第1話 : 月夜の攻防 ( 2 )




 未だ恍々コウコウ余韻ヨインが続く中に、彼は夢想ムソウと交わう …



「 常に、他人より向けられる無意識の行為コウイ


 ってぇのは、あれはいけねぇ… 下品かつ不


 愉快な所業だよ。


 だがナァ、反対に美しい行為には全てにお


 いて意識的なが有る。


 つまりは、様式美ってもんだ。


 まぁ… 型だな。


 お前は、終始それをツラヌく事を、


 オコタった結果が、このザマだぁ …


 闘いの最中にだって様式美は、


 キチンとあんだっ!!


 暗闇に独り在っても、


 必死に藻掻モガき手探りで掴み取る!!


 それが己のへと導くんダァ


 ッ!!!!」



 車椅子は、ゴゥーゴゥーと鳴き、残像を刻む。



「そろそろ良い子は、の時間だ!!」


 彼はクレーンの角度を下げ、円周の軌道キドウをプレハブ小屋のそれへと合わせた。




「ドスガガガガガガーン!!!!!!!」




 ほんのわずかな躊躇チュウチョ欠片カケラユルさない突進である。


 小屋は、パみじんにビル外に破壊され、少女は、その瓦礫ガレキの中より再び、クレーンの要求に応えなければならなかった。


慎重シンチョウは美徳の一つだと、死んだジイさんが良く言い聞かせてくれたっけなぁ!!」


 クレーンは二度、車椅子を床に、グジャリ、グジャリと落とし、彼女の様子を見た。


 口角から鮮血がアフれ落ち、身動き一つ無い少女の失神はオロか、生死さえ確認出来ない。


 車椅子の背に両腕をウツムく様は、マサに、罪深き人々のゴウを一身に受けた であった。




 

 眼前にの最期の御姿を見た…





 もし、本当に神様でいらっしゃるならば、本来あるべき場所に、戻して差し上げるべきだと、彼は敬虔ケイケンな心持ちとなる。


「ギュルギュルギュルギュルギュルル!!」


 一気にワイヤーが巻かれ、少女は羽根一つ残さず、飛び去る。


 クレーンフックの収納口に彼女を巻き込み、諸共モロトモに、切断してしまう了見なのだ。


 眼前のは、その最後の一本のワイヤーに運命をユダね、もはや、アラガう事さえ無かった。




 天国の入り口には、もう手が届く…。






「!!!!!!!!!!!!!!!!」



 闘う者の本能なのであろうか …


 生きる事への執念シュウネンなのであろうか …


 マリオネットに命の弾丸が撃ち込まれ、無意識のまま、ビクンと弾いた右手がワイヤーロープをでた。




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