第1話 : 月夜の攻防 ( 3 )




 ─ いや… そう見えただけである 。


( バジンッ!!!!!!)


 ワイヤーロープが跳ね切れ、収納口に巻き込まれる危機は避けられた。が同時に、後輪が、そのままの勢いでクレーンに当たり、宙に弾かれ放り出されてしまう。


「ガグン!!!!」


 強い衝撃が、少女の意識を呼び戻す。



 夜の秋葉電気街がゆっくりと、頭上に広がる …



 空中で体勢が制御不能となった彼女は、猫のがする様に、錐揉キリモみに躰を返し、ストンと両車輪をクレーンの上へとソロえる。


「それだ!! それだ!! それダァ!!


 そうで無くっちゃいけねぇ!!


 そう来なくっちゃよゥ!!


 もっと俺を楽しましてくれんだろぅ!!


 楽しましてくれんだよなぁ!!


 獅皇兵団ヴァンセントのお嬢さんヨ


 ゥゥゥ!!!!」




 彼女は、車輪を横にソロえたまま、グイと躰をこちらに向け、クレーンの腕を滑り降りて来る。


「さぁ来るぞ!! 来るぞ!! 来るぞう!!


 この一撃で勝負が決まる!!


 俺にはハッキリと分かるゾ!!


 一瞬だ!!


 一瞬で決まるっ!! 」


 彼女は両脇をめ、左腕の肘は押っ付ける様に曲げ、テノヒラ上に右のコブシえられている。


 それは、剣術、居合道の構えである。



「見極めてやる!! 必ず、この目で!!



 ヤツの太刀筋タチスジを!!



勝利の道筋ぉぉぉぉおおお


 ッ!! 」

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