第2話 : パパラッチ ( 1 )




 もう、アンコールの催促サイソクは聞こえない。車椅子の少女と吉永アヤのが、この水を打った様にジャクとした駐車場に残される。




「そろそろ、出て来てはどうかしら …?

 先程から、柱の陰に居るのは分かっているのよ」


 私達以外に人が …!? 驚いたアヤは、少女が指摘した方向に躰を返し、目を凝らす。

 すると…



「 車椅子の姉さんには、


 カナわねぇでやんすねぇ…」



 小柄の青年が頭をきながら、そろりと柱の陰より歩み寄って来る。


「今日も、いいスクープ写真が撮れたようね」


「お陰様で、どうも…」


 満更マンザラでも無い様子で愛想笑いを返し、挨拶アイサツ代わりに、一つシャッターを切る。


「あなたでしょう? 週間文筆に、リコさんとユウスケの熱愛報道をタレ込んでいたのは」


「お察しの通りで …」


「あなたに感謝こそしては無いけれど…

 随分と今回の事件について、記事の内容を

 参考にさせて頂いたわ」


「お役に立たせて頂いて、光栄に存じ上げやす」


「いいのよ、そんなに恐縮なさらないで…。

 私も、あなたの事を訳では無いのだから」


 彼女は、トゲのある言い回しで、青年を牽制ケンセイする。


「これは手厳しい!!


 まぁ…


 こちらとしても、商売でやんすから、感謝される筋ではないんですがね…。


 週間文筆はネタ買い取りの額が他誌より、一つケタが違うんでやんすよ。


 それにより自然と力も入って、ターゲット

 の人物にピッタリと、四六時中マークさせて頂きやした」


 週間文筆からのを思い出したのであろう。彼は、ほくそ笑みながら答えた。


「じゃぁ …。執拗にマークしていたのなら、姉妹の入れ代わりや、も察しが着いたはずね」


「へぇ… それがでやんすがね…。


 当初から、リコさんの後を丁寧に尾行する事を心掛けて取材しておりやしたが、からリコさんのニオいがスッカリ変わっちまったんでさぁ…」


 と、少し勿体ぶった口調で、はぐらかそうとする。

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