三章 無駄な時間か大切な時間

「はー今日は休日だー。2度寝しよっかな。」

休日に一真がだらけている。

「一真、私出かけてくるね。」 「ん、どこ行くんだ?」

「お仕事。一真を殺す以外に色々まだ仕事が残ってるから。」

そういえば貞子は一真を殺すために来たんだった。

「一真も来る?あっちでおやっさんに会いに行かなくちゃ行けないんだ。」

(おやっさんねぇ。ちょっと気になる。)

「暇だし行こ。ってどこ行くんだ?」

「霊や妖怪なんかがいる世界。生きてる人間が行くなんて珍しいけどね。ちょっと目立つかも。」 「なんか色々気になるなぁ。」 「おやっさんに聞けば色々教えてくれるよ。」

「そりゃあいいねぇ。」

「それじゃあ行こっか。」

そう言うとゲートのようなものが現れた。

「一真、行こ。」

「あっ、はい。」

少しビビっている。


「ここは?」

「向こうの世界。えーと、あっ、おやっさーん」

奥の方に受付のような場所がある。

「おお。貞子、ひさびさじゃなぁ、そっちの奴はなんじゃ。見る限り生きてるようじゃが。」

ボロボロのパーカーを着てフードで顔を隠している。声は結構おじいちゃんだ。

「うっす。栗井一真って言います。」

「まさか貞子と付き合ってるとかないじゃろうな。」

急に何を言い出すんだこの爺さん。

まあ貞子の親代わりの様なので気持ちは分からんでもないが。

「・・・・・・付き合ってます」

「えっ、」

「今すぐお前をぶっ殺す!」

「嘘です。」

「なんじゃ、よかったぁ」

穏やかなおじいちゃんに戻った。 貞子に至っては顔が真っ赤だ。 「さて、貞子。今回の仕事じゃが7件じゃ。八時以降から頼む。」 「はーい。」

「んじゃ、俺はそれまでおやっさんから色々聞きたいなぁ。」

一真が横から入ってくる。

「よかろう。何を聞きたいんじゃ?」

「んー人間の知らないことすべてかな。」

「よかろう。ただあまり言いふらすなよ。」


そう言うと貞子と一真は受付の中に入りイスに座った。

「まず生と死の狭間にいるものは五種程いる。」

「へー種族性なんだぁ」

「ああ、それぞれ幽霊、妖怪、鬼、悪魔、天使じゃ。貞子は幽霊じゃな。まぁ貞子に至ってはビビらされたけどな。」

「どういうこと?」

一真がキョトンとする。

「幽霊は怨みの力でランクが決まるが貞子はずば抜けてランクが高い。ちなみにランクはEマイナスからSSSプラスまである。」

「ふーん。でもランクの基本が分からんし。」

「慌てなさんなミスター大阪人。幽霊の基本はEマイナスからC。妖怪はDからA。悪魔はBプラスからSSマイナス。鬼はAからSS。天使はSからSSSマイナス。神々は確実にSSSプラス」

