大日本帝國憲法増補(昭和四十六年二月十一日発布)
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(上諭)
朕惟フニ祖宗ノ遺範ヲ紹述シ時ニ随ヒ宜ヲ制シ以テ國運ノ進展ニ順応スルハ皇祖考ノ宏謨ニシテ朕ノ率循スル所ナリ今ヤ帝國ノ大憲ヲ増廣スルノ要ヲ認ム顧ミレハ朕カ皇祖考明治天皇明治ノ初國是トシテ五箇條ノ御誓文ヲ下シ給ヒテ曰ク
廣ク會議ヲ興シ萬機公論ニ決スヘシ
上下心ヲ一ニシテ盛ニ經綸ヲ行フヘシ
官武一途民ニ至ル迄各其志ヲ遂ケ人心ヲシテ倦マサラシメンコトヲ要ス
舊來ノ陋習ヲ破リ天地ノ公道ニ基クヘシ
智識ヲ世界ニ求メ大ニ皇基ヲ振起スヘシ
叡旨公明正大又何ヲカ加ヘン今ヤ御誓文発布ヨリ百有余年ヲ経ヌ此ノ間朕カ忠良ナル臣民一心協力シテ立憲政治ノ方途ヲ研究実行シ其ノ精華益々固クスルハ朕ノ深ク譽トスル所ナリ惟フニ帝國ノ立憲政治斯クモ済美ヲ発揮スルハ偏ニ朕カ忠良ノ臣民心ヲ一ニシタルノミナラス我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ナリシコトニモ想ヲ興スヘシ推古天皇十二年聖徳太子親ラ肇メテ憲法十七条ヲ作リ給ヒテ曰ク
和ヲ以テ貴シト為シ忤フルコト無キヲ宗トセヨ上和キ下睦ヒテ事ヲ論フニ諧フトキハ則チ事理自スカラ通ス何事カ成ラサラム
夫レ事独リ断ムヘカラス必ス衆トトモニ宜シク論フヘシ
此レ立憲政治ノ神髄タル公議輿論ノ源泉トモ言フヘキ思想ナリ帝國ノ立憲政治ハ肇メテ百有余年ニアラス千歳ノ悠久ノ時ヲ経テ朕カ信倚セル汝等臣民ノ血肉トシテ既ニ其ノ精神ニ備ハリシモノナリ然レトモ立憲政治ノ命運ハ汝等臣民ノ双肩ニアリ朕尚モ汝臣民カ重厚堅実ヲ旨トシ浮華驕奢ヲ戒メ国力ヲ培養シテ時世ノ進運ニ伴ハムコトニ勉メサルヘカラサルコトヲ庶幾フ今ヤ立憲政治ノ基礎タル議會政治ハ普通選挙ニテ行ハレ上下一致ノミナラス男女相和シテ之ヲ行フ宜シク挙國一家子孫相伝ヘ臣民協和シテ帝國ノ発展及萬邦ノ平和共榮ニ尽サムコトヲ庶幾ヒ朕ハ帝國議會ノ協賛及樞密顧問ノ諮詢ヲ経テ大日本帝國憲法増補ヲ裁定シ茲ニ之ヲ発布セシム
此ノ帝國憲法増補ハ昭和四十六年十一月三日ヲ以テ有効ナラシムルノ期トスヘシ
朕カ在廷ノ大臣ハ朕カ為ニ此ノ憲法ヲ施行スルノ責ニ任スヘク朕カ現在及将来ノ臣民ハ明治二十二年発布ノ帝國憲法遵由ノ効力ヲ有スル帝國憲法増補及此ノ憲法増補ニ對シ永遠ニ從順ノ義務ヲ負フヘシ
御名御璽
昭和四十六年二月十一日
内閣総理大臣 子爵 佐藤 栄作
枢密院 議長 男爵 岸 信介
外務 大臣 侯爵 德川 頼韶
内務 大臣 前尾 繁三郎
大蔵 大臣 福田 赳夫
兵部 大臣 荒尾 興功
司法 大臣 伯爵 西郷 吉之助
文部 大臣 張 清衛
逓信 大臣 大平 正芳
農務 大臣 陳 義男
通商産業大臣 田中 角榮
厚生 大臣 灘尾 弘吉
運輸 大臣 中曽根 康弘
建設 大臣 西村 英一
國務 大臣 三木 武夫
國務 大臣 李 敏夫
國務 大臣 坂田 道太
内閣書記官長 保利 茂
貴族院 議長 公爵 徳川 家英
衆議院 議長 石井 光次郎
大審 院長 石田 和外
内 大臣 椎名 悦三郎
大日本帝國憲法増補
第一章 臣民権利義務ニ関スル増補
第一條 明治二十二年発布ノ帝國憲法遵由ノ効力ヲ有スル帝國憲法増補此ノ憲法増補及将来ノ帝國憲法増補ニ定ムル所ノ臣民ノ自由及諸権利ヲ臣民公権トス
第二條 日本臣民ハ臣民公権ノ行使ヲ妨ケラルルコトナシ
第三條 日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケル及臣民タルノ義務ニ背ク為ニ臣民公権ヲ行使スルコトヲ得ス
日本臣民ハ臣民公権ヲ濫用シテ他人ノ名誉自由又ハ権利ヲ侵害スルコトヲ得ス
第四條 前條ノ事由ニ依リテ公権ヲ制限スルハ法律ヲ以テ為スヘシ
第五條 自由及諸権利ノ性質ニ應シ外国人ハ公権ノ保護ヲ享ク
第六條 日本臣民ハ健康ニシテ文化的ナル生活ヲ営ム権利ヲ有ス
日本臣民ハ高利暴利其ノ他不當ナル經濟的壓迫ヨリ保護セラル
第二章 帝國議會ニ関スル増補
第七條 両議院ハ各々國務ニ関スル調査ヲ行ヒ之カ為証人ノ出頭及証言並ニ記録ノ提出ヲ求ムルコトヲ得
第八條 両議院ハ各々常務委員ヲ置ク常置委員ハ帝國議會閉會ノ場合ニ於テ緊急ノ必要ニ由リ立法権ノ協賛ヲ為ス
第三章 國務大臣及樞密顧問ニ関スル増補
第九條 内閣総理大臣ハ衆庶ノ望ヲ徴シテ天皇之ヲ親任ス
第十條 内閣総理大臣ハ他ノ國務各大臣ヲ奏薦ス
第十一條 内閣総理大臣ハ内閣ヲ代表シテ國務ノ状況ヲ帝國議會ニ報告ス
第十二條 樞密院ハ必要ト認ムルトキハ帝國議會常務委員ヲ會議ニ参加セシムルコトヲ得
第四章 司法ニ関スル増補
第十三條 大審院ヲ最高裁判所トス大審院ハ下級裁判所ヲ監督ス
第十四條 大審院ハ裁判所ノ内部規律及司法事務処理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得
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