第1話 : 最上階の罠 ( 1 )




 彼女は、メズラしい上下の白いセーラー服を着用し、スカーフは紺色コンイロ、やはり白のニーハイソックスを膝上ヒザウエまで、たくし上げ、足元には黒のショートブーツ。


 先程サキホド、彼が触れた靴は、彼女のそれである。


 外見は、漆黒シッコクの長い髪をタタえ、小顔に咲いた薔薇バラの唇。肌は小雪の様に白い。


 どこか北欧ホクオウ神話に出てきそうな少女なのだ。




 年齢は、その出で立ちから17歳、前後であろう。


 カラダの線は細く、かつ胸元には、大きくはないが、この時期、少女特有の子供とも大人とも言えない、あの危うさからなのか、開花を心待ちにするツボミが、恥ずかしそうに、それでいて甘く芳醇ホウジュンな香りを、花弁の中一杯に隠し持っている。


 雨に濡れたその瑞々ミズミズしいフクらみを、服の上からでも容易に確認出来るのだった。


 また、車椅子に座っていても分かる、張りの良い腰のラインは、上品なラフランスを連想させ、かつ美しい筆先が真っ直ぐに、たどった下肢へと続く。


 加えて、少しカシげた様にソロえられた両膝は、ピタリと合わされ、何人ナンビトヒラけぬ岩戸のゴトく、彼女の意志の強さを感じさせた。


 改めて、自分を狙う美しい追撃者の姿を拝見ハイケンして、気をユルしかけたが、むしろ、少女が発する、タダならぬ気配が直ぐに彼を正気に戻す。




先廻サキマワりの、お出迎えタァ…


 恐れいったぜぇ!!」


 と皮肉の中に、どこか余裕のある言い回しで微笑した。


「お嬢さん!さっきから、俺が無作為ムサクイに、


 逃げ回っているとでも、思っているだろ

 

 う?」


 その問いに、少女はマユ一つ動かさない。


「若いと言うのは時にして、いけねぇやぁ…。


 なぁ…俺にも経験が有るがね、ついつい自


 分の力に頼って目測を誤っちまうもん


 だ!!」


 それでも、少女は静かに黙っている。


「そらぁ俺だって獅皇兵団ヴァンセント相手に、


  戦っちゃあ、命がいくらあって


 も足りやしねぇさ。


 でもなぁ… 長く生きていると、血気に早っ


 て、無茶な真似事するよりかぁ、に己


 が有利に成るまで待つ…


 つまりよう!!


 ってもんが身に付くのさぁぁ!!」



 おかしい … 屋上作業員が居ない …






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