第9話 東京第一高校 Ⅰ
/*翌日-放課後-4011教室*/
宇宙同好会の俺と冷泉は今日も、並行世界について議論していたのだが、
彼女が新しく見つかったことがあると言って、話を変えてきた。
「高槻君、実はとても昨日興味深い文献を見つけたの。
それを昨日調べてたんだけどね、もしかしたら
利用できるんじゃないかって。」
「おお、どんなやつ?」
「地震を利用するの。」
「......地震を利用って、どんな感じで?」
「私も詳しいことはまだわからないけど、地震によって
地球の空間が歪むだとかなんだとか...」
「地震....」
昨日俺が調べたことと関係があるのだろうか。
もしあったとしたなら、流石にこんな偶然は奇跡としか思えないが、
それこそ東京第一高校の光友優希が研究しているものだろう。
念の為彼の研究内容を彼女に伝える必要がありそうだ。
「冷泉、実は俺も似ている研究をしている東京第一高校の生徒を見つけたんだ。」
「似ている?」
「ああ、地震に関する内容だった。」
「昨日印刷してきたから、ちょっと見てみて。」
俺はカバンの中から数枚の紙を取り出し、彼女にそっと渡した。
彼女は読んでいる内に段々興奮を隠しているような表情になっていき、読み終えた頃には隠しきれていない様子でこう言った。
「これだ!!」
「これだよ、高槻君!」
「そ、そうか」
「うん、それで、この光友優希って人に連絡って取れるの?」
「わからないな、ただ同好会の研究の参考という名目で部活動の一環として、
と言う理由なら東京第一高校に連絡をして、
何か行動をしてくれるかもしれない。
だから、ひとまず俺は担任の野口に相談してみる。」
「ありがとう、私にも何かできることってある?」
「そうだなー、とにかく地震と空間、また時間の関係性を掘り下げてほしい。」
「わかった。」
「じゃあ善は急げ、だな。まだ下校時刻まで時間はあるし、担任に相談してみるよ。」
「うん、わかった。いってらっしゃい。」
「おう」
俺は4011教室のドアを開け、廊下に出た。外は爽やかな秋晴れ、少し日が暮れていた。
教室には窓がないものだから、教室から出るとどうも外の様子が気になってしまう。
階段を降り、また廊下を歩き、第1職員室についた。この学校は
高一、高二の先生が第一職員室、高三とその他の先生が第2職員室と決まっている。
第1職員室には、担任がいるはずだ。職員室に入る際の謎のマナーを行い、担任の野口を探す。
すると、
「どうしたの、高槻君。珍しいわね、なんか用?」
担任がすぐそばにいて話しかけてきた。
「はい、部活についての相談が少しあって。」
「私は部活の顧問はやってないから、参考にならない部分もあるだろうけど、それでもいいなら喜んでやるわよ。」
「ありがとうございます、ではよろしくお願いします。」
そして俺は先生にさっき冷泉と話したことを伝えた。そして、先生曰く学校に連絡し、アポを取ることまではできるが
光友優希に会えるかは本人次第なのでそこまでは現時点でわからないらしい。
たが、先生が東京第一高校に連絡してくれるというので非常に助かった。
俺は久しぶりに、先生という人が頼りになることを知った。
「ただいまー」
「高槻君、おかえりなさい。どうだった?」
「ひとまず先生が東京第一高校に連絡してくれることになったらしい。
それからは光友本人次第だと。」
「先生優しいね。でもよかった、これで計画が進むかもしれない。」
「それで、冷泉の方は何かわかったことはあった?」
「うん、とりあえず解釈だけはできた。
まず、当たり前のことだけど地震が起こると地面が揺れるから結果的に空間も揺れることになる。
でも、この『空間が揺れる』ってことは実は私たちも常にしていて、実は私が腕を振るだけで
この空間は揺れ、そして一瞬だけ歪むの。そして、時間もほんの少しだけ遅れる。
