第11話 美しさは、正義

「ねえねえ、この平和な時代に誰が鉄砲なんて撃っているのかしら?」

「物好きもいたものです。」

「実は、ペリーのお父さんだったりして。」

「鉄砲! これも僕のご先祖様たちが僕たちを守ってくれているのだ! ありがとうございます! ご先祖様! ワッハッハー!」

「ご先祖様って、そんな都合のいい者なのかしら?」

「それより、街に白粉屋さんができたんですって、行ってみない?」

「いくいく! お汁粉、大好き!」

「白粉は化粧であって、食べ物ではない。まったく楓には困ったものだ。」

「困ったのは、おまえだ。早く席につけ。」

 子供たちが騒いでいると桜先生が教室にやって来た。

「そして、さようなら。」

「桜先生、さようなら。」

 こうして子供たちは寺子屋を後にした。


「おかしいわね?」

「どうしたの?」

「いつもの桜先生なら、「私は顧問だ!」とかいって、化粧品についてきそうよね?」

「だって、桜先生は並んでるよ。」

「エエー!?」

「恐るべし!? 桜先生!?」

 ちいたちが化粧屋にたどり着くと、桜先生が幽霊友達の癒し女のおみっちゃんと先に来て、楽しそうに行列に並んでいた。

「あなたたち、ちゃんと列の最後尾に並びなさいよ! 割り込みは教師の私が許しません!」

「桜お姉ちゃんのケチッ。」

「あら? 楓ちゃんね。私は、おみっちゃん。桜から色々と話は聞いてるわよ。」

「例えば、どんな?」

「そうね。お漏らしをして布団に宝地図を描いたとか。」

「お姉ちゃん!?」

「あははは。ごめん、ごめん。」

 と騒いでいる間に桜先生とおみっちゃんは化粧屋の中に入る。

「長いわね。」

「もうすぐ私たちの番だわ。」

「お腹空いた。」

「本当に長いな。」

「どうして家々がいるのよ!?」

「あなた、男でしょ!?」

「これからは男も化粧する時代がやってくるのだ。ワッハッハー!」

「あ、私たちの番だわ。」

「入りましょう。中でお団子が出るかもしれないわよ。」

「やったー! お団子!」

「待ってくれ!? 僕を置いていかないで!?」

 家々たちは化粧屋の中に入る。


「女の価値は見た目で決まるのよ! つまらない化粧をしていると、つまらない人生になるわよ! みんな美しものが好き! 不細工は、罪よ!」

「きれいなお姉さん!? おお!? 何という説得力!?」

「私! この人についていくわ!」

「お団子はどこですか?」

「男に生まれたのが悔しい! 女に生まれたかった! 無念だ!」

 化粧屋の女主、平将文。

「さあ、それではあなたたちもきれいになりましょうね。」

 と言いつつ、化粧をしながら子供たちの霊力を奪おうとする。

「そこまでだ!」

 そこに、ちいの兄のライが現れる。

「あ、お兄ちゃん。」

「あ、お兄ちゃんじゃない。ちい、知らない叔母さんについていったらダメって言ってるじゃないか。」

「桜先生も一緒だよ。」

「桜先生は、霊気を吸われて、しわくちゃになって路地に捨てられていたよ。」

 無残にも、桜先生とおみっちゃんは霊力を吸われて、しわくちゃババアになっていた。

「おまえは、いったい何者だ?」

「特別命霊警察、略して特命のライ。」

「特命? そんなもの聞いたことも無い。」

「聞く必要はない。ここでおまえは逮捕されるんだからな! 竜雷破!」

「ギャア!?」

 ライは必殺の一撃を刀で放ち、平将文を攻撃する。

「私は白粉を分厚く塗ることによって、相手の攻撃を防ぐことができるさ。さすがにヒビが入ってしまったみたいだけど。」

「顔の下に、きれいな顔がある!?」

「覚えていろ! また私は必ず現れるからな! 今日の所は勘弁してやる! さらばだ!」

 平将文は逃亡した。化粧屋も店じまいした。しわくちゃババアになった女性たちも救出されたのだった。


「家々、家々。」

 その夜、家々の枕元に第三代将軍の徳川家光の邪霊が現れた。

「zzz。」

「ギャアアア!? お化け!?」

 白粉パックを顔に貼って寝ていた家々の顔は化け物だった。

 つづく。

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