二章 終わらない茶番と終わる茶番

早朝、少し眠い体に対抗しベッドから起き上がると部屋で寝ているはずの美少女の姿がどこにも無かった。

リビングに向かうと母親と父親の姿しか無かった。

「ふわぁ。んっ、あれ母さん、貞子は?」

「なんか用事があるって出てったけど。」

「んじゃ学校1人で行くか。」 「その前にご飯!」

「作ってんじゃん。」

「食べてきなさい。」

ちょうど学校へ行く時間なのでパンをくわえて学校へ向かった。思いのほか体が軽かった。


登校中一真は夜空とチョコビと合流し学校へ向かった。

「一真。今日は元気だな。」 「ん。あっああ。」

「もー心配したんだからね。」「今日は大丈夫だから。」

二人とたわいもない話しをしながら足取り軽く学校へ向かった。


学校に到着し一真はお眠のかーくん発動!幸せな夢と共に眠りに付く。


"キーンコーンカーンコーン" 担任の先生が来た。寝ているにも関わらず何も言われない。

「えー今日は転校生を紹介する。」

一真の目の色が変わった。こういう場合ヒロインが来るもの。つまり貞子かもしれない。

(まっ、んな事ねぇか。)

淡い期待を微かに抱き(そんなこたァないだろう。)と思い再度夢の世界に足を運んだ。

「どうぞ入って。」

「こ、こんにちは月村貞子ですよ、よろしくお願いします。」

少ない確率を的中させたことと、何故転校生として来たのかという疑問を抱き一瞬で目が覚めた。

オタクの感は鋭いのだ。

「おっ、お前!」

急に立ち上がった一真にクラスの皆が注目する。

「えへへー、来ちゃった。」

「お前なぁ」

クラスの中で2人が会話する。そこにチョコビが割り込んでくる。 「お前ら知り合いなの?」

「えーと一緒に住んでる。」

貞子が言うとクラスがざわめいた。

「一緒にお風呂も入ったし。」

すっごくクラスがざわめいた。 「昨日は一緒に寝たし。」

アウトな勘違いをする言い方だ。 「一真お前そこまで進んで・・・」 「ちがーう色々と誤解してるし俺はまだ童貞だ!」

世界一むなしい発言だ。

朝からぐったりだ。今日はすぐ寝れると思うがそうともいかなさそうだ。 クラスはざわめきをおさめることなくホームルームが終わった。


さっきの一真との会話を忘れたかのようにクラスの男子が貞子の可愛さによってくる。

貞子が少しこまっている様子を一真は窓側にもたれかかってをチョコビと見ていた。

「貞子すごい人気だな。」

「お前の彼女取られんぞ。」

「いや彼女じゃないって。」 「どうだか。」

貞子がいよいよ泣きそうになってる姿はさすがに見てられなかった。

「おーい貞子。」

救済の声に助けられ貞子はそのまま一真に抱きついた。少し赤くなる一真と嫉妬心のすごい目で見る男子生徒と少しニヤけるチョコビを無視しずっと『一真』と抱きついてる。

この時一真チョコビ以外の男子生徒 を敵にまわした。

「あのー皆さん。誤解かなんかですからね。」

「「「一真の馬鹿野郎ー!!!!」」」 「なんで!そーなるの!」


1時間の理科。

貞子が気になり珍しくお眠のかーくん発動しなかった。

(貞子大丈夫か?)

貞子は見るからにわからない!という顔をしている。

「よーし。んじゃこの問題を、つきむ・・・」

「俺がやりましょー!」

教室がザワついた。周りから「イキリトゥ」という声が聞こえてくる。

「ほら栗井。早く答えろ。」

(うう、わっかんねぇ!よし気張っていくぜ!)

黒板に埋まるほどの大きさで『うさぎは戦車に合います!!!!』と訳の分からないことを書いた。

「栗井、なんだそれは!」

「えっ違う!?」

「当たり前だろ!」

「んじゃ、ゴリラとダイヤモンド?」

もう頭がいっぱいいっぱいだ。自分でも何言ってるか分からない。 「とりあえず、お前は席戻れ。」 クラスからは「ばーか、いきるからだ!」との笑い声が聞こえる。だがあんまり気にはしない。

そういう人間なのだ。

「あっ先生、疾風と切り札?」 「えっ、正解。」

またもやクラスがざわめいた。 「んじゃ、俺はいつもどうりにしてます!」

「おっおう。」

(てかなんの問題を解いたんだ俺は?)

