雨とわたしの 2

外に出ると意外と寒くはなかった。もうすぐ夏が近づいているからか、少しだけ暖かい。


何も考えずに歩いく。気づけば川の橋を渡っていた。そこは結構、橋から川までの高さが高く、気をつけろと言う看板があった。別に暗くはないけれど、下を見ると皮が流れる音しか聞こえなかった。


「死のうかな…。」


不意に言葉が出た。なんでこんなこと言ったんだろう。でも、私たちは意外とまだ未熟でどんな些細なことでもマイナスに考えてしまうことが多い。

ため息をつき、橋の上に座り込む。今日はほんとに嫌な日だった。すると、ポツポツと雨が降ってきた。


「天気も良くないや…。」


そう思ったけど、この雨だけでも好きになろうとと努力した。無理に笑顔を作って空に手を上げる。嬉しいなぁと心の中で呟く。そのとき、はやくはやく降ってくる雨が急にゆっくりなったと感じた。

気のせいかと思い、目をぎゅっと瞑る。でも雨は、ゆっくりと速度を落として雪よりも遅く降りかかってくる。


「なに…?」


それが手に触れた瞬間、

あたたかな何かに包み込まれる感じがした。今日の嫌なこと全部が洗い流されて行くようだった。

意識があまりハッキリせずに、フラフラと立ち上がる。橋の手すりに手をかけて川のそこを見る。

ハッとした瞬間、後ろから勢いよくがれが吹いて、バランスを崩す。


やばい!


すると、水のような塊が私のお腹をぎゅっと支えていた。何が起こっているのか分からない。

ゆっくり橋の上に体が持っていかれる。そこにまた座り込む。

気づけば雨の速度は変わらず、しとしとと私を打ちつづけていた。



それは自分のことを悲しんでくれているような涙の雨だった。



それから私は、ゆっくり立ち上がり、家に帰った。

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