第8話 並行世界について Ⅱ
仮入部をしてから、1週間が経った。
冷泉からの並行世界についての説明も一通り終わり、
いよいよ俺も研究をし始めるところだ。
研究し始めるとはいっても、何をどう調べたらいいのだろうか。
研究費に関しては彼女の親が大半を負担してくれるらしい。
さすが旧財閥の令嬢だ。
しかしながら、彼女がどうやって親を説得したのかは俺に教えてくれない。
とりあえず、お金の心配は皆無であると彼女は言っていた。
また、俺も最低限の知識は付けられたので
最悪彼女のサポートができるくらいにはなっただろう。
ただ、二人別々に考えるとなると
自分の方がかなり苦しくなるともわかっていた。
とはいえ彼女の立てている計画を元にすれば、
タイムリミットまでは全然時間がある。ゆっくり考えてみよう。
そうだ、とりあえず仮入部の期間は終了だから
入部届を出さなければいけないんだった。
それも後で彼女に報告しないといけないな。
***
高槻君に協力を求め、成功したまではいいですが
彼に何を手伝ってもらいましょうか。
正直に言ってしまうと、彼の今までの様子、体験を見てみると
「0から1」を出すのは苦手なのでしょうが、
「1から100や0.1から30」など、
何かしらの媒体で手にしている知識から応用するのには私も目を見張るものがあります。
そこで彼にはあらかじめ今までの理論、
科学者たちの様々な見解を説明してきました。
その知識を組み合わせながら、新しい理論を導くのは彼にもできるはずです。
もしかしたら、私一人でやった方が速いという人もいるかもしれません。
確かに私は他の人とは違う、並外れた知能を持っています。
しかし、いくら知能が良くても今回だけは別問題なのです。
いくら頭が良く、思考できてもさすがに
別の世界までは予想することはできませんから。
でも、彼の意見を借りながらやっていけば、
もしかしたらできるかもしれません。
/*4011教室*/
「それで、冷泉。今日は何を議論していくんだ?」
「今日はとりあえず、今考えられている並行世界へ飛ぶ方法について比較したいと思うの。」
「それは一昨日説明した大まかに2つに分かれるものか?」
「そうだね。この中にある方法を組み合わせれば、もしかしたら答えが導き出せるかもしれないと思ったから。」
「わかった。それじゃあ早速始めるか。」
私が彼に説明した並行世界へ飛ぶ方法は主に2つ。
一つ目は、「宇宙」に関連する方法。
私は中学生の時、ある文献を目にした。
その文献には、「ワープ、タイムトラベル、この二つの空想技術が実現された先に並行世界への扉が開けるだろう」と書いてあった。
そこから考えて、パラレルワールドへ飛ぶこと、この際「ジャンプ」と呼びましょうか、ジャンプするためには、まずワープ、タイムトラベルについての
理解を深めなければいけません。
ワープに関しては私もすぐにわかりました。
折り紙を折るように、3次元空間を
折り畳むことである地点と別の地点は同じ座標にあることになります。
そして、そこを爪楊枝で刺すようにつなげばワープはできるでしょう。
つまり、3次元空間に、3次元の穴を開けることで、
別の空間へ瞬間的に移動できるのです。
しかし、これはあくまで理論ですから実現となるとまた別の話になります。
タイムトラベルですが、私が思いつけたのは一つだけでした。
それはこの宇宙ごと超光速で過去に移動することです。
私の世界では物体が光を超える速さで動くとき、その物体は過去に動くとされています。
それを利用して、過去に戻るのです。
ただ、それには一つ重要な問題点があります。
そもそも宇宙の質量は超膨大でしょう。それを超光速で動かすのですから、もし仮に光速で動くとしても
e=mc^2 の公式に当てはめてみると、途方も無いエネルギーが生まれることになります。
よって、この方法ではタイムトラベルはできないでしょう、
ここまで考えてきた私ですが、正直これらの何がジャンプにつながるのか、全くわかりませんでした。
ですから、これも彼と議論する余地があるはずです。