自分の席に戻ろうとすると嫉妬深い男子生徒が足を引っかけに来た。

「やんのかゴアラ!!!!」

割と本気の声で言った。クラスからは「雑魚がいきん な!」という声と共に笑い声が発生した。

「うるせぇ!お前ら!」

チョコビが言うとクラスが静まり返った。

このクラスは喧嘩など日常茶飯事なのだ。

自分の弱さに少し悲しくなり席に戻ろうとすると貞子が小さい声で「ありがとう」と言ってくれた。 (なんか達成感ヤベーイ!生きててよかったぁ。)

今初めて生まれてきたことに感謝した。そして席につき、寝た。


"キーンコーンカーンコーン"

授業が終わり、他の男子に取られる前に貞子を連れ出した。

「貞子お前大丈夫だったか?」「全然わからなかった。」

「大丈夫!俺もだ!」

「励ましになってないぞ!」

向こうからチョコビと夜空がやってきた。貞子は一真の後ろに隠れた。

「あっ、えーと。」

「よ、よろしく。貞子ちゃん。」 「わりいなこいつ人見知りで。貞子俺の幼馴染のチョコビと夜空だ。」

「よろしく。」

少し怯えたような声で貞子が返事しまた隠れた。

「まぁお前らも仲良くしてやってくれ。」

「ああ。頑張る。」

「うん!改めてよろしく!」

少し気まずい雰囲気がただよったがチョコビがちゃちゃを入れてきた。

「ところでよお、一真。どうやってこんな可愛い子落としたんだよ。」

貞子が少し赤くなった。

「だからそういうのじゃねえって。」

「んなこと言って本当は気があるんだろ。」

「ん、んなこたァねぇよ。」


"キーンコーンカーンコーン"

「チャイムなったし教室にもどるか。」

2時間目に入りまたもや一真は貞子を見ているが1時間同様わからないという顔をしている。

その後の授業も同じ顔しかしていなかった。

「んじゃぁこの問題を月村に解いてもらおうか。」

突然のことに驚いた。貞子が呼ばれるのを回避しようとしていたにも関わらず寝過ごしたのだ。

(だー!やってしまったー!)

貞子が救済の瞳で見てくる。 危機的状況に小声でチョコビに助けを求めた。

「なぁチョコビどうにかならないか。」

「一つ方法があるぞ。」

「なんでもいいからやってくれ。」

「おう。わかった。」

チョコビの最後の救済を頼っていた。が、チョコビは立ち上がりおもむろに胸ぐらを掴んできた。 「えっ?」

「歯ぁ食いしばれやこの野郎!!」 チョコビにいきなり腹パンを二、三発食らわされた。

「コラァ何やってんだ!」

「やんのか先公!!」

「あっいやええとー」

チョコビは昔ブチ切れて体育の先生を気絶させたことがある。

その間、部活は出来なかったので良かったのだがみんながチョコビを恐れるようになった。

「オラっオラ」

まだ殴ってくる。もう意識がもたない。


気が付くと保健室にいた。

「おっ一真、気が付いたか。」

そこにはチョコビと貞子がいた。 「おうチョコビ助かったぜ!」

あの時チョコビは殴る振りをしてくれた。その芝居に付き合い殴られる振りをしたが眠気が襲ってき、その場で寝てしまったのだ。 「一真、大丈夫?」

「おう、寝てただけだしな。」

貞子は安心したようにため息を付いた。


"キーンコーンカーンコーン"

急にチャイムがなった。

「なぁチョコビ。今何時?」 「四時間目の終わりくらいじゃないか?俺らは一真が起きるまで着きそうって言ったからお前の爆睡のおかげで結構サボれたぜ!」 「そうですかい。まぁとりあえず飯にしよう。」

「おう!」


昼飯の時間。

いつもの3人に加えて貞子の姿もあった。夜空に事情を話し弁当を開けた。

「貞子ちゃんのお弁当美味しそうじゃん。」

「自分で作った。」

貞子は家事がすごい得意なのである。一真は片付けの時と朝飯一緒に作ってる時にそれを実感していた。

「なぁ一真、夜空結構グイグイいってんなぁ。」

「そうだなしばらく二人っきりにしてみるか。」

小声で会話しながら二人はそっとその場から去った。

「一真、どこ行くの?」

「ん?あー腹壊した。」

少し厳しめだが貞子の友達作りのためにやってみた。


10分が経ち二人の様子を見に行った。すると結構楽しそうにおしゃべりしてるではないか。

「お前ら随分楽しそうだな。」 「あ、一真。」

「この子可愛いからね。ぐへへへ。」

「おいおい夜空。変なスイッチ入ってます。」

「あら失礼。」

夜空は男の娘というカテゴリーなので、たまに変なスイッチが入ったりする この場にチョコビも現れた。

「お前ら楽しそうだな。」

デジャブを感じる発言だ。

「なぁ貞子、チョコビとも仲良くしてやってくれ。」

「う、うん。よろしくチョコビ。」

「え、あーよろしく。」

ここまで来たらゴリ押しでもチョコビと貞子を仲良くさせる。

(これが化け物同士の会話かぁ)

いやチョコビは「今」は化け物ではない。デジャブを感じるツッコミだ。

「なんだよ貞子結構いけてんじゃん。」

「う、うん。」

だがまだ少し心閉ざしていることが一真にはわかる。


"キーンコーンカーンコーン"

5時間目の授業が始まるとお眠のかーくん発動!それどころか貞子までウトウトしてる。

そしてバタンキュー。

「コラァ一真!起きろ!」

「ふわぁ、ひゃい、わかりました」

すんなり一真は起き貞子はまだ寝ていた。

「おい一真、貞子寝てんぞ。」 「ありゃ、マジか。」

注意されてないのは一真が寝るかどうかに集中されているため誰も気にしない。

(なんかずるーい!)


放課後。

いつもの帰り道にいつものメンバーにプラ ス1人。この日は部活がないので帰宅。

「おい貞子。大丈夫だったか?」 「全くもって無理。学校って大変だねぇ。」

チョコビが一真に近寄って来た。 「なぁ一真。貞子って引きこもりかなんかだったのか。」

「いやぁ違うと思うが・・・」

「ふーん。」

「なぁ貞子。今日1日どうだった?」

「一真の気持ちわかる。眠くなる。今の中学校は難しい。」 「「えっ今の?」」

「あっ、いやっ、何も。」

(こいつら変なとこで感がいいな。)

「あっ、なぁお前らコンビニよっていいか?」

「えっああ。」

一瞬いろいろ危なかったのでコンビニで誤魔化した。

「ありがと。一真。」

耳元で静かに囁いた。

(ヤベーイ!これも一部のラッキーイベントじゃーねぇか!)

思わぬイベントが来たのでスタスタコンビニへ向かった。


コンビニに着くと一真と貞子はすぐさまお菓子売り場へ。

「いつもの♪いつもの♪」

お菓子コーナーからチョコレートを手に取った。

「チョコレート?」

「あたぼーよ!チョコレートほど美味しお菓子なんぞ存在しない!特にビター。貞子はなんかいるか?」

「一真がくれたヤツ美味しかった。」

「んじゃそれでいいな。」

その様子をチョコビと夜空が見ていた。

「なぁやっぱあの二人出来てんじゃねぇか。」

「えーそうかなぁ。」

少し嫉妬気味なに言った。


コンビニを出て4人は家へ帰った。

「そういや貞子。お前どうやって学校来たんだ?」

「ああ、おやっさんがやってくれた!」

「えっ、おやっさん?」

「おやっさんは私が幽霊になって途方に暮れていた時面倒見てくれた。。いわば親みたいな存在。」 どうやら貞子にも親のような存在がいるようだ。

「へー。いまどうしてんだ、そのおやっさんとやらは。」

「仕事の受付してる。」

「へー、なんかどこから突っ込んでいいかわからんが。」

そんな話しをしながら二人仲良く帰った。


部屋に入り一真はベッドでぐったりしていた。

「眠いな。貞子、ゲームでもやろーぜ。」

「うん!」

ゲームの電源を入れ、バトルゲームのカセットを入れた。

「なぁ貞子。今日は疲れたな。」「あっ、負ける。」

貞子の気を逸らしながら勝っていく一真のスタイル。

「あーまた負けた。」

「コツはなぁ、切り札を悟られないように最後まで隠すことだ。」 「でも一真そんなの使ってないじゃん。」

「まぁそれは俺が上手すぎるからかなぁ。」

「むぅ」

(はい!その反応可愛すぎ!)

一真は生粋のゲーマーだ。


ゲームを終え風呂と飯を済ませ、もう一度ゲームをした。

「まぁ結構やったしそろそろ寝よ。」

「まだ一回も勝ってないのにぃ。」

「まぁまぁ、また明日だ。」

「はーい。」

布団を敷き二人は寝た。


"朝"

「朝か、ふわぁ、よく寝た、って、さっ貞子どこで寝てんだ!!!!」 気がつくと貞子のベッドにされていた。

「んん。あっ、一真おはよう。」 「なんで俺の上で寝てんだ!」 「知らない。それよりご飯食べに行こ。」

なんだか貞子はなんだかなれた感じだ。

「朝から疲れるぜぇ。てか、その前に着替えないと。」

「あっ、うん。」

「ってなんで今ここで着替えてんだよ!」

「えっああごめん。」

貞子のなにかが進化している、と感じた。

「あーもういい俺が出てく!」 「どうしたんだろ。」

天然というか小悪魔というかって感じだ。


登校中。

いつものメンバー。

「はぁー、今日は部活かー。」 「んーなんてー、一真くーん。」 「いいえなんでもありませんキャプテン。あっ、そういや貞子は部活どうすんの?」

貞子が少し冷汗をかいた。

「んー、一真と一緒は無理だし。」

「男子バスケ部だからな。」

「夜空は何部?」

「美術部だよ!」

夜空は相変わらず元気だ。

「んと、やっぱり一真と同じのがいい。」

「いやだから無理だって。」 「そんなことないよ。一真がいれば。」

「えー」

大体のことは察したが乗り気にはなれなかった。


四人は教室に入ったが一真に視線が向けられた。

何かを悟ったような感じで一真を見た。

「えーみなさん。なんでしょう。」

「「「お前ばっかそんな可愛い子とーー!」」」

完全に嫉妬だ!

「えへへー、一真!」

クラスの男どもを挑発するように一真の腕に抱きついた。

「「「コナアラァー、一真ー!!!!」」」

そのとなりで夜空がジト目になっていた。

「ちょっと、私は!?」

「いやお前はさぁー」

「あんたは黙ってなさい!」

チョコビがしばかれた。 これから大変になりそうだ。

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