Disc2:正葉 史奈とSWORD-X

Chapter01:まぁバーガーでも食って話そうや






 そして時は元に戻る。





「私のいた世界マギアガルスは、

 いわば魔法少女の支配する世界だ」


 亜希達6人の前で、そう言葉を切り出すサレナ。


「我々が、いわば普通の人間を奴隷、あるいは『発電所の燃料』にしていた。

 君らのテレビの中とは違う、あまりに醜い世界さ」


「なぁサレナちゃんよぉ〜?

 あたしバカだから細かいことは知らねぇけどじゃあよぉ、


 なんであんたはその魔法少女なのに、同じ魔法少女の奴らに追われてんだぁ〜?


 あんたもその世界の支配者様じゃあないのかよ?」


「ああ、正解だよそう。君の言葉は正しい。

 私の事をよく人々は同じように言う。


 今まで支配者面していた魔法少女が、

 なぜ自分達人間を助けるのかと」


 ふ、と自嘲気味に笑うサレナ。


「……私も、人間が完璧だなんて思ってはいないのさ。

 誰か優秀な支配者が幸福なまま他者を支配するのは一切構わない。


 ━━━だが我々魔法少女も、所詮はただ力があるだけの猿山の大将なんだ」


 ちゅう、と頼んでもらったXLサイズのコーラを少し飲む。

 その顔は憂鬱と言うべきか、と言うべき顔だった。


「だったら、人間と変わりないじゃないか。

 。そうじゃないのか?」


「…………なるほど、君は革命者という訳だ」


 サラダのレタスにドレッシングを絡ませながら、静かに平淡に言う佳子メカ子


「そんな大それたものじゃあない」


「いや、革命者と言われる人種は常にそう言うもの。

 政治システムもその支配体系によって抑えられていた悪い事象への対処もまずは関係ない。


 すなわち、革命者とは心情で人々を助けようとする。


 善と言う気は私はないが、決して悪と断罪はできない、


 いわば、必ず現れる歴史の特異点。




 それが君だ。魔法少女シールダーサレナ」



 サクッとレタスが噛み切られる音が響く。

 二人の視線が静かに交わる。


「……私はもう行動してしまった。

 善悪の判断はのちに託すしかないな。


 まずは、この世界だ」


 と、サレナは買ってもらった、『大魔王毒ドック1ポンドバーガー』を一口かじる。

 意外と味はいいようで少し表情が和らぐ本人に対し、さっき同じものを追加で頼んだ史奈以外は全員胸焼けしそうな顔をしていた。


「……この世界だ、ってどういう意味です?」


 まず、麗奈がそうサレナに尋ねた。


「この世界は、私達にとっては重要なんだ。

 なにせ、『資源』が豊富だから」


「「「「「「資源???」」」」」」


 と、6人が首をかしげる。


「魔力は、星の上なら無限に存在するんだが、使うには我々魔法少女か人間を間に挟まなきゃいけないんだ。


 つまるところ、人間は天然の発電所だ」


 うぉ、とその意味を理解した全員が驚き、戦慄する。


「君らの世界での年間何千人かの行方不明者、全てがそうとは言わない。

 ただ、その内少なくない割合は、


 我々の世界が連れ去った人間達なのは間違いない。


 私も…………関わっていたからな」


 一瞬、その場に静寂が訪れた。


「…………で、具体的にはどうするつもりでぇ?」


 そして、それを破ったのは、さっきからずっとスマホで感想返信をしていた流羽だった。


「ああ……私はまずは、人間狩りをさがして止めて、ここへ来るためのゲートを潰していくよ」


「いやサレナさんの方じゃなくって、

 亜希さん、これマズイ事態ですよねぇ?



 いくらなんでも深入りは良くないんじゃあないですかね??」




 その発言に、周りはあらゆる表情を見せて流羽に注目する。





「ボク達これでも変なもの取り憑いているの、ある意味平穏な家庭や学校の友達もいるごく普通の一般人。





 っていうカテゴライズだったはずでしたよね?

 亜希先輩?」


 そして、間髪入れず頬杖をついた姿勢で鋭い視線を飛ばす。


「おいおい、そりゃバカでも言いたいことはあたし分かっけど……」


「流羽ちゃん!!!

 なんてことを言うんですか!?!」


 と、そうを差し置いて史奈が立ち上がり叫ぶ。


「史奈先輩、良い人なのは良いことですが考えても見てください。


 私達でどうにかなる問題なんですかこれ?」


「それがど、」


「まぁ、その通り。

 君らが関わるべき問題じゃないのは確かさ」


「サレナさん!?」


 意外なことに、話したサレナ本人はそう 流羽の意見に賛同する。


「そもそも、一度助けてもらっただけでもありがたい身ではあるからね。


 消えてくれと言うなら消えるさ。

 そう言うものだよ」


 どこか、寂しそうな微笑みで、最後の一口を食べきるサレナ。


「そんな……!」


「まぁ私は顔バレしてるから強制的に関わらなきゃ行けないけどねー。

 サレナちゃん今夜ウチ来る?小さい映画館な上に今日ちょっとうるさいけど」


「亜希ちゃんもなんでそんなに軽く!?」


「そういうもんでしょ、私らの人生」


 と、さも当然のように言う亜希。


 サレナ以外の全員が一瞬、すごい顔で亜希を見る。


「私は



 どっちにしろ、サメが憑いてる人生がじゃんか。




 みんなもそうでしょ?


 サメじゃあ、ないって言ったって、


 憑いてきたやつのせいで奇妙な死に方をしそうじゃあない、って?」






 す、とサレナ見ている中、他の五人も何やら含みのある顔ばかりだった。





「…………」


「…………」


《そうかい?サメが憑いてる人生も悪くないと思うぜ〜?》


「ぐ、グルゥ〜!?食べないでグルゥ〜〜!!」


「お前なに勝手に人様のマスコット口に咥えてんだディープ・ブルー?」


 いつのまにか、モグルーをソファーの下から甘噛みして振り回しているディープ・ブルーがいた。


《おいら、モグルーくん大好き♪》


「おいおいディープ・ブルー。あんまりそのチビを虐めんなって」


 と、ぐったりしつつも外傷のないモグルーをサメの口から引き抜き、保護者サレナにひょいっと渡しておく。


「つーわけだし、私帰るわ。

 サレナちゃん、どうする?」


「……すまないが、一晩は厄介になろう」


「おい待てよぉ〜、亜希ぃ。

 どうせ最後ならよぉ、お前金もってんだろ〜?

 ポテトぐらい奢ってから行ってくれよぉ〜〜?」


「……ったくこの貧乏バカは、だから彼氏できねーんだぞ、ほらよ!」


 出した一万円札をテーブルに置いた亜希は、彼氏ができないのセリフのダメージで沈むそうの横を通りテーブルから離れる。


「じゃあね。生きてたら一万円返しに来い!」


 サレナとモグルーもそれについていき、テーブルには5人だけとなった。











「あの、銭ゲバ女がよぉ〜?

 なんでぇ、一万円なんて大金をポンと出すなんざよぉ……」


 むくり、とダメージから回復したそうは、テーブルの一万円札を手に取り、やがて流羽の方向を見る。


「お前は間違っちゃあ、いねぇようだよな流羽?

 で、どうするよ?」


「どうするって……選択はシンプルですよ先輩。

 死ぬ覚悟で助けるか、この一万円で通夜をやるか」


「通夜だなんてひどい!!


 当然助けないと!!」


「落ち着いてください史奈さん!

 まずは冷静に考えないと!」


 ガタリ、と立ち上がった史奈を、横にいた麗奈が抑える。


「冷静に?

 麗奈さぁ、冷静になれば首突っ込んだらヤバイって分かるでしょ〜〜?」


「だからといって、寝覚めの悪い結果も嫌じゃあないのか?


 もしも心の底から関わるのが嫌なら、私ならあんなことは言わないぞ流羽?」


「……っ」


 と、麗奈の言葉に一変して何も言えないと言った顔を見せてそっぽを向く流羽。

 すると、ぬぅと手を伸ばしたそうがその頭へヘッドロックをかける。


「全くお前はよぉ〜、昔っからそういう気遣いばっかであたしは心配だぜ〜〜、そのうち禿げるんじゃねーのぉ??」


「いだいいだい!今禿げる!!今現在進行形で禿げるぅぅ……!」


 しゅん、と一瞬流羽の背後から伸びた褐色の二つの腕が羽交い締めにしたそうの腕へと伸び、何かのリングが腕へ出現したかと思うとパカリ、と腕が叢から外れた。


「どわぁ!?あたしの腕がぁ!!」


「もぉ!!ゴリラ見たいなパワーでネコみたいにじゃれつくのはやめてくださいよぉ!!」


「あたしそんなにゴリラみたいなパワーかぁ!?!」


「もっと早く気付けばそれなりにモテる方法を考えられたと思われる、メスゴリラ


「メカ子ちゃぁぁん!?!」


 外れた腕をワキワキ動かして涙目になる叢を放っておいて、ずっと黙っていたメカ子が周りを見回して意見を続ける。


「結論はシンプル。

 サレナといった謎の存在はまだともかく、亜希は守る。

 さて次はどうする?」


 と、外した腕を能力で戻す流羽と叢、静かに見る麗奈と言った面々を抑えまず史奈が立ち上がる。


「決まってます!!

 まずは敵の皆さんを迎え撃ちましょう!!」


 ぶわっ、と膨れ上がるように力が弾け、史奈に内在していた者が姿をあらわす。


 西洋風の甲冑の具足と籠手、その全身に金のXの文字のようなマークを散りばめた、スカートと長い金髪をたなびかせる女騎士が目を開く。



「私も、『SWORD-XソードX』も準備はできています!!』



 しゃん、と右手を胸の前で伸ばした史奈と同じポーズで、背後の凛々しい女騎士が剣を突き出す。



       ***

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魔法少女を助けたのは異能力持ち少女でした 来賀 玲 @Gojulas_modoki

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