第13話 子供の悩み

「はあ・・・小さい頃から人殺しばかりしていたお兄ちゃんが、まさか警察に就職していたとは。」

「それでも、お兄さんにはお似合いの仕事なんじゃない。合わない仕事だと、直ぐに辞めちゃうし。」

「でも、蛍ちゃんが第2小隊で、ちいのお兄さんは第1小隊。どうして同じ小隊の仲間にしなかったんだろうね?」

「女子には分かるまい。同じ小隊で助け合うよりも、ライバルとして手柄を競い合う方が盛り上がることを。」

「家々! おまえは女だろうが!」

「そうよ! 家々、あなたは女よ!」

「女のくせに男を語るな!」

「そうか!? 僕は女だったんだ!? ということは、女風呂や女子トイレにも入り放題!?」

「アホー! あなたは男です! みんな、席に着いて。」

 家々が女子たちにからかわれていると、桜先生がやって来た。

「今日は転校生を紹介します。源実朝くんです。」

「実朝くん!」

「おおー! 楓! 久しぶりだな!」

「あの感動の再会は後でいいから、転校生の挨拶をしてくれないかな?」

「すいません。」

 こうして源頼朝の次男、実朝が楓たちの通う寺子屋に通うことになった。

「これは由々しき事態だ!? 今までは僕の花嫁候補が3人いたが、楓が実朝とラブラブであるなら、僕はちいか、ペリーのどちらかを選ばなければいけない!?」

「殺す! なんであんたなんかと結婚しないといけないのよ!」

「私は日本のお金持ちと結婚するのよ! あんたなんか大砲で太平洋に沈めてやる!」

「実朝くん、私たち平和で良かったね。」

「本当にこいつらは可憐な楓の友達か? 桜お姉さんも、お元気そうで何よりです。」

「これはご丁寧にどうも。」

「なんだか僕の扱いだけが適当ではないか!?」

 これが滅びた徳川家の人間の運命であった。がんばれ! 家々! 負けるな! 家々!

「それでは、さようなら。」

「桜先生、さようなら。」

 こうして子供たちは学校から帰って行く。


「フッフッフ。いつまでも徳川家が夜な夜な家々の枕元に登場するだけの邪霊と思ったら大間違いだぞ。霊体になり実体化すれば、外見は人間として、犬の散歩もできるのだ! ワッハッハー!」

「ワンワン。」

 徳川第5代将軍、徳川綱吉は、犬が大好きな男であった。

「ムムムッ!? あれは家々ではないか!? あれは何かの妖怪に襲われているのか!? 見せてやれ、家々。徳川家の実力を!」

 寺子屋から下校途中の家々たちと出会う。子供たちの前に一匹の妖怪が立ち塞がっていた。

「私の名前は興世王。おまえたちを食べてやる!」

「人間が妖怪に変身した!?」

「大きな口の化け物だ!?」

 興世王は、妖怪の大口に変身した。

「丸飲みにしてくれる! お嫁にいけない体にしてやる!」

「気持ち悪い!? そうは、させるか! みんな! 家々を大口の口に放り込むわよ!」

「おお!」

「やめろ!? 離せ!? それでも友達か!?」

「友のために死ね!」

「ギャアアア!? 食われてなるものか!?」

 家々は、大口の上と下の歯につっかえ棒の様になり、大口の口が閉じるのを塞いだ。

「いでよ! 海竜の使い! 海ちゃん!」

「やったー! 初登場! ていうか、私の出番が遅いんですけど!? どういうこと!? ライ! どこいった!?」

「あの、海ちゃん。あいつを何とかしてよ。」

「あ、ちいちゃん。任せて! 海竜破!」

 ちいは、竜の使いを呼び寄せることができる。海竜様の使いの海ちゃんが海の竜を大口に放つ。

「あの少女は祈祷師か!? 女子を呼び寄せた!?」

 綱吉は、ちいを祈祷師と勘違いする。

「大砲は持ってきてないけど、護身用の拳銃は持ってるんだな。撃つべし! 撃つべし! 体に風穴を開けてやる!」

 ズドーン! ズドーン! とペリーの拳銃が火を噴き弾丸が大口に飛んでいく。

「なんと!? 異国情緒な!? あんな種子島は見たことが無い!? 火縄銃はどこへいった!? 鎖国はどうなったのだ!?」

 綱吉の死んでいる間に開国したのであった。

「楓の特大おにぎり! は、もったいないので、楓の蛍ビーム!」

「ギャアアア!?」

 食い意地の張った楓が、貴重な食料を大口に食わせる訳がなかった。無事に大口を倒した。

「手から光線が!? いったい私の死んでいる間に、我が日本国は、どうなってしまったのだ!?」

 綱吉は、見てはいけないものを見てしまったのだった。

 つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る