第41話 災いを封印する。その10

「ねえねえ、ペリー。」

「なに? ちいちゃん。」

「私たち! 災いを封印! 少年少女剣客隊! 災い9体を封印成功!」

「おめでとう!」

「ありがとう!」

「さっさと「超!? 文学部!」少女の主人公の名前を決めなければ。」

「おお!」

「ある偉い作家さんは言ったわ。「名前なんて、何でもいいのよ。それらしい名前を付けておけばいい。後は勝手に良いも悪いも周りの人が判断するから。名前を決めるのに時間を使ったり、原稿が止まるのは時間の無駄。」インタビューで言ってたわ。」

「言われてみれば、その通りだわ。」

「ということで、ちいさいから、私の名前は、ちい。」

「黒船来航のペリーからの私の名前。」

「お兄ちゃんは、雷の神の生まれ変わりだから、雷からのライ。」

「私のお父さん、宣教師の種子島の密輸人ザビエル。」

「海ちゃんは、海竜の使い。火ちゃんは、火竜の使い。風ちゃんは、風竜の使いからの名前よ。」

「みんなが、シュナイダー、アルテイシア、アナスタシア、マリア、エリザベス、オスカルとかの良い名前ばかりっていうのもね。」

「ということで、名前なんて、どうでもいいんだわ。考えて損した。」

「文学好子。とりあえず、ブンガクスキコでいいんじゃない。」

「ブンガクスキコか、(仮)としおこう。」

「最悪、モンマナコウコって、逃げ方もあるわよ。」

「並びを変えて、文子でアヤコでいいんじゃない?」

「それ頂き。」

「324円です。」

「金獲るな!?」

「つい。アッハッハッハ。」

「笑って誤魔化すな!」

「下の名前が決まった所で、名字が自由に決めれるようになったわ。」

「伊集院文子。藤堂綾子。鬼龍院文子。」

「私、白塗りするのは嫌よ。」

「天地文子。天空文子。」

「どれもいまいちね。」

「じゃあ、文学者の名字はどう? 夏目文子。与謝野文子。石川文子。」

「う~ん。何かが生まれそうで生まれない。」

「総理の名前は? 板垣文子、安倍文子、小泉文子。」

「アヤコを、ブンコにしたらいいんじゃない? 例えば、角川文子と書いて、カドカワブンコ。」

「角川文庫か!? おもしろそうだ。」

「思い出した! 昔、角川角子という、悪の結社、角川に改造人間にされた女の子の物語を書いたような記憶が!? その時のライダーの名前は何だったかな?」

「角川ライダーとかだったのかな?」

「記憶に無いわ。」

 都合の悪いことは忘れる主義である。

「ということで、主役の名前は、角川文子にしておこう。」

「そうね。「カドカワブンコ!」って呼ばれたら、「その名前で呼ばないで!」とか「私の名前は、ツノカドアヤコです!」って、笑いが取れるわ。」

「それでいいのかな?」

「いいんじゃない。私が許可します。」

「桜先生!? いつの間に!?」

 子供たちが騒いでいると、桜先生が教室にやって来た。

「あんたたちが決めるのが遅いから、私の方からやって来たわよ。」

「すいません。桜先生。」

「でも、どうしてあなたたちは学校にいるの?」

「え?」

「今日は学校は休みよ。」

「ええー!?」

「そうだったのか!? 曜日感覚がなかったわ!?」

「楓は家で朝からゴロゴロと転がっているわよ。」

「ゴロゴロ、ゴロゴロ。」

「楓にはお似合いだわ。」

「道理で静かだと思った。」

「それでは、みなさん、さようなら。」

「桜先生、さようなら。」

 子供たちは寺子屋から帰って行った。


「ということは、今日は邪魔者が出ない!」

「チャンスだ! 創作意欲が湧いてきたぞ!」

「私は、徳川15将軍の一人、第10代将軍、徳川家治だ。」

 そこに、読んでもいないのにご先祖様が現れた。

「呼んでもいないのになぜ出てくる!? ご先祖様!?」

「だって、1話1人の契約だもん。」

「誰だ!? 勝手に契約した奴は!?」

「おまえたちに一つだけ忠告してやろう。名前を角川文子にすると、角川に好かれるか好かれないか、その他は起用するのが不可能になる。だから、文子はいいが、角川の名字は変えた方がいいな。」

「そうだったのか!?」

「なんという的確なアドバイスだ!?」

「ホッホッホ。年の功じゃよ。」

「家々よりも役に立つ!」

「しまった!? 最初からご先祖様を、こうやって起用すればよかった!」

「そうじゃな。この方が攻撃されなくても、気持ちよく成仏できるな。さらばだ。ホッホッホ。」

「ありがとう! ご先祖様!」

「あなたのことは忘れません!」

 家治は健やかな笑顔で成仏していった。

「角川はダメか。講談文子。集英文子。宝島文子。で、考えるのが嫌になって、名字の多い順ランキングの上位から選択していくことになると。」

「名前なんて、ただの人間を識別するためだけのものでしかない。後は気にするか、気にしないかだけ。」

「そうね。人生って、そんなものね。」

「人生に答えは無いってね。」

「ワッハッハー!」

 ちいとペリーは、世の中を理解して、少し大人になった。


「僕は悪役になるしか、生き残る道がないのか? 僕はいじめ子にならなければ、ダメなのか? 他人を殴ったり、他人の物を盗む悪い人間にならなければ、僕に存在価値はないのか?」

 家々は自問自答する。

 つづく。

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