第6話 パラレルワールド

***


「私の過去から少しだけ話してあげる。」


 まあ、流石に理解されるはずありませんね。理解できるとしたら、

その道の研究者か、厨二病だけでしょう。

私だって初めっから信じれるものじゃありませんでしたし。

とりあえず、なぜ私が並行世界に興味を持ったのかを話しましょうか。


/*およそ30分後*/


「.....っていうことなの。

 少しでもいいから、理解できたりするところはあった?」


「かなりきつかったけど、どうにか。

 まあ、ただそんな理解はできてもそんな簡単に信じれるものではないな。

 流石に、うん」


そうだ、彼が別名「教科書人間」であることを忘れていました。

彼は、人の気持ちは人並みに理解できても、

非現実的なことの理解は難しいのでしょう。

ここで私が教科書以外の大事なことを教えられるいい機会かもしれません。


「で、とりあえず俺はこの同好会に入ったら、どんな活動をすればいいの?」

「そうだね〜、資料の分析や、議論。時々私の雑談に付き合ってくれると嬉しいかな。」

「最後若干外れてるものがある気がしたぞ。」

「気にしない気にしない。」

「...そうだな」

「じゃあ、とりあえず仮入部してみることにするよ。

 なんか面白そうだし。でも一つお願いがあるんだ。」

「何?」

「それは....えぇっと....」

「......勉強を教えてくれ!!」


「...なぜに?」


私は驚きで少しアクセントを間違ってしまいました。

私の目が間違いでなければ、彼は入学からずっと成績で学年1位だったはずです。

また、彼はどれを努力でこなしてきた部分があります。

それに関して、対照的な自分になぜ頼んできたのでしょう。


***


もう、「才能」だとか、「努力」だとかは、段々どうでもよくなってきた。

とりあえず、ここはひとまず「結果主義」になろう。

「結果がどうでもいい」と思うほど、俺の考えは変わっていないので、

ここは最短ルートでいい結果を残すのが望ましい。

なぜわざわざそんなことをするのか?


なぜだろう。ただ僕は、少しだけ気持ちがウズウズしている。

今まで、「成績」というとても狭く、暑苦しい空間から少し離れた気がしたから。

それも皮肉なことに「天才」な彼女によって。

それに加えて、僕は多分、冷泉と研究をしたかった。

いや、研究でもなんでもいい。とにかく、冷泉という人間をもっと詳しく知りたくなった。


恋愛感情も少し入っていたかもしれない。好奇心ももちろんあった。


「なぜかっていうと、それは、...

 ほら、時代は効率!だよ。

 今のトレンドは効率なのさ。

 だから、自分一人でやるよりも冷泉とやったほうが、絶対いいかな...なんて、はい」


明らかにアウトな言い訳だ。

少なくとも冷泉にはこれが「嘘」であることはばれたはずだ。

でも別にいい。彼女が賛同してくれれば、とりあえずは結果オーライだ。


「まあ、深くは聞かないけど、いいよ。

 教えてあげる。その代わり、私が教えるからには

 中間テストよりいい結果とってね、

 取れなかったら、...取れなかったら、

 うーん...何にしよう...」


「そうだ、ジュースを奢ってもらおう」


「それだけでいいの?」


あれ、意外と優しい、やっぱり彼女はいい人なのだろう。

高槻裕也、感服いたしました。


「誰が1本だけだと?」


「...へ?」


「1ヶ月分奢ってもらおう!」


前言撤回。

彼女の性格については、もう少し様子を見よう。


「あ、もう五時半。最終下校時刻だ。

 じゃあそろそろお開きってことでいい?」


「そうだな、そういえば終礼ってあるの?」

「ないよ」

「顧問は?」

「いないよ」

「部長は?」

「いな...ここにいます!」


まさか冷泉がノリツッコミに答えられるとは。


「というか顧問がいない部活ってそれ部活なのか?」

「まあ、細かいところはいいの。

 そもそも私一人で設立できたこと自体例外なんだから。

 こんなこともあるよ。」

「そう...なのか...」


「そう...なの...よ」

と冷泉が少しからかうように言った。


/*自宅*/


「しかし、パラレルワールドかぁ......

少し調べてみるかなぁ」

俺は目の前のパソコンに体を向け、"パラレルワールド 実在"と検索した。

「しっかし、ネットは便利だな」


おおよそ半世紀前にインターネットは開発されたものの

当時のハードウェア開発が間に合わず、

2020年代までネットをまともに使える機器はなかった。

そんな中登場したのが、携帯電話とパソコンだった。

携帯電話は、当時の最高技術だった有機ELという素材を使って、

折りたたみ式のコンパクトなものだった。

パソコンは、その携帯電話にキーボードをつけ、性能を爆上げした感じだ。

ただ、当時の機器は3Dゲームもまともにできないほど性能が低く、

ネットと少々のお絵かきを嗜むためのお高い機械となっていた。


さて、検索結果が表示されたわけだが...


**

- - -検索結果- - -


パラレルワールドは実在した!?、驚愕の理論!


並行世界論に世界が震える!


並行世界論 入門

**


うわ、最後の一つ以外とんでもなく胡散臭いな。

「世界が震える」ってなんだ?

震えたらかなり地球まずいことになってるはずなんだがな。


とりあえず、最後の「並行世界論 入門」ってのだけ見てみるか。

それでもう今日は寝よう。

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