第7話 特命警察

「ねえねえ、唐傘のお化けって、退治されたらしいよ。」

「私たちの逃げ足の速さに心が折れたんじゃない?」

「ということは唐傘お化けは私たちが倒したということ。」

「その通り! 少年少女剣客隊の勝利だ! ワッハッハー!」

「今度は、のっぺらぼうが出たんだって。お兄ちゃんが言ってたよ。」

「じゃあ、今夜はのっぺらぼうを狩りに行きましょうよ。」

「適度な運動はご飯が美味しくなるよ。」

「決まった! 少年少女剣客隊! 出動だ! カッカッカ!」

「うるさい! 早く席につきなさい!」

 桜先生が教室にやって来た。桜先生が教室に入って来るときは、騒がしい家々を出席簿で殴ろう。

「そして、さようなら。」

「桜先生。さようなら。」

 子供たちは学校から去って行く。お約束の展開である。


「バカモン! 最近の妖怪の事件はなんだ!? 日本国民から警察がたるんでいるって言われるだろうが!?」

「部長、そんなことを言われても、我々は普通の人間なので、妖怪退治はできません。」

「そんなことは分かっておる!? そのために特命警察を作ったんだからな。あいつらに働いてもらわねば!?」

 警察では、このところの妖怪の大量出現に対応するための対策会議が行われていた。


「ライ、出番だぞ。」

「承知。」

「なぜ妖怪が頻繁に現れるようになったのか分からない間は、出てきた者から倒すしかない。」

 特命警察こと、特別命霊警察。謎の組織に、ちいの兄のライは特命警察の第一小隊に所属している。最近の妖怪の活動が活発になっているのは、家々たちが江戸城に潜入し、由緒正しき徳川家のご先祖様を祀っている石碑を蹴り倒したのが原因である。

「将頼は、どうして特命警察に入ったんですか?」

「妖怪とはいえ、食べていくためには何か仕事をしてお金を稼がないといけない。そんな時、特命警察の隊長に新皇様が就任したと聞いたので参加したまでだ。」

 平将頼。新皇こと平将門の八将の一人で、昔は下野守をしていた。もちろん霊体である。

「そういう、ライ。おまえはどうして特命警察に入ったんだ?」

「俺は他の仕事が合わなかっただけですよ。」

 子供の頃から戦いばかりしてきたライには、定食屋で料理や、着物屋で販売など、ありとあらゆる職業が合わなかった。

「それに強い者と戦いたい。それだけですよ。」

「おまえらしい答えだな。」

 結局は、警備や護衛、暗殺などの仕事しかできないのだが、妹のちいのために正義の名目で堂々と戦いができる警察を選んだ。そして霊力があるので、特命警察に配属された。

「将頼、ライ。頼んだぞ。源氏に遅れをとる訳にはいかないのでな。」

「はい。新皇様。」

「承知。平部長。」

 ライと平将頼は特命警察の第一小隊の隊長の平将門に声をかけられ送り出されるのであった。もちろん平将門も将頼と同様に霊体である。そして特命警察の第二小隊は、源氏である。


「ギャアアア!?」

夜の街で、ちいたちはのっぺらぼうに出会って、顔に目と口と鼻がない姿を見て泡を吹いて気絶する。

「人間を驚かすのはおもしろいな。この子たちのカワイイ顔を奪ってやる。ケッケッケ。」

「汚い手で、俺の妹に触れるんじゃねえ!」

「見つけたぞ! のっぺらぼう!」 

「おまえたちは何者だ!?」

「俺たちは特命警察だ。」

「悪さをする妖怪は許さない。」

「特命警察? そんな物知るか! おまえたちの顔も奪ってやる!」

 そこに現れたのは、特命警察のちいの兄のライと平将頼だった。完全にのっぺらぼうは、相手の力を見誤った。

「鳴け! 竜よ! 光れ! 稲妻! 竜雷破!」

 ライの竜雷剣から稲妻の竜が、のっぺらぼうに向けて飛んで行く。

「え? ギャアアア!?」

 のっぺらぼうに命中して、全身真っ黒こげになる。

「捕まえた。」

「いつの間に!?」

「瞬間移動だ。おまえには聞きたいことが山ほどある。覚悟するんだな。」

「俺たちが警察で良かったな。でなければ、おまえはもう死んでいる。」

「そ、そんな。トホホ・・・。」

 ちいたちを驚かした妖怪のっぺらぼうは、特命警察のライと将頼に逮捕され、警察の牢屋に拘束されて拷問されるのであった。

 つづく。

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