第31話 公園の清掃
ご立腹な
だが、
「お兄ちゃんがやるなら、あたしもやる!」
「ん、兄さんと私は一心同体。いつでもどこでも、ナニをシていても一緒にいるのが
と二人もついて来ることとなった。
このことで人数は三人から五人に増え、心強さは一気に増した。……はずなのだが、どうにも空気が重いというか、二人と
まるで爆弾を抱えているような感覚に、道中俺と
「そういえば純先輩、今日の依頼はなんですか?」
学校を出て少し、すっかり忘れてしまっていたことを尋ねる。
「ん? あぁ言ってなかったね。公園の清掃だよ」
「公園の清掃、ですか」
「あぁ、いろいろあって、学校からお願いされてね」
いろいろとはなんだろうか。そんな疑問が浮かんだが、特に気にするようなことでもなさそうなので呑み込んでおく。
と話が少し落ち着いたところで、今度は小雀さんが口を開いた。
「あれっ? それなら道具とかひ
噛みながらも、頑張って続けた小雀さんが可愛い。
「あぁ、それは学校側が用意して公園に置いているよ」
そこまでするならボランティア部に頼まず、自分たちでやればいいのに。
面倒な仕事を押しつけやがってと悪態を吐いていると、なぜか両腕に抱きつかれた。
確認せずとも犯人は明確。純先輩と小雀さんは俺の前を歩いているので、抱きついてきたのは烈華と白咲ということになる。
まったく、辺りにあまり人がいないからといってこうくっつかれても困るんだが。
「なぁ、離れてくれないか?」
「ヤダ。だってお兄ちゃん、さっき腹黒先輩に抱きつかれてデレデレしてたから」
「ん、鼻の下伸ばしてた。……いやらしい」
「根も葉もないことを言うじゃない。デレデレしてないし鼻の下も伸ばしてないぞ」
嘘です。柔らかい胸が当たって少し嬉しかったです。
まぁそんなことを言おうものなら、帰宅後監禁ルート直行なので黙っておくが。
「おやおや、
「実際ハーレムなんて怖くてできませんよ」
茶々を入れてくる純先輩にため息を吐きながらそう返すと、先輩はなぜか「本当かね?」と楽しそうに尋ねてきた。
「現に君は今ハーレム状態なわけだが?」
「……は?」
「だって、明らかに好意を寄せている妹さんたち、一年間部活で時間を共にした美人先輩、小動物みたいで可愛い後輩に囲まれているのだよ?」
「自分で美人とか言いますか」
「だってわたし、美人だろう? そう胸を張れるよう努力もしてきた」
なんというか、純先輩は強い。
確かに、生まれつき美形でも手入れを怠れば台無しになる。
実際俺は烈華と白咲が手入れを頑張っているのを知っている。だからすぐ納得することはできた。
でもこう、言いくるめられると負けたようで悔しい。
「はぁ……まぁいいです」
「ふむ、つまりハーレムを認めると?」
「認めませんよ? 先輩はともかく、小雀さんに失礼ですし」
「ふぇっ!? そっ、そんなっ、し
やけにハーレム推ししてくる先輩にきっぱりと否定すると、なぜか小雀さんが顔を真っ赤にしてフォローしてくれた。
やっぱり小雀さんは優しいな。
可愛らしい後輩に和んでいると、なぜか腕をつねられた。痛い。
そんなこんな雑談などを交えながら、俺たちは公園へと向かった。
─ ◇ ♡ ◇ ─
──そう、こんな経緯で俺たちは公園にいるのだ。
それにしても、と俺は辺りを見渡す。
烈華はなにかと俺にくっついてきて、白咲は熱血キャラのように次々とゴミを回収。純先輩はときどき木陰や人気のない場所に連れ出そうとしてきて、小雀さんは唯一自然体で取り組んでいる。
個人で見れば少し問題がある人もいるが、それでも清掃活動は順調に進んでいた。
入り口の方へ目を向けてみれば、いっぱいに詰められたゴミ袋(分別済み)が複数積んである。
来たときはゴミだらけで不潔そうだった公園も、一応は片づいてきた。
このペースなら、あと三十分くらいやればゴミは全部回収できるだろう。
依頼完了の目安が立ち、俺は息を吐く。
「──穂高くん、ちょっといいかい?」
また一つゴミ袋を縛り運ぼうと立ち上がると、純先輩が声をかけてきた。
俺は警戒しながら「なんですか?」と返す。
「あはは、そう警戒しなくてもいいんじゃないかな」
「それじゃあなんですか。またバカ言い出すつもりですか?」
「違うよ。ちょっと穂高くんにお願いしたいことがあってね」
「普通のことなら構いませんよ」
そう返すと純先輩は「わたしだってTPOは
ちょっと可愛いと思ったのは勘違いだろう。
「それで、お願いってなんですか?」
「いやね、トイレ裏にあるゴミを取ってほしいんだ」
「? 純先輩が取ればいいじゃないですか」
「そうしたいのは山々なのだが……さすがに恥ずかしくてね」
恥ずかしい?
その単語に首を傾げていると、先輩は頬を赤らめながら耳打ちをしてきた。
「……エロ本で純先輩が恥ずかしがるはずない」
「失礼だね、君。わたしだって女子だ、その……アレで恥ずかしがるくらいの羞恥心は持ち合わせている」
どことなくしおらしい態度になる純先輩は、ビシッと指を差して「いいから君が回収するんだ」と命令してきた。
まぁ仕方ない。
俺はため息を溢して、純先輩が言っていた場所へと向かう。
「あぁ、ホントにあっ──ってちょっ!?」
そこには確かにエロ本があった。それも堂々とページが開かれた状態で。
……うん、これはさすがに誰でも恥ずかしいわ。よくこんな物を、こんな状態で投棄したものだ。
これも回収しなければいけない。でも正直、視界に入れたくない。
だがやらなければならないのだと自分に言い聞かせ、
「お兄ちゃん、そこでなにしてるの? ──あっ」
「兄さん、なにかあった? ──あっ」
トングで拾おうとしたタイミングで、なぜか烈華と白咲がやってきた。
二人は俺の目先にあるエロ本を見つけると、なぜか生暖かい視線で頷く。
「なぁ、なにか勘違いしてないか?」
「ううん、勘違いなんかしてないよ」
「ん、大丈夫、私わかってる」
「ダメだ二人ともわかってない!?」
どこか察した様子の二人は、落ちているエロ本をまじまじと観察しだす。
「それにしても、お兄ちゃん新しい性癖に目覚めたの?」
「ん、熟女モノなんて兄さんのコレクションにはなかった」
「誤解だぁあああああっ!」
全然わかってくれない二人に、俺は頭に手を当て叫ぶ。
「もぅ、お兄ちゃんのえっち」
「ん、公園で興奮するなんて、兄さん変態」
「お前らに言われたくねぇぇぇえええええっ!」
そう誤解されたまま清掃活動は続いて、公園は無事きれいになった。
結局、誤解が解けたのは夕食後のことである。
あの本捨てたやつマジで許さねぇ……っ。
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