第9話 シスターズ ファッションショー 3

「お兄ちゃん、どう?」

 

「ん、感想求める」

 

 カーテンという障害物を退け、俺の要望通りに自らを着飾った烈華れっか白咲しらさきが姿を現した。

 

 二人は少し不安の色を見せながら、愛らしく見つめてくる。

 

 烈華はセーラー服のようなブラウス? に赤黒チェックのミニスカート、そして黒タイツと全体的に黒でまとめていている。

 

 服の独特な形をした襟には赤いラインが二本入っており、烈華の白い柔肌にがよく映える。さらに赤いスカーフには黒いバラが刺繍されていて、尋常じゃない凝り具合だ。

 

 加えてチェック柄のミニスカートは黒タイツに包まれた魅惑の太ももを隠しきれておらず、なぜか視線がそちらへいざなわれてしまう。

 

 ゴクリ……ッ。

 

 完全にコスプレじゃねぇかという感想すら圧倒的な魅力に掻き消され、思わず息を呑んでしまう。

 

 ……でもあれだよな、これ大人っぽいというか、制服みたいで中高生に見える。

 

 どこか大人ぶって背伸びをしているように思えて、あまりの可愛さについ俺は悶えてしまう。

 

 あー、もう最高かよ……。うちの実妹いもうとが可愛すぎて目が逸らせない。

 

 思わずジッと見つめていると、ふと烈華が恥ずかしそうに「えへへ」と笑みを漏らした。

 

「そんなに見つめられると、少し恥ずかしいかな」

 

 モジモジとタイツに包まれた太ももを擦り合わせ、身をよじらせる烈華。

 

 ヤバい、可愛い。

 

 

「兄さん、私も忘れないでほしい」

 

「あぁ、すまん」

 

 すっかり烈華に魅入っていると、白咲が唇を尖らせてジト目を向けてきていた。

 

 俺は手を合わせて謝罪し、艶やかな銀髪をいじる白咲へと目を向ける。

 

 袖が絞ってある薄いグレーのブラウス、ほとんど太ももを露出したホットパンツに加え白ニーソ。見た目だけではあまり凝った様子は見られないが違和感なくまとまっていて、改めて白咲のセンスに感心させられる。

 

 緩やかな襟から姿を見せる鎖骨のライン、ブラウスを押し上げる二つの果実と視線が流れていく。

 

 ホットパンツに入れられた裾が作るふんわりとした膨らみは俺的にグッドで、なかなかに俺の好みを突いてくる。

 

 そして下着と然程大差ない面積のホットパンツとニーソによって作り出された絶・対・領・域! 肌の露出は少ないはずなのに、なぜか下着姿を見たときと同じくらいドキドキしてしまう。

 

 加えてニーソが食い込みむちっとした太もも、これが絶対領域の破壊力を倍増させている。

 

 なんというか、シンプルなのにエロい。義妹いもうとにこんな感想抱いていいのかわからないけど、似合ってるよりもエロいと感じてしまう。

 

「どう? エロい? 兄さんの性癖に合わせてみたけど」

 

「まさか最初からそれ狙いだったのか? というか俺のせいへ……好みをどこから知ったんだよ」

 

「兄さんのパソコンの中と本棚の下から二番目の奥」

 

「止めてくれ……」

 

 平然と人の秘密を口に出していく白咲にため息を溢しながら、俺は必死に制止する。

 

 あぁでも、マジで好みだよコンチクショウ……。

 

 

 

   ─  ◇ ♡ ◇  ─

 

 

 

「それでお兄ちゃん、どっちの方が良かった?」

 

「ん、気になる」

 

「え、えぇっと……」

 

 可愛すぎる二人に見惚れていて忘れていたが、そういえばこれは勝負だった。

 

 正直、白咲の方が俺のせい……好みを把握していてエロかったけど、烈華も最高に似合ってて魅力的なんだよなぁ。

 

 甲乙つけがたいとは、まさにこのことだろう。

 

 さて、どう答えを出すべきか。

 

 チラリと二人へ目を向けてみる。烈華も白咲も、期待に目を輝かせ今か今かと俺が結果を出すのを待っていた。

 

 くぅ、こんなの選べるわけないじゃないか!

 

 

 妹たちの可愛さに悶えること数分。

 

 俺はなんとも情けない、ヘタレな答えを口に出す。

 

「二人とも可愛いくてよく似合ってる。……どっちかなんて選べない」

 

「えへへ♪」

 

「ん♪」

 

 俺のヘタレ返答に、烈華と白咲は不満の色を一切見せず、眩しい笑顔を浮かべた。

 

「そんなにあたしたち可愛かった?」

 

「あぁ、可愛かったよ」

 

「ん、兄さんのコレクションより良かった?」

 

「比較対象があれだが……あぁ、すっげぇ良かったよ」

 

「にへへっ♪ そっかぁ、それなら仕方ないね~♪」

 

「ん、仕方ない」

 

「ふ、二人とも?」

 

 ネジが外れたように笑みを溢す二人に首を傾げていると、「じゃあ」と烈華が口を開いた。

 

「この服でデート続けていい?」

 

「……え?」

 

 そんなことできるの?

 

「ん、たぶん大丈夫」

 

 そうなのか? 買った服をそのまま着て帰るとか聞いたことないんだけど。

 

 そう心配するが、まぁ二人が大丈夫と言うなら大丈夫なのだろう。

 

 何度も自分に言い聞かせ、文句を言い続ける俺を納得させる。

 

「そうだな、できるならそうしようか!」

 

「えへへっ、やった♪ これでお兄ちゃんを誘惑できる~♪」

 

「ん、これで兄さんも悩殺できる……♪」

 

「あの、お二人さん……? 外でそういうのは控えてくれるか?」

 

 物騒なことを口にする二人にそう言ってみるのだが、二人は妄想に耽っているのかまったく反応してくれなかった。

 

 ……本当に、大丈夫だよな?

 

 午後からのデートに不安を覚えながら、俺は浮かれ顔の烈華と白咲を連れてレジに向かった。

 

 余談だが、買った服をその場で着るのはオーケーらしい。ここだけかもしれないが。

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