第40話 災いを封印する。その9

「ねえねえ、ペリー。」

「なに? ちいちゃん。」

「私たち! 災いを封印! 少年少女剣客隊! 災い8体を封印成功!」

「おめでとう!」

「ありがとう!」

「そういえば、去年は、蛍光刀を書いたんだな。懐かしい。」

「蛍と楓がデビューしたのね。」

 ノスタルジックな、ちいとペリー。

「待て! 今夜の夕食! 羊の丸焼き!」

「メエメエ!?」

「誰が待つか!? と羊が申しております。」

 楓と実朝は羊を追いかけている。

「楓も1年でたくましくなったものね。」

「ホントだね。アッハハハハ。」

「違う!? そんなことはどうでもいい! 次回作の設定を考えなければ!」

「大丈夫。ある程度は決まっているわよ。」

「そうなの?」

「ホラーは6月からだから、あと回し。この作品も幽霊が出る時点でホラーなんだけどね。」

「そう言われてみれば、そうだな。」

「ということで、この歴史・時代コンと被って開催している異世界コンを先に考えましょう。」

「おお! でも、コンテスト概要に、新時代の異世界を描くってあるんだけど、どうするんだ?」

「それは!?」

「それは!?」

「音痴よ!」

「音痴!? 音痴って、あの歌が下手くそな、音痴のことか!?」

「そうよ。あの音痴よ!」

「冗談は顔だけにしてくれ!?」

「誰の顔が冗談だって?」

「ごめんなさい!? 許してください!?」

 ちいは、ペリーの顔を踏んずけて怒る。

「音痴には、可能性がある。」

「どんな可能性があるというんだ?」

「音痴で敵を撃破!」

「うんうん。」

「音痴で壁を破壊!」

「うんうん。」

「音痴でライブで金儲け!」

「うんうんって、音痴で人が集まるんかい!?」

「音痴だけど、アイドルもでき、興行的に握手会、CD販売、ライブイベントなど、今の声優業界で金の亡者のカテゴリーでお金儲けはできるわ。」

「脚本としては、立派ね。でも、それで異世界を旅できるの?」

「できるわよ。音痴で、スライムから魔王まで倒せるんだから。」

「音痴は世界を救うか? いったい、どんな音痴なんだろう!?」

「それは、もう少し構想を練らないと思いつかないわ。それでも、今作で売り言葉に買い言葉の会話に目覚めたので、粗さではなく。話は進まないけど、スピード感なく、1話1話スローに外堀を埋めていく感じになるんじゃない?」

「例えると、忍者がいたら、忍者なのに、水に溺れるとか、戦士なのに、力が弱いとかっていう会話よね。」

「そうそう。それだけで物語は、結構できちゃうものなのよ。」

「どんな物語だよ!?」

「そんな感じでツッコめるわよね。」

「そういう会話がウケているんだから、仕方がないじゃない。」

「主人公が音痴で世界を救うとなると「私、歌うわ!」「やめて下さい!? 家が壊れる!?」とかの売り言葉に買い言葉の会話になるわ。」

「後は主人公の名前を決めれば完成ね!」

「何が完成ですか?」

「ゲッ!? 桜先生!?」

 子供たちが騒いでいると、桜先生が教室にやって来た。

「まあ、今回は、いつも通りということで許してやろう。」

「ふ~う。助かった。」

「それでは、みなさん、さようなら。」

「桜先生、さようなら。」

 子供たちは寺子屋から帰って行った。


「桜先生に捕まらなかったから、その分、尺が取れたわね。」

「文学部少女の名前を考えなければ。」

「メエメエ!」

 ちいとペリーが帰り道を歩いていると、羊の鳴き声が聞こえてきた。

「今夜の夕ご飯! 獲ったぞ!」

「メエメエ!」

「一苦労でしたよ。」

「実朝も苦労が絶えないな。許嫁を変えたらどうだ?」

「いいえ! 私には楓さんしかいません!」

「羊娘のどこがいいんだ?」

「全部!」

「勝手にしてくれ。」

「ああ、この平凡な日常の会話で何にも進まない。家々、今日のご先祖様を呼んでくれ。」

「はい。気のせいだろうか? 最近、僕の扱いが実朝よりも酷くなっているような? まあ、気のせいだろう。ご先祖様を呼んでこよっと。」

「気のせいじゃない。絶対に。」

「落ちぶれたな。徳川第16代将軍。」

「私とペリーは二人いるから、言葉の攻撃を2連発で撃てる。それに比べて、一人だと1発しか撃てない。若しくは1人で疲れるぐらい、ガーガー叫ばないといけない。」

「同じ人間ではあるが、立場や環境によって、その人の人生は変わるのよ。」

「そうだね。昔っから言うじゃない。友達100人できるかなって。あれは自分の人生の盾になる捨て駒は、多ければ多い方がいいってことよね。」

「そうそう、自分の意見が通りやすくなるし、発言力も大きくなるわ。」

「それを寺子屋で学んだ奴は、大人になったら悪党になるし、学ばない奴は・・・ジンギスカン鍋を作っているし。はあ~。」

「今夜は、みんなでジンギスカン!」

「メエメエ!?」

「まだ羊は生きてます。楓ちゃんは下ごしらえで、野菜を切っています。」

「なんなんだ。この気持ちわるさは。」

「あ、ご先祖様が来たみたいよ。」

 そこにご先祖様がやって来た。

「私は、徳川15将軍の一人、第9代将軍、徳川家重である。」

「死んでください。」

「え?」

「口寄せの術! 竜の使い! 海ちゃん! 火ちゃん! 風ちゃん!」

「だから、いきなり呼ぶなって言ってるだろ!? 食事中だったらどうするんだ!?」

「青春一直線! 夕日に向かって叫びたい! 太陽のバカ野郎ー!」

「わ~い。二話続けて登場で来た。私は幸せです。」

「なんか微妙な子たちね。」

「合わせ技でご主人様を倒して頂戴!」

「海竜破!」

「火竜破!」

「風竜破!」

「3つ合わせて、海火風竜破!」

「ギャアアアア!? 家々よ!? 我が末裔よ!? 徳川の再興はどうなっている!? おまえの存在感が薄くなればなるほど、我ら徳川の再興が難しくなるぞ!? おまえに残された道は、おまえ自身が本当の災いのポジションを獲得するのだ!? さらばだ!? ギャアアアア!?」

「ご先祖様!?」

 ご先祖様の家重は、3つの竜の有り得ない合体技で消滅した。

「すごい! 破壊力が桁違い!」

「早く4体目の竜の使いも探しましょうよ。」

「ジン! ジン! ジンギスカン! ウラララー!」

「メエメエ!」

「そろそろ祝勝会が行われますが、羊さんは、まだ生きています。以上、現場から実朝がお伝えしました。」

「僕自身が本当の災いになる!? いったいどういうことだ!?」

 ただ一人、家々だけは心に闇が広がり始めていた。

 つづく。

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