そして2つ目です。
それは「不思議な力」を利用すること。
「不思議な力」と言っているくらいですから、それを視覚的に理解するのは非常に難しいでしょう。
簡潔に言えば、「都市伝説」的なものを利用することになるのですから。これはあまり確実性が無いです。
あったとしても、やはり安全とは言い切れない部分も多い気がしますので、
これは議論する前に私から先に否定しておきましょうか。
「......」
「......」
私も彼も、なかなか言うことがないのかしばらく沈黙の時間が流れます。
最初に口を開いたのは彼でした。
「正直俺は、2つ目の方法はやめたほうがいいんじゃないかと思っている。
ひとつ目の方法は、どちらかと言うと科学的で比較的安全性を保証しやすい。
一方2つ目は真逆で、明らかに危険だ。冷泉はどう思う?」
「私もそう思う。だから、どうにか1つ目の方法をもとに作れないかなと思って。」
「うーん...」
「難しいね...」
そこからまたも沈黙の時間が流れます。彼も1つ目についてはなかなか理解しがたいのでしょう。
ここはしばらく時間をあけてまた議論してみるのが良いかもしれないですね。
「私もちょうどそこで悩んでいるから、この議論についてはまた今度しようよ。」
ここで彼も賛同してくれると思ったら、思いもよらぬ提案をしてきました。
「そうだ。東京第一高校の力を借りればいいんじゃないのか?
あそこは京都第一高校と違って、バランス型ではなく完全特化型の生徒が集まるところだ。
もしも並行世界に少しでも関連するような研究を行なっている者がいたら、それは
俺たちの考えを遥かに上回っているだろうし、参考にもなるだろう。
そして生徒の研究内容はホームページで公開されている。
そこを見て、実際に聞いてみるのもいいかもしれない。」
「...その手があったか!、さすが高槻君、天才ー!」
「...(貶されてるようにしか思えない...)」
「と、とりあえず、帰ったら見てみるよ、それでもしありそうだったら明日の部活に教える。」
「ありがとう。」
「それと、今俺は仮入部の存在だが、とりあえず正式に入部したいから、入部届を持ってきた。」
「そうだったね、もう普通に部員として扱ってたよ。」
「俺も普通に部員だと思ってた。」
「でもこれからは正式に宇宙同好会の部員だね。改めてこれからよろしくね!」
「ああ、よろしく。そういえばここは宇宙同好会だから会員じゃないのか?」
「細かいところはいいの。それに別にどっちでもいいんじゃない?」
「そうか、それもそうだな。」
「じゃあとりあえず、今日は解散にしましょう。高槻君、お疲れ様。」
「はい、お疲れ様。」
「それと、私は少し学校に用事があるから高槻君は先に帰って。」
「ああ、わかった。それじゃあな」
「うん、じゃあね」
そうして彼は教室の扉を開け、廊下に出て行った。
それで私の用事というのは、とても興味深いがあると風の噂で聞いたからだ。
それは、「地震」を利用するというものだった。
私はなぜ地震が関係するのか、調べてみたい気持ちがあったので、残ることにした。
彼にも、そのことを後々伝えよう。
***
/*家*/
「さて、東京第一高校の研究内容を見てみるか...」
東京第一高校の研究内容を検索するには、研究に関連するワードを打てば基本的に表示される。
俺はまず、パラレルワールドと打ってみた。
しかし結果は、検索結果0件だった。流石に直球すぎたか。
少し遠回しに検索すれば、俺たちの研究に合っているものが見つかるかもしれない。
そこで、関連ワードを「時間」と打ってみた。
するとどうだろう。時間に関係する研究は2件見つかった。
**
1: 研究者 館林神奈
研究内容 植物たちの時間感覚の違い
2: 研究者 光友優希
研究内容 地震のエネルギーによる空間の歪みから生じる時間の変化
**
「地震のエネルギーによる空間の歪みから生じる時間の変化......」
「...これだ!」
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