時にこの学校に来て、中にも入ったよ。声が出ないほど内装は綺麗だった、それはもう何から何までね。」
「そうだったのか、そういえば冷泉は天才だったな。」
「うん。」
「否定しないのかよ。」
「うん。」
「そ、そうか。まあいい、とりあえずあそこの門番みたいなおじさんに話しかけてみるか。」
「門番て。」
俺たちはまた少し歩き、東京第一高校の校舎に入った。入ったといえ、
校舎棟に入るためにはもちろん許可を取らないといけないのでそこのおじさんに話しかけて許可をもらおう。
「あの、すいません。神奈川第一高校の高槻裕也と申します。今日の正午に東京第一高校に訪問する予定だったのですが、よろしいでしょうか?」
「ごめんなさいね。わしはただ不審者がいないか監視しているだけだから、それだったら校舎棟に入ってすぐ受付がいるからそこに聞いてごらん。」
「あ、ごめんなさい。教えていただきありがとうございます。」
そう聞いたので、とりあえず校舎棟に入り無事受付の人もいたのでそこで確認も取れた。
聞いた所、現在光友優希は授業中らしく、その授業が終わったらこっちに来るらしい。
「あと10分くらいか...、とりあえずその辺に座って待つか。」
「そうだね。」
それから10分経ち、エレベーターから一人の男子生徒が降りてきた。外見はかなりスマートで、10人に聞けば7人がイケメンといいそうな顔だった。
「もしかして、君たちが神奈川第一高校の生徒さん達かな?」
「はい、そうです。僕は神奈川第一高校1年生の高槻裕也といいます。本日はよろしくお願いします。」
取引先にするような深々とした礼をした。また、流石に年上の前で一人称を「俺」と呼ぶわけにはいかないので、ここは「僕」でいこう。
「で、こっちが...」
「あっ、私は1年の冷泉葵と申します。えっと、よろしくお願いします!」
「いや、そんなに緊張しなくてもいいよ。楽に行こう、楽に。」
「はっ、はい。」
「それにしても、冷泉....、どっかで聞いたことがある名前だな。
...もしかして、旧冷泉財閥の?」
「一応、そうです。」
「すごいなー、まさかここでそんなお方と巡り会えるとは、これはラッキーだな。」
「いや、そんなこと。」
冷泉は彼女のスキル「人見知り」を遺憾なく発揮していた。
この調子で大丈夫だろうか、でも光友さんはかなりフランクで優しそうな人だったので安心した。
「それじゃあ光友さん、そろそろ...」
「そうだね、じゃあ二人ともこっちに来て。」
そう言うと光友さんは僕たちをある教室に案内してくれた。
そこには、自分達の部室の比にならない量のコピー用紙と、何に使うのかよくわからない機械いくつか置いてあった。
「これ、すごい......」
冷泉は思わず声が漏れていたようだ。
「それで、高槻君と冷泉さんは僕に相談したいことがあって来たんだっけ?」
「そうなんです。今私たちが研究している内容について光友さんの研究と意見が参考になると思ったんです。」
「それで、二人はどんな研究をやっているんだい?」
「えっと...、可能であれば秘密にしてもらいたいんですけど...」
「ええ、もちろん。」
「良かったです。私たちの研究しているテーマは、単刀直入に言えば並行世界についてです。」
その後冷泉は少し前、俺が仮入部をした時に説明してくれたことを簡潔にまとめて光友さんに説明してくれた。
「へぇ、なかなか面白いテーマだね。それで、僕の研究内容とどう関連してると思ったんだ?」
そこも冷泉はこの前俺たちが議論していた内容を話してくれた。よくよく考えれば彼女は話し相手に慣れてしまえさえすれば、とても人に説明するのが上手いので、所々役立っている。
「そう言うことか。うん、とりあえずわかったよ。それじゃあ、次は僕の研究していることについて詳しく話すよ。
実を言うと、僕もホームページに載せているテーマはあくまで仮の物なんだ。ただ、実際研究しているものとも関連性がある。
なぜ僕がそんなことをするかと言うと、理由があるんだ。」
「「理由?」」
「うん。で、その理由というのは簡単に言ってしまえば、仲間を見つけたかったからなんだよ。
二人もわかっていると思うが並行世界についてのテーマをそのまま発表したり載せたりしたらまともに取り合ってくれる研究機関、大学、先生なんてほとんどいないはずだ。
でも僕は個人単位では少しはいるのではないかと信じていた。だから僕はホームページに並行世界のことを真面目に研究していたら必ず当たることになるだろう地震についてのことを載せたんだ。」
「そ、そうだったんですか...」
俺は光友さんの考えに感服するのと共に、非常に嬉しく感じた。その理由はもちろん俺たちと同じように並行世界について研究している仲間を見つけられただろう。
冷泉もおそらく僕と同じようなことを思っているはずだ。
「テーマが同じなんだったら折角だから3人で情報を出し合ってみよう。僕と神奈川第一高校、研究レベルにどれだけ差があるか、またお互いにどの部分での知識が浅くどの部分が深いのか、確かめられるいい機会になるだろうし。」
「いいですね、やりましょう!」
冷泉は満面の笑みを浮かべながら光友さんに言った。ちなみに光友さんは提案した時地震に満ち溢れた表情をしていた。おそらく俺たちの研究は光友さんよりかなり低いと思っているんだろう。
それが事実である可能性は非常に高いのがなんとも言えないが、ここは神奈川第一高校プライドだ。前までそんなの使った覚えがないが、ここは都合よく使わせてもらおう。
俺たちの宇宙同好会だって、負けてないはずだ。
そして、しばらく光友さんと冷泉の熱い議論が繰り広げられていた。並行世界についての知識については冷泉が何枚も上なので、神奈川第一高校の研究段階ももちろん彼女が言った。
また、光友さんはそれをも上回る知識、情報を持っていて、俺が二人の議論に入る余地はどこにもなかった。
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