第4話 宇宙同好会へようこそ!


/*校舎*/


昨日もらったメモを再度確認する。

そこには宇宙同好会の活動場所、集合日時が書いてあった。


**

宇宙同好会

活動場所: 第1校舎棟-4F-4011教室

集合時間: 16:30まで(できるだけ早くお願いします)


**


「4011教室...か」

そこは、いろいろ噂の絶えない教室だ。

別に幽霊が出るというわけではないのだが、

建築ミスで窓がつけられなくなってしまった結果、

電気をつけないと四六時中真っ暗な教室なのだ。

そういう雰囲気が好きな人も多いので、

別名「秘密基地教室」と呼ばれているらしい。

というか、

彼女が一人で同好会をやっている時点でそこは秘密基地なのではないか?

彼女はもしかしたらその秘密基地でとんでもないものを作り上げているのかもしれない。天才がやることとなると、俺の方も妄想が膨らむ。4011教室が「秘密基地教室」

と呼ばれるのは、案外間違っていないのかもしれない。


それはそうと、俺は仮入部で活動する前に、彼女に一つ聞きたいことがあった。

それは、なぜ俺なのか、ということだ。


これはあくまで推測だが、

彼女は宇宙の研究やら調査やら、

何か行き詰まっているところがあるのではないか?

そうするとおそらく彼女は自分よりも頭のいい、

つまり成績のいい俺を頼るはずだ。


でも、もしそうだとしたら丁重にお断りしよう。

なぜなら、俺はあくまで教科書、あるいは模試の対策しかできない。


仮に彼女と研究や調査において足を引っ張らない程度にやろうとすれば、

俺は過労死するよ?

宇宙に関する知識を詰め込み、いろいろ定理や計算法を覚えるということをするのは、とても勉強と両立できる気がしない。

それに、研究に向いてる人なら他にもいっぱいいる、

どうせだったら東京第一高校を訪問することをお勧めしてみよう。

なにせあそこは何かの分野であまりにも飛び抜けた才能を持つ、

いわば「鬼才、奇才」が集まるところだ。

彼女のテーマに合った研究をしている人も一人はいるだろう。


/*放課後 4:20*/


「それでは、本日のSHR(ショートホームルーム)を終了します。

 とりあえず、明日の提出物は忘れないように。

 それでは解散。」


この高校では、中学校ほどではないが、ある程度の長さをとってHRをする。

そっちの方が教師側も管理が楽なんだろうな。

個別管理にしてしまっては、担任の仕事が増えるし効率は悪いしで最悪だ。

本当は個人で管理して欲しいんだろうが、流石にそこまではできないんだろう。


「高槻、楽しんできなよ。 冷泉との 仮 入 部」

古谷は俺に向けて、自分が見た中で最高峰のにやつきをしながら言った。


「おう、頑張ってくる」

「じゃあね」

「じゃあな」


/*4011教室前 4:30*/


さて、教室の前に着いた。

しかし、まあ、暗いな。教室の前までこんな暗いとは。

とりあえず、入ろう。


「失礼しまーす...」


「あ、時間ぴったり!

 はい、どうぞ。」


中はそれなりに明るかった。それと、いろんな実験機器があるのかと思っていたら、

そこには少し乱雑に置かれたA4コピー用紙が机の上にあるだけだった。


「とりあえず、そこにお掛けください。」


「はーい」


「....では、

 ようこそ、宇宙同好会へ!!」


彼女が満面の笑みと、手をめいいっぱい広げていった。

思わず「かわいい」といってしまいそうな様子だったが、どうにこらえて、

適当に返事をした。

この時はまだ、宇宙同好会が壮大な、というより非現実的な目標を

裏で抱えていることを知らなかった。

「天才」と評価され続けた彼女の過去も。


そして、ここから高槻裕也の不思議物語は始まるのである。

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