それが地震ともなると膨大なエネルギーが発生し、それによって揺れることになるから、
時間がそれなりに遅れる。...という可能性ならあると思ったの。」
「...そういうことか。やっとこの意味がわかったよ。
さすがは冷泉だな。見直したよ。」
「どういうこと?」
彼女が笑って言った。
僕は最近彼女に対し、第一印象とはかなり別の印象を抱いていたので、
彼女が「天才」であることを忘れていた。
/*翌日*/
朝、俺は担任に呼び出された。前回の件のことだった。
東京第一高校曰く、部活や研究のためだったら喜んで、と引き受けてくれたそうだ。
また、光友優希についても同じような研究をしている生徒が全くいないため、
仲間ができた!っと言っていて、かなり嬉しがっていたと聞いた。
また、日時については自由に来てくれればいいと言っていた。
基本的に活動できるのは放課後の部活の時間となるが、その場合は特例として
少し時間をくれるそうだ。
その後、特に難なく授業を受け、放課後になると4011教室に向かった。
そして冷泉に朝担任と話したことを全て伝えた。
すると彼女は
「明日行くよ。」
「...は?」
「だって、今日はもう11月の4日。あまり日をまたぐと、期末テストがすぐになってしまうよ。
それに、誰かさんの分の勉強を教えなければならないからね。」
「それもそうだが....、まあ早くてもいいか」
「そうよ。とりあえず、お昼頃までに着けばいいのよね。
ここから東京まで、駅でいうと横浜中央駅から東京中央駅。
リニアでいけば数分、普通列車なら25分くらい。
なんかリニアだと味気ないよね、普通列車で行く?」
「移動に味気なさなんてないだろう。ただ、移動中に聞きたいことの再確認もやりたいし、
早すぎるのもあれだな。普通列車で行くか。」
「うん」
「じゃあ何時に学校を出るか、だな。学校を出る許可は先生に言うだけで取れるから
あとは出発する時刻を決めるだけだな。」
「そしたら4時間目が終わってすぐがちょうどいいんじゃない?
区切りもいいし、慌ただしくもない。」
「そうだな、じゃあ担任には明日連絡しとく。」
「よろしくね。」
こうして今日の活動は終わりを迎えた。帰ってからの東京への準備が若干慌ただしかったのは言うまでもない。
/*翌日*/
朝には担任に連絡をして少々驚かれたが、とりあえず許可は取れた。これで、4時間目が終わったら学校を抜け出せばいいだけだ。
/*4時間目-終了後*/
「高槻、今日どっか行くんだって?、部活関係?」
なぜかすごい久しぶりに古谷と話した気がするな。しばらく声さえも聞いていなかった気がする。
「どっから聞いたのかわからないが、そうだ。東京第一高校に行ってくる。」
「へぇ、あそこに行くのか。あそこはすごいよね。
校舎の広さ、設備から何から何まで他の高校とは格が違う。
高槻も楽しんでくるといいよ。」
「ああ、そのつもりだ。じゃあ、古谷は授業頑張れよ。寝ちゃダメだぞ。」
「わかってるよ、そんなこと。」
古谷と会話したことでちょっとした緊張がほぐれた気がした。
とりあえず、焦って行く必要はないがだからと言って、呑気にしている暇もない。
「じゃあ、古谷。またな」
「うん、じゃあね。」
古谷に一言言い、教室を出た。冷泉との集合場所は校門だから、とりあえず外に出る。
そして、校門に向かうと彼女が既にいた。
「高槻君、遅いよ。」
「え、そんなことはないと思うけど。」
「ふふ、冗談冗談。
じゃあ早速、いこ。
東京第一高校へ、レッツゴー!」
「お、おー」
今日は彼女のテンションが一段と、いや二段三段くらい高かった。
まあそれもそうだ。これから俺たちは日本最高峰の高校へ行くのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます