第37話 災いを封印する。その6

「ねえねえ、ペリー。」

「なに? ちいちゃん。」

「私たち! 災いを封印! 少年少女剣客隊! 災い5体を封印成功!」

「封印しているのか、成仏させているのか、微妙な状況ですけどね。アハッ。」

「今日のお肉はなんだろう? キャッハッハ!」

「そんなもん無いわよ。」

「ガーン!? ペリーの意地悪。」

「人をいじめっ子みたいに言うな!」

「平和ね~。」

「どこが平和だ!?」

「だって、特にすることが無いんですもの。」

「チャンス! いつも出番が回ってこない私をアピールするチャンスだ!」

「チャンス! ここで僕のおもしろさをアピールすれば、徳川再興のチャンスだ!」

 実朝と家々は、自身の影の薄さを打ち消す千載一遇のチャンスに遭遇する。

「ということで、桜先生に来てもらいました。」

「どうも。桜です。アハッ。」

「ドテ―!?」

「ズコー!?」

 桜先生の登場により、実朝と家々に陽の光が当たることは無かった。

「どうせ私は、もやしっ子。ガーン。」

「どうせ僕も、もやしっ子。ガーン。」

「あそこでいじけているのがいるけどいいの?」

「気にしないで下さい。いつものことです。」

「所詮他人なんて、どうでもいい存在です。」

「じゃあ、先生も気にしない。」

「ゲホッ!? それでも教師か!?」

「グワッ!? 生徒を見殺しにするだと!?」

 実朝と家々はとどめをさされた。

「テーマがない? そんなものは簡単よ。テーマが無ければ、テーマを作ればいいのよ。」

「おお! さすが桜先生!」

「意外に説得力のあるお言葉だ!」

「桜お姉ちゃん、カッコイイ!」

「ありがとう! 伊達に先生はやっていません!」

 不思議と桜先生には、自分は教師という自負はある。

「メインストーリーを進めるのはどう?」

「この物語にストーリーなんてあったっけ!?」

「楓が日本中の食べ物を食べ尽くして、日本を食料不足に飢えさせるという、歴史モノらしく餓鬼が現れる羅生門的なヤツ。」

「うちの妹は化け物か?」

「楓、化け物でもいいよ。いっぱいご飯が食べられるなら。」

「だ、そうです。」

「妹の育て方を間違えたのかもしれない。」

「完全に間違っています!」

「今更、気づいたのか、化け物姉妹め!」

「ちい! ペリー! あなたたちは、宿題を5倍にします!」

「なに!? 卑怯な!?」

「職権乱用! 職権乱用!」

「うるさい! あなたたちも、ああ、なりたいの!」

「ゲッ!? 体が溶けている!?」

「スライムだ!? もはや人ではなくなっている!?」

 桜先生は、溶け込んでスライム状態でいる実朝と家々を指さす。

「桜先生に忠誠を誓います!」

「桜先生! 万歳! 万歳! 万々歳!」

「それでよろしい。本来、生徒は先生の忠実な僕なんだから、ウフっ。」

「クソ!? 生き残らなければ! ここで死んでなるものか!」

「屈辱に耐えて、耐えて、耐え抜いて、絶対にスライムなんかにはならないぞ!」

「おまえたち、心の声が、口から声になって出ているぞ。死にたいらしいな。」

「違います!? 口が私の意志とは勝手に言葉をしゃべるんです!?」

「この口め!? この口め!?」

「なんなら口にチャックを縫い合わせてやろうか?」

「遠慮します。ニコッ。」

「私も無事に卒業したいです。アハッ。」

「意地もプライドもないんだな。」

「ない! そんなもの捨てたわ!」

「プライドなんかのために、スライムになってたまるか!」

 ちいとペリーは、人生は戦いであると言っている。

「ねえねえ、桜お姉ちゃん。」

「なに? 楓。」

「そろそろ家々くんの災いのご先祖様を封印しないと、今日という一日が終わらないよ?」

「ナイス! 楓!」

「それでこそ、我が友だ!」

「そうね。夕飯の買い出しにも行かないといけないし、そろそろ閉めに入るろうか。」

 こうして、ちいとペリーは桜先生という災いから解放された。

「家々くん、ご先祖様を呼んできて。」

「は~い。」

「スライムのまま行きやがった!?」

「あれを見たご先祖様は、どう思うんだろう!?」

 そしてご先祖様がやって来た。

「私は、徳川15将軍の一人、第6代将軍、徳川家宣だ。」

「蛍さんたち! よろしく!」

「は~い!」

「楓の蛍ビーム!」

「そんなもの災いの私には効かないのだ! ワッハッハー!」

 楓の蛍ビームは、幽霊の家宣の体を透り抜けた。

「どうしよう? 桜お姉ちゃん!?」

「私に任せなさい。新必殺技! 幽霊の手!」

 桜先生の手が巨大化する。

「うわああああ~!? 家々! 本当の災いは私たち、徳川15将軍ではないぞ!」

「なんですと!? それはどういうことですか!? ご先祖様!?」

 桜先生の大きな手が家宣を握る。

「災いくん! さようなら!」

「ウギャアアアアー!?」

 桜先生の巨大な幽霊の手が、家宣を握りつぶした。

「さあ、災いも倒したし、みなさん、さようなら。」

「桜先生、さようなら。」

 こうして無事に一日が終わった。

「ご先祖様のいう、本当の災いとは何だ!?」

 ただ家々だけは、ご先祖様の言い残した言葉が気になるのだった。

 つづく。

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