第15話 目安箱

「ねえねえ、そろそろ少年少女剣客隊としての正式な活動がしたいわよね。」

「え!? もうしてるんじゃなかったの!?」

「顧問は、楓のお姉ちゃんだし。」

「なら、目安箱でも設置したらどうだ?」

「おお!? 我が徳川のご先祖様が設置したという、庶民の恨みと怨念を呼び寄せるという伝説の目安箱!?」

「何か趣旨がズレているような。」

「いいんじゃない。私も活躍しないと腕がなまるし。」

「お腹空いた。今日のご飯代を稼がねば。」

「分かるぞ。楓の兄上も警察の安月給だからな。」

「みんな苦労しているんだな。世が世なら僕は徳川16代将軍になっていたのに。そうすれば、みんなに金銀の小判をバラまいてあげられたのに!」

「バラまけるものなら、バラまいてもらおうじゃないか? はい、席に着いて。」

 子供たちが騒いでいると桜先生がやって来た。

「目安箱は、誰でも入れれるように寺子屋の入り口の道に置いておきましょう。それでは、さようなら。」

「桜先生、さようなら。」

 目安箱を設置して、子供たちは寺子屋を後にした。


 次の日、子供たちが目安箱の中を確認する。たくさんの投書があった。

「なになに? 最近、妹が「殺す!」と言って、言葉使いが悪いです。何とかして下さい。」

「却下。」

「えっと、最近、娘が教会の倉庫から拳銃を持ち出して遊んでいます。何とかして下さい。」

「却下。」

「お腹空いた。最近、義理の妹に変な男ができました。何とかして下さい。」

「却下。」

「こんなのもある。最近、息子を寺子屋に行かせました。下民の娘にストーカーされてます。何とかして下さい。」

「却下。」

「達筆だな。最近、江戸の街が変わってしまって怖いです。竜が暴れたり、銃声が鳴り響いたり、手から光線を出したり、昔の平和な徳川の江戸時代が良いです。何とかして下さい。」

「却下。」

「ちょっと待ちなさい。変よ。」

「そうです。まるで誰か一人が書いたような、いたずらだわ。」

「しかも私たちのことばかり書かれている。」

「見損なったぞ。家々。」

「え? 僕は何も書いていないぞ!? 僕は無実だ!? うぎゃあ!? 助けて!? ご先祖様!?」

 子供たちに親や家族の悩み事など理解できない。唯一、自分に対して良い事が書かれていた家々が犯人扱いされたのだった。

「どうしてこうなるの!? バタ。」

 家々に降り注ぐ悪意。恐るべし目安箱。

「家々様!? 大丈夫ですか!?」

「若!? お気を確かに!?」

 黒子達は常に家々の周辺にいる。

「あれ? もう一枚あるわ?」

「最近、お墓に魂を食べる妖怪が現れて困っています。少年少女剣客隊の皆さんで倒してくれませんか?」

「採用! 少年少女剣客隊! 出動!」

「おお!」

「あれ? 家々は?」

「保健室に黒子達が運んで行ったぞ。」

「黒子達も大変ね。」

 ちいたちには黒子の姿は見えている。しかし、見えていないように接するのも優しさである。


「魂は美味しいな。」

 お墓には、多治経明という魂を食べる妖怪がいた。

「そこまでだ! 魂を食べるのをやめなさい!」

「誰だ!? おまえたちは!?」

「私たちは、少年少女剣客隊!」

「少年少女剣客隊!?」

「決まった。決めポーズも決まった。」

「わ~い! 正義の味方って感じ。」

 子供たちは戦場でも、細かいことを気にする子供だった。

「おまえたちの魂も食べてやる!」

「そうはいくか! いでよ! 火竜の使い! 火ちゃん!」

「あら? ちいちゃん久しぶり。」

「火ちゃん。挨拶は後でいいから、あいつを焼いてください。」

「任せろ! 青春一直線! 火竜破!」

 ちいの呼び出した火ちゃんが、火の竜を呼び出し、妖怪に飛んで行く。

「今日の私は二丁拳銃! 銃弾をぶっ放しまくるわよ!」

 バンバンバンとペリーがピストルを両手に持ち、銃弾を乱れ打ちする。

「蛍さんたち、楓の生命エネルギーをあげるよ。」

 楓は、手から蛍の光線を出し妖怪を攻撃する。

「ギャアアア!?」

 子供たちの攻撃で魂食いという妖怪を倒した。


「家々、家々。」

 その夜、家々の枕元に徳川第7代将軍の家継がやって来た。

「良く寝る子は育つ。ワッハッハー!」

 家々は、熟睡して眠っていた。

 つづく。

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