第14話 実は強かった
「ねえねえ、私たちって強かったんだな。」
「そうね。元々は、私たちが事件に遭遇して逃げ出して、大人が助けに来てくれるって予定だったのよね。」
「そうだよ。そして手柄は少年少女剣客隊のもの。」
「なんていいストーリーだ。」
「それなのに、まったくストーリーが進まない。なぜなら、サブキャラクターの深堀や、私たちが実は強かったり新しいことをぶち込んでいるのが原因でござる。」
「ちいは、海の使いを呼ぶことができたんだ。ということは、私には9人以上の竜の使いを呼ぶことができるということね。」
「私は、なぜか腰に拳銃を所持する設定になっちゃった。これって、銃刀法違反よね? 未成年だから逮捕されないのかしら? まあ、いいっか。」
「楓なんか、手から蛍を飛ばして、光の目隠しどころか、高温の蛍の光線で、相手を焼いて引き裂くんだよ。キャハッハッハ!」
「なんと頼もしい3人だ。それに引き換え、家々は。」
「おまえに言われたくないわい!? この新参者が!?」
「転校生をいじめるんじゃない! さっさと席に着いて。」
子供たちが騒いでいると、桜先生がやって来た。
「いいですか。転校生や亀とかを、いじめちゃダメですよ。」
「それって、転校生は亀と同じって言っているような・・・。」
「それでは、さようなら。」
「桜先生、さようなら。」
こうして子供たちは寺子屋から去って行った。
「酷いわね。まるで私たちが転校生いじめをしているみたいじゃない。」
「そうよ。楓の友達なんだから、私たちが転校してきたばかりで、友達がいなくて孤立している転校生をパシリにしようだなんて、考えないわよ。」
「実朝くんは楓が守るからね。安心していいよ。」
「ありがとう。楓ちゃん。我が妻よ!」
「ん? んん!? ちょっと待て!? 江戸幕府が討幕され、徳川家が滅びた時に、僕は寺子屋に転校してきたが、その時から、おまえたち3人にいじめられているのではないだろうか?」
「そんなことは無いわよ。疑うなら、殺す。」
「友達を疑うの? いいわよ。大砲をぶち込む。」
「そんなことを言っちゃうと、仲間外れになっちゃうよ。お腹が空いた時に食べ物をくれる友達がいなくなっちゃうよ。」
「みんな、家々。君のために言ってくれているんだぞ! 仲間に謝るんだ!」
「ごめんなさい。僕が悪かったです。どうか、友達でいて下さい。」
一人暮らしで頼れる人のいない家々は、洗脳しやすかった。
「あ、亀だ。」
「みんなでつついて遊ぼう。」
「実朝くんもやろうよ。」
「家々、おまえも来いよ。拙者たちは友達だろ?」
「友達!? やるでござる! 亀をひっくり返して遊ぶ友達でござる!」
ツンツクツンと子供たちに遊ばれている亀は、人の姿をした霊体の時は、藤原玄茂。亀の時は、玄武と言われていた。
「見たんだ!? 私は本当に見たんだ!?」
立ち入り禁止の江戸城では、封印から解き放たれた家々の先祖の徳川15代将軍の話し合いが行われていた。
「しかし、綱吉の話を聞いたからといって、それを信じてもいいものか、どうか?」
「う、嘘じゃない!? 本当だ!? 女の子の祈祷師が、女の怨霊を呼び出して、その怨霊が水の竜を吐き出したんだ!?」
「その子供は妖怪か何かじゃないのか!? 人間の子供に、そんなことができるものか!?」
「そ、それだけじゃない!? 外国の女の子もいて、いきなり種子島をぶっ放したんだ!?」
「そんなことあるか? 太閤様が刀狩りをして、農民は刀や銃は持てないはずだ。」
「そうだ、そうだ。鎖国もしているし、外人が簡単に街の中を動き回れるはずがない。」
「本当だ!? 私は見たんだ!? 他にも、手から光線を出す女の子もいたんだ!? 本当だ!? 信じてくれ!? 私は嘘をついていない!? 全て本当のことなんだ!?」
「手から光線って、宇宙人ではないんだからな。」
「その通り。その話は、さすがに無理があるな。」
「疑うのか!? それなら江戸城を出て、江戸の街並みを見て来い!? 何もかも違うんだ!? 何もかも!? 我々の生きていた頃の江戸とは全く違うんだ!?」
綱吉の言葉は、他の徳川の将軍たちは半信半疑だった。
「家々、家々。」
その夜、徳川第6代将軍の徳川家宣が家々の枕元に現れた。
「何事もないではないか? 綱吉め! 人騒がせな!」
家々は眠っているので、ご先祖様が夜中に来ていることは知らない。
つづく。
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