第2話 : スターライト・エクスプレス ( 1 )




「スターライト・エクスプレスに御乗車ようこそ~♪」


 お客様が入店すると店内のメイド達が次々と挨拶の連呼をする。


 ここ『スターライト・エクスプレス』は秋葉6丁目 春日ビル 7階に店舗を構える、銀河鉄道をコンセプトにしたメイドカフェである。


 本日は、この店きってのセンターメイド、リコピンのリアル誕生日、バースデーイベントなのだ。店内はリコピン推しの御主人様達で開店時から満員御礼の状況である。


「クララちゃん … この2週間、の事でバタバタしていて、全然、連絡出来なくて、ごめんなさい… 」


 小さく本当に申し訳なさそうに、リコピンが謝る。


「そんな事はいいのよぅ … それより、お姉さんのは分かったの? どうなったの?」


 店長メイドである、クララが心配そうに応える。


「うぅぅん … それが未だなの… こんな二週間も、突然、家を空ける姉じゃないわ … 警察にも届け出てみたのだけれど、この年頃の若い女の子には良くある事で、急にヒッョコリと帰って来る事が多いみたい。勿論、捜索はしてみるけれど、他件の案件も山積みなので直ぐに見つかるとは限らないから、ご家族も積極的に御協力下さい。との、お話しだったのよ…」


「まぁ … 警察の方も随分と塩対応だけど… リコピンの心当たりは無いの?」


「ええ…。 姉は基本的に交友関係が少なかったから、思い付く人には全員連絡してみたのよ… でも、ダメだったわ … 姉が失踪シッソウした当日は … そう、都民の日で休日。 彼とのデートで遅く成って帰宅してみると、その夜から本人の所在はオロか、全く連絡さえ無いの …」


「そうそう、そのリコピンの彼氏て …


 ″ AKIBA・BLUE DAYS ″ のユースケだって本当なの!!


 今日、発売日の ″ ″ に 、スクープされてたじゃない?」


 ″ AKIBA・BLUE DAYS ″ とは、秋葉のLIVEハウスを中心に活動して来た5人組のロックバンドである。 近年、そのビジュアルとネオ・ブリディシュロックが、若い人々に受け入れられ、来月には武道館でファーストコンサートを開催する程、今や注目株の筆頭と成った人気グループなのだ。 恋人のユースケは、中心のリードボーカルを務める。


「えぇぇ … そうなんだけど … 今は … その話 … 」


 リコピンが、言いにくそうにしていると、


「リコピンさぁ~ん!! チェキお願いしまぁ~す♪」


 インスタントカメラを構えたメイドさんに呼ばれる。


「クララちゃん、ごめんなさいね。 その話は後で …」


 そう言うと彼女は、そそくさとチェキの準備にかかった。

 

 

 

 

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