「んで、貞子は?」

「SSプラス」

少しビビった。

だがそれがどれくらい強いか分からないため反応に困る。

「Eレベルがトラックにひかれてもピンピンしてる。」

「はい!?」

雑魚ランクでも人外レベルでビビった。

「Dは金属を普通に曲げれる。CとBは例えにくいからパスさせてくれ。Aは引きに来たトラックを拳ひとつでぶっ壊せる。んでSはクレーターを作れる。」

貞子を見つめる。

「なによ。」

「SSは軽く高層ビル破壊出来る。SSSは軽く一つの街壊せるじゃろう。」

もう一度貞子を見つめる。

「お前、ビルぶっ壊せんの!?」 「無理だよそんなの。」

「貞子はその力のほとんどが呪いの力『呪眼』にある。」

「呪眼?」

「生きたものと命なきものを呪えるチートに近い力なんじゃ。」 「マジかよ。でもなんで貞子が?」

「それがまだ謎なんじゃ。今調べてる。ただ・・・」

「ただ?」

「貞子は、この世とあの世の何者よりも性欲が強いんじゃ。」

貞子がまた少し赤くなり、一真はまたキョトンとする。

「あんま関係なさそうだけど、それが鍵だってのかい。」

「調査中じゃ。」

「それで幽霊は終わりか。」

「いや幽霊にも多種類いて普通の幽霊と悪霊、地縛霊じゃ。まぁ人間からしたらオーブと呼ばれるものに見えるらしい。」

「なるほど。そう考えると貞子もまた謎ってことか。」

「いや、がんばれば死んだ時の姿になれる。」

「あっそ。ん、そういやお前最近俺の布団の中にいるけどいいもんがどうとかって。」

少しばかり貞子を問い詰めた。 「えーといやそれは・・・」

「あとはコイツ糖尿になってる。」

「ふーん・・・はい!?」

おやっさんの発言に驚いた。

貞子が居候してからそういった辛そうな感じは見せなかったからだ。

「まぁ幽霊だからおしっこが甘いってだけで、他はなんの問題もないんじゃがな。」

「それは・・・どうなんだ?」

「まぁいいんじゃない?私全くしんどくないし。」

幽霊の体調は分からないものだ。 「まぁ幽霊はこのくらいかね。」 そう言うと一真は伸びをして体制を整えた。

「次は鬼じゃ。鬼はすごく強い種でな、中でも鬼神と言うものが一番強くて一体だけでも閻魔大王と並ぶ強さじゃ。」

「閻魔大王?」

「妖怪と幽霊のボスみたいなもんじゃ。ちなみに第八鬼神衆の鬼は、四鬼、赤むらさ鬼、牛鬼、元鬼、あず鬼、三日月鬼、酒呑童子、吸血鬼の八体だと言われている。」

「へーあまり聞かないな。」 「まぁ人間の知らない妖怪やなんやらがいてもおかしくないからな。」

そう聞き一真は興味をそそられるかのような目になる。

「あと鬼ヶ島に住んでる鬼もいる。」

「鬼ヶ島!?」

これまたたまげた。どこぞの昔話が脳内を過ぎる。

「ただ数百年前に桃太郎に何体か重症をおわせられて今は数人しか住んでないんじゃけどな。」

「桃太郎実在したん!?」

思わず大阪人の癖が出た。

「まぁ鬼はこのくらいじゃ。」 「鬼だけでも結構ビビったよ。」 「次は妖怪じゃ。」

「ああ、あの時計で見るやつだろ。」

「一真、そのネタギリギリだよ。」

貞子が珍しくツッコミを入れた。 「妖怪にも多種類あってイタズラ好きの人間が知ってる種、変化種、付喪神、人妖種、閻魔大王、じゃ。」

「結構種類があるな。」

「奴らは自分の個性ある術を使ってイタズラしたり、人間の世界で生活したりしてるんじゃ。人間に害を与えたりは極めてしない。」 「要は無邪気なんだ!」

「まぁそれでいい。」

「ええと次は悪魔じゃな。」

「なんか恐ろしそうだねぇ」 「ああ奴らは結構危ない奴らじゃ。」

おやっさんが目の色を変えた。 「奴らは人間の魂をむさぼったりする一般的な悪魔、夢魔、魔王、こやつらがいる。夢魔は男性の夢に入り・・・」

「性欲を湧かせて自分と子作りさせるエロめの悪魔、だろ。」

「詳しいのう。」

「ま、まぁ有名だしな。」

(本当はそれ系のエロゲーでしったんだけど。)

要はただの変態だ。

「んで悪魔ははそれくらいか?」 「魔王は悪魔のボスじゃ。」 「だろうね。」

「悪魔って、案外情報ないもんじゃなぁ。」

「それ俺のセリフだろ。」

「さて、次は天使じゃな。」

確実に誤魔化した。

「天使は人間を殺すことが趣味じゃがあまりそういうことはやらないんじゃ。ある意味一番ヤバイ奴かもし れんな。天国への案内人、恋のキューピット、神の遣いがおるんじゃ。」

「穏やかな種類が多いけど皆、殺人好き?」

「ああ。」

結構ゾクッとした。

「それと天国があるってことは地獄もあるの?」

「ああ、生まれ変わるまでいてもらう。」

「すぐ生まれ変わるって言ってなかったけ。」

「それまでの施設ってこと?」 「ああ。」

「これで全種だな。」

「ああ。ちなみにこの五種の上にいるのが最強の帝王なんじゃ。すべての種のボスを倒したものがなる。今の帝王は妖怪らしいんじゃ。」

「へー」

「あとは、はぐれ種というものもいるな。」

「何それ?」

「五種のいずれかと人間のハーフじゃ。結構嫌われた種なんじゃ。第八鬼神衆もはぐれ種じゃ。」 「へー、5種も人間に惚れることがあるんだ。」

「一真よ、鈍感じゃな。」

「へ?どういうこと?」

「自分で理解しろ!」

「えっ、あっ、うん。」

(なんでちょっとおこられてんだ?)

「おっと貞子そろそろ時間じゃ。」

「あっうん。行ってきまーす!」 元気な返事だ。


貞子が仕事に行って一真とおやっさんで二人きり。

「なぁおやっさん。もう一つ聞きたいことがあるんだ。」

「なんじゃ?」

「貞子が俺を殺さなかったらどうなるんだ?」

「貞子が今やってる仕事は本来妖怪の仕事なんじゃ。でも貞子は他の幽霊とは違い今こういう場にいるんじ ゃ。わしは貞子を自分の孫のように思ってる。」

「んで、質問の答えを聞きたい。」

「妖怪は不老が多いこの仕事は給料はいいがノルマ達成できなかったら処刑されるんじゃ。まぁそうそういないがな。」

一瞬恐怖のようなものが全身に走った。

「じゃあ俺が死ねばいいのか?」 「いや自分の力、つまり貞子自身のちからで殺さなくてはならないのじゃ。しかしなんでお前さんはのろわれないのじゃろう?」

(まさかとは思うが・・・それはないじゃろう。)

「さぁ。なんでだろうな。」


「ただいまぁー。」

九時頃。貞子が仕事から帰ってきた。

「おう、おかえり。」

「貞子、お疲れ様今日はゆっくり休みなさい。」

「はーい!」

なかなか元気な返事だ。

「んじゃ。帰ろっか。」

「うん!」

「間違って異世界にとぶんじゃないぞ。」

「へ?」

「あっ、話してなかったが異世界ってあるんじゃ。無量大数なんぞ可愛いもんじゃ。」

「うっそ、マジか!それってコンビニ帰りに召喚されたり、下校に雷に撃たれたり、チェスで勝ったりとかのあの!?」

「そう言う危ないネタは控えて欲しいんじゃが。まぁそういう奴じゃ。」

一真はすごく興味津々で目を輝かせていた。

「めっちゃ気になる!!!」

「やめときな。帰れなくなるぞ。」

「やめときます。」

やけに素直だ。

「とりあえず、気をつけて帰ります。」

またもや素直だ。

「じゃあね。おやっさん。」

「ああ、また来週。」

そう言うと来た時と同じゲートが現れた。中に入るといつの間にか部屋にいた。


「つーかーれーたー!!!」

貞子はベットに倒れて寝付いた。一真も疲れた感じが出ているのでゲームをしたが効果なかった。

本当になんでこの男は疲れているのだろうか。

あっ、夜更かししているからだ。


"夜" 午前二時。

二人が起きた。

「んー。げっ!二時かよ!てか両親は・・・寝てるよな。」

「んー。一真ぁ、おはよう。」 「もう二時だぞ。」

「えっマジ!?」

「ああどうする?」

「とりあえず、お風呂入ろ。」 「おっおう。」

慣れたものだがやはり恥ずかしい。少し赤くなりながらも一真はいつものように貞子の長い髪を洗った。

「一真そろそろ出よ。」

「そうだな。のぼせそうだし。」 「髪乾かしてね。」

「おう。」

服を着てドライヤーで髪を乾かしてから二人は部屋へ戻った。そして寝た。

「寝付けねぇ!」

そりゃそーだ。

「ねぇ一真。」

「ん?」

「あのね、少し苦しい。なんかね、一真に体触られたりとか、いろいろやってほしい。」

「お前、ムラムラしてんの?」 いわゆる夜の力だ。

「わかった。気持ち良くしてやるよ。」

一真がいつもと違う。まるで獲物を喰らう狼のように。

「ここ座れ。」

「うん。」

一真は貞子の隣に座り肩に手をまわした。

「一真ちょっと怖い。」

「知るか。」

少しSになってる。

「ひゃう!」

「一真ぁ、もうダメぇ。」

ヨダレを垂らしながら気持ち良さそうにうずくまった。


「どうだ、治ったか?」

「うん。」

顔を真っ赤にしながら答えた。 「実はさぁ俺、女の子っていじめたくなっちゃうんだ よねぇ」

やはりドSだった。

「一真ぁ。今度またしてね。」 「お望みならば!ってもう寝てるし。性欲が強いってこういうことね。なるほど。」

(一真の、バカ。)

厳密には寝たフリだった。

「まぁいいや俺も寝よっと。」


"朝"

「んー今何時だ?ってもう一時間目始まってる!!!!貞子!起きろ、もう一時間目始まってる!急いで行くぞ!」

「えっ、あっ、うん」

朝食の食パンをくわえ、急いで学校へ向かった。

「やれやれ、今日も一日大変そう。」

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