第2話 : 届いた脅迫状 ( 2 )




 日向崎氏が、歯ぎしりしをしながら、手紙をニラみ付けていると、廊下より急ぎ駆け寄る者がある。


「 先生!! 日向﨑先生!! たっ大変です!! 温室が!! 中の胡蝶蘭がっ!!」


 息を切らせ、糸川サユリが事務室に飛び込んで来た。


「何があったんだ!!こんな時に騒々しい!!」


 指示通りのを準備する事に忙しい彼は、背中で応える。


「先生!!大変なんです!! 今日も、先生の言いつけ通りの時間に温室の胡蝶蘭へ、お水をあげに行ったら、硝子の壁も中の胡蝶蘭も誰かにメチャメチャに壊されているんです!!」


「なっ何ぃぃぃい!! 何だと!! 本当かっそれは!!サユリ!!」


 彼は振り向き様に二つ折りにしたを、事務机の上へ拳と共に叩きつける!! 対角線上の机の端が一度浮く。


 なっ何だって今日という日は、立て続けに厄介事が… 温室の件は、学園の生徒の仕業だろう … 私へのウラみ …?当て付け …? くぅぅぅ …

 規則!規則!規則!もっと規則だ!!!! 私に対する絶対的な忠誠心、服従心が徹底されていない!! まだまだヌルかったぁぁあ!!


「サユリ!! 直ちに、生徒全員を事務室に集合させろ!! いない奴がだ!! 私はその間に温室の様子を見てくる!!」


 彼は、もう一度、の上より杭を打つかの様に拳を降ろし、その場を離れ庭にある温室へと駆け込む。


「ああ … 何て酷い事を … こんな幼気イタイケで、か弱く、愛らしい物を、打ち、ヒシぎ、壊すなんて … 到底、私には考えられない!?


 異常だ… 異常だ… 異常な蛮行だ!!


 狂ってる、 狂ってる、 狂ってるぅぅう!!


 絶対!!絶対!!絶てぃ!!許さねぇぇぇ


ぇぇぇえ …


 必ず、犯人を捕まえるぅぅぅぅぅう!!」




 サユリは直ちに全員を召集したが、妹のリマがいない…


 マズイ…このままでは、リマが疑われてしまう!!


 そこへ、日向﨑氏が帰って来る。


 ″ 怒髪ドハツ、天をく ″とはこの事か!!


 彼の髪の毛は逆立ち、顔は紅潮、目は爛々ランランと血走る。


「ユガリ…!! ワッ、ワダシガ、カェッデグルマデニ、ハンニンヲ、ミズケロ!!ミズガラナイトキワァァ… 」


 憤怒の頂点に達した彼が見せる末期的な症状で、舌の、ろれつが回らない程、我を忘れてしまうのだ。


 その姿を見た生徒全員、皆震え上がる。


 幸いに先生は、まだリマの事は気付いていない …


「分かりました。早速、先生の指示通りにさせて頂きます。 どうぞ、お忘れ物が有りません様に」


 と机の上に置かれたままの、二つ折りにされたをグイと差し出す。


 怒りの為に、つい忘れてしまっていたが、を引ったくり、サユリにウナガされる形で、彼は学園を後にした。

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