死に寄り添う悪食(4)
全くもって理解不能な救出手段を提示された。
「私の身体、殺した人がまだ……だから連れさって下さい」犯人逮捕に協力じゃダメなのか。警察に犯人の特徴話すとか、やり方は沢山あるだろ。
「犯人と被害者しか知り得ない情報を、警察に話したらどうなるでしょうね」
重要参考人として拘留待ったなし。
「やっぱり連れ出してもらう方向で」目を輝かせてるメイドの女。
イーサン・ハントに頼んで下くれ。
「IMFが動いたらこの町の風景激変しますね……それはそれで」顎に手を当て首を縦に揺らすメイド。
「面白そうだな」今までパクパクしてた金髪が急に喋り出した。
引き受けんなよ、そこで黙って震えていてくれ。
「幽霊も慣れれば大した事はなかったし、助けられる方法がこれしかないなら、やるぞ」
「後面白そう」本心は面白そう、これのみだと確信した。
現実を舐め腐ってるのも間違いない。
犯人の情報もわかってないのに、そこに乗り込んで人一人連れ出す事が、どれ程大変なのかわかってんのか。
「犯人は何人いる」金髪がメイドちゃんに問う。
「1人です」愛嬌ある顔から一変、真剣な表情になっていた。
「朝倉犯人は1人だ、そいつ1人に出来るなら私たちにも出来る」どこから来る自信なんだそして俺にも聞こえてる。
「とりあえず情報が欲しいな」散らかった店の中から紙とペンを探す金髪の姿は、やる気に満ちていた。
過酷な運命が待ち受けている気がしてならない。
聞いた話をまとめると、メイドちゃんの名前は霞流麟(かすばたりん)。
呼び名は麟ちゃんに決まった。高校1年生で、一週間くらい前バイトの帰りに「あなたもっと綺麗になりたくない、メイク教えてあげるわ」と声掛けられ付いて行ってしまった。
「死んだらもっと可愛くなるわ」そう聞こえたのが生きてる間に聞いた最後の言葉だった。
犯人はそいつ一人、毎夜麟ちゃんの亡骸と添い寝してる。そうとう危ないやつだと判明。
その他、事件に関係ない話を楽しそうにする彼女は、死んでる以外どこにでもいる女子高生と同じだった。
あの神社に行った前日に事件にあったのか。その時にはもう幽霊として視てる。
素人が遺体を痛めずに一週間も保管できるのか。
「一週間くらいならドライアイスとエアコンガンガンでなんとかなるかな、それ以上は冷凍庫クラスじゃないと無理だろうな」その知識はどこから、金髪の無駄知識が怖い。
「プロなら徹底した温度管理と処置で、一ヶ月は綺麗なまま維持出来るかな、ミイラならもっといける」だからその知識がすらすら出てくるのが怖いんだよ。
「むかーし調べた」何故勝ち誇った表情なのか。
ん、お前人のスマホで検索しながら喋ってただろ。現在進行形で調べてんじゃねぇか。
バレたか、みたいな顔で渋々返される。
せめて自分のでやれよ。
「だって速度制限が」
ケチくせー。
「そう言うなら五千円返せ」
それならば許す。見なかった事にする。
しかし素人だとしたら、そろそろ処理を検討し始めるか。
時間ないな……ん、ちょっと待った。流されるように救出作戦考え始めたけど、俺はやらないからな。
顔を逸らした一瞬、麟ちゃんは数人殺ッてそうな表情をしていた。
やらなきゃ殺られる。脳に深く刻み込んでくる恐怖とは、古来より危険を避ける為のモノだと、再認識させられた。
やるしかないのか。
犯人が出払っている間に、麟ちゃんの案内で俺一人で潜入、金髪は外の見張り。なんかあったら助けろよ。
麟ちゃんは満足そうなお顔。金髪はつまなそうな顔で了承した。
今日はもう遅いから犯人はもう帰ってるだろう。やるなら明日の昼間だな。
麟ちゃんも一回自分の身体の様子見におかえり。
俺も帰って寝るよ。
「私は準備済ませてここで寝る」やる気過ぎんだろ。
各々明日に備えて解散した。
はずだった、自分の部屋に入って電気を点けた瞬間、慌てた様子の麟ちゃんが目の前に現れた。
元々荒れていた自室はリアクションで更に荒れた。
何事だ。
「私の身体、犯人がどこかに運んでる最中でした、私車に乗せられてて」一度でいいから落ち着きたかった。が
どう処理するかわからない、バラバラにされてしまうかもしれない。そんな事が頭をよぎる。
選んでられないか、今から麟ちゃんを強奪する。案内よろしく。
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