第12話 両雄、対峙する

「ねえねえ、私たち、まだ子供だし、化粧をするのは早いわよね。」

「そんなことないわよ。美は一日にしてならずよ。」

「家々の顔が面白い。キャッハッハ。」

「化粧屋の白粉パックというのをやってみたら、顔中が白い斑点だらけになってしまったでござる!?」

「呪われてる。近づいたら殺すわよ。」

「伝染病ね!? 大砲でぶっ飛ばそう。」

「白粉より白玉が食べたいよ。お腹空いた。」

「疫病かもしれない!? もうすぐ僕は死ぬんだ!? きっとそうに違いない!? だから、もう少し僕に優しくして。」

「優しくしてほしければ、席に着きなさい。」

 子供たちが教室で騒いでいると桜先生がやって来た。

「良い子の生徒のみなさん、最近、二刀流の人斬りが出るそうです。気をつけてかってくださいね。さようなら。」

「桜先生、さようなら。」

 少し情報を告知するようになった桜先生。


「人斬りか? 相変わらず物騒な世の中ね。」

「私たち、少年少女剣客隊で二刀流の人斬りを退治しない?」

「いいね。捕まえて警察に突き出して、お小遣いをもらって、駄菓子屋さんで、お腹一杯おやつを買い占めるんだ。」

「そんなに食べたら虫歯になるぞ。」

「あ、魚屋さんだ。」

 その時、子供たちの前に魚屋が現れた。

「へい、何にしましょうか?」

「この金目を裁いてもらおうか?」

「分かりました。でやあああー! 必殺二枚斬り!」

 魚屋は刀を二本取り出し、鮮やかに手際よく金目を二枚に捌く。

「わ~い! すごい!」

「これが日本の技術ね!」

「美味しそう!」

「僕だって、それぐらいできるわい!?」

 ちいたちも魚屋の腕前に大喜びである。

「いいね。あんたの名前は?」

「平将為。ただの魚屋です。」

「良かったら、うちの定食屋で働かないかい? 腕のいい職人を探していたんだ。私はろくろ首。人は私のことを女将さんと呼ぶ。」

 ろくろ首の女将さんは腕のいい魚屋がいると聞いて、自分の定食屋で働いてもらおうとスカウトにやってきた。

「それは困る。」

「あ、お兄ちゃん。」

「ちい、下がっていろ。」

 ちいの兄のライが現れた。

「こいつは、今世間を騒がしている人斬りだ。」

「ええー!?」

「俺は特別命霊警察の者です。」

「特命か。」

「おまえを辻斬りの容疑で逮捕する。」

「ダメだよ! この男は、私が先にスカウトしたんだからね。警察が相手でも譲れないね。」

 特命警察と定食屋の女将と魚屋が退治している。

「あ、蛍ちゃん。」

「楓、下がっていろ。」

 楓の義理の兄の蛍が現れた。

「民間人は近づくな。これは警察と妖怪と魚屋の問題だ。」

「民間人ではないと言ったら?」

「なに?」

 蛍は妖刀、蛍光刀を抜く。刀から青い妖しい光が放出されていた。

「その刀は!? まさか!?」

「妖刀!?」

「どうなっているんだ!? 今日は客の多い日だ!?」

「俺は特命警察、第2小隊所属、蛍。人斬りの身柄は、こちらで引き取ろう。」

「蛍ちゃんって、警察の人だったの!?」

「今日なった。歩いていたら、源頼朝に出会ってしまってね。「蛍、うちの次男と楓は友達だ。」って、言われちゃってね。強力することになったんだ。」

「実朝くんのことだ。」

「楓の寺子屋に転校してくるそうだ。」

「やったー! また実朝くんと遊べる!」

 楓と源頼朝の次男、実朝はおままごとをして遊んだ中である。

「こいつ!? できる!? 人間じゃないな!?」

「なんだ!? 人間のくせに、人間でないものを感じる!?」 

「私のことは無視か!? 私が人斬りだぞ!?」

 神の生まれ変わりのライと、蛍の集合体の蛍が対峙する。人斬りの平将為は、相手にされない。

「やめて! お兄ちゃん! 楓ちゃんのお兄さんよ!」

「ちい。」

「お腹空いた! 蛍ちゃん!」 

「楓。」

 ちいと楓が、ライと蛍が戦うことを止めに入る。

「ということで、魚屋さんは私がもらっていくよ。」

「ギャアアア!? 助けて!?」

 ろくろ首の女将さんが平将為を奪って走り去った。こうして定食屋は腕のいい人斬りの職人を手に入れた。血塗られた刺身定食が美味しいと評判になった。


「家々、家々。」

 その夜、家々の枕元に第4代徳川将軍の家綱が現れた。

「人斬りが作る刺身定食・・・美味しいから許す・・・zzz。」

 寝言を言う家々を気持ち悪く思う先祖の家綱であった。

 つづく。

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