第9話 顧問

「ねえねえ、そういえば江戸城に行った時、何かの石碑をみんなで蹴り倒したわよね?」

「そうそう。みんなで蹴り倒せば怖くないわよ。」

「実は徳川家の先祖たちが祀られている石碑だったりして?」

「構わない! これも少年少女剣客隊を盛り上げるためだ! 第十六代将軍の僕が言うのだから、きっとご先祖さまも許してくれるのだ! ワッハッハー!」

「家々! おまえが笑うな! 殺す!」

「調子に乗っていると、大砲をぶち込むわよ!」

「お腹空いた。」

「静かに! みんな席について!」

 子供たちが騒いでいると桜先生が教室にやって来た。

「そして、さようなら。」

「桜先生、さようなら。」

 子供たちは学校から去って行く。


「少年少女剣客隊! どんな難事件でも解決します! お小遣い求む!」

 ちいたちは、放課後に少年少女剣客隊の活動をすることにした。

「どう? いい看板でしょ?」

「住所も学校の教室だし、信頼はバッチリ。」

「お腹が空いても、給食室で盗み食いができます。」

「まさに徳川第十六代将軍に相応しい仕事だ。」

「これも貧しい家々が生きていくためにお金を稼ぐためよ。」

「そうそう、孤児の家々を助けなくっちゃ。」

「同じ寺子屋のクラスメイトだもんの。」

「ありがとう。みんな。僕はみんなのことを誤解していたよ。ありがとう。本当にありがとう。うるうる。」

 本当は何か楽しいことがしたいだけの、ちいたちであった。

「あなたたち!」

 そこに桜先生が現れた。

「ゲッ!? 桜先生!?」

「バレた!?」

「怒られる!?」

「家々を差し出しますから、お許しください!」

「裏切ったな!? お主たち!?」

 桜先生にバレて、我が身が可愛い、ちいたちは家々の身柄を差し出す。

「教室の使用許可申請書を出しなさい!」

「あ、そういうこと。」

「少年少女剣客隊? あなたたち部活動をするの?」

「はい。これも貧乏な家々のためです。」

「そう。友達思いなのね。」

「それ程でも。」

「でもね。部活動をするなら顧問が必要よ。」

「顧問?」

「監督する先生のことね。」

「私が少年少女剣客隊の顧問になってあげましょう。これで少年少女剣客隊は正式な部活動として認められるわ。」

「わ~い! やったー!」

「桜先生ありがとう!」

 こうして少年少女剣客隊は正式に発足した。

「すいません。ここは少年少女剣客隊でしょうか?」

 そこに一人の男が現れる。

「はい、そうです。」

「ようこそ。お客様が少年少女剣客隊のお客様第一号です。」

「事件ですか? それとも食い逃げですか?」

「なんでも僕たちが解決するでござる。」

「食べたい。」

「え?」

「おまえたちの霊力を食べたい!」

「キャアアア!?」

 現れた男は、全身を邪霊に憑りつかれていた。禍々しい存在であった。

「じゃ、じゃ、邪霊!?」

「初めて見ました! ワンダフル!」

「蛍ちゃんを呼んでこなくっちゃ。」

「僕なんか食べても不味いぞ!? どうせなら女子を食った方が美味しいぞ!?」

「霊力を寄こせ! 俺は甦ったばかりで霊力が足らないのだ! ガオー!」

 逃げ惑う子供たち。迫りくる邪霊。

「フッフッフ。子供たちは顧問の私が守る!」

「たかが女に何ができる?」

 桜先生が邪霊に立ち塞がる。

「いでよ! 妖怪! 幽霊! 魑魅魍魎!」

「なんだと!? おまえ!? 人間ではないな!?」

「そう私は、幽霊! でも人間の姿をしている霊体だ! そして、得意技は、妖の召喚だ!」

「おまえは!? 平将武!? 確かに倒したはず!? なぜおまえがここにいる!?」

 呼び出したのは、桜の亭主の蛍であった。蛍は、蛍の集合体の妖怪である。

「知るか。安らかに眠っていたら、最近、禍々しい妖気に誘われて目が覚めたのだ。」

「光れ! 蛍光灯! 夏の世の光!」

「ギャアアア!?」

 蛍は必殺の一撃で、邪霊、平将武を切り裂いた。

「すごい! 蛍さん!」

「楓のお父さんは光ってます!」

「蛍ちゃん、お腹空いた。」

「みんなが無事で良かった。」

「さすが私の旦那様!」

 なぜ邪霊が現れたのか、謎だけが残った。


「家々。家々。」

 その夜。解き放たれた徳川家康の邪霊が家々の枕元に来た。

「zzz。」

 しかし、熟睡している家々は目覚めなかった。

 つづく